西岡泉

おもに詩を書いています。あとはプータローしています。

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スタンド・バイ・ミー(動画追加)

大村三兄弟との 冒険の話をしよう あのトム・ソーヤや ハックルベリー・フィンも 顔負けの大冒険 想い出すだけで胸が熱くなる やすみちゃん けんちゃん みきお  みきお…

西岡泉
1年前
199

日本国際救助隊

どうしても書いておきたいことがある 私はアリをコップの水で溺死させたり、小さなバッタを冷蔵庫の製氷室で凍死させたり、カエルを2B弾で爆死させたりして遊んでいた。…

西岡泉
1日前
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何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れたような朝 二人の少女が階段を駆け登っていた 既に過去となった未来が 今を目覚めさせる 将来は医者になるのが夢だった少年が 定年を三年後に控えたサラ…

西岡泉
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いいから言ってみな

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西岡泉
2週間前
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泪橋

目蓋をあけて見え始めてくる 消えかけの風景が好きだ 何があっても踏みとどまろう 近過ぎる夢から 繋げて 繋げて 遠過ぎる夢へ 泪の橋を架ける 風に結わえつけた ほどけ…

西岡泉
3週間前
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駆けてゆく少年

少年は 樹木と夕陽と詩が好きだった 少年は樹木を愛し過ぎたので 彼の涙は夜露に似ていた 少年は夕陽を愛し過ぎたので 彼の頬は人に遇うと赫くなった 少年の言葉は少し異…

西岡泉
4週間前
230

空の雲の手入れをした

冷蔵庫から ブルガリアヨーグルトを出す ナイフで輪切りにしたバナナを ヨーグルトの上に乗せる ジャムとシロップは気分次第 ネスカフェゴールドブレンドに 90度に沸かし…

西岡泉
1か月前
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夜が明けるときいちにちは終わる

夜が明けるとき いちにちは終わる そう信じて生きてきた 息も絶え絶えの夢をみて 夜にはじかれ続けてきた 眠れないものは月の下に集まれ 空の音階に紛れて 海が密かに降り…

西岡泉
1か月前
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善助漂流記(旅は続く)

 善助の漂流物語はまだまだ終わらない。善助のほかにもうひとり海の冒険に駆り立てられたご先祖様がいた。名前を瀧本万吉という。  善助は妻の父方の先祖だけれども、瀧…

西岡泉
1か月前
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善助漂流記(その4)

(あらすじ)紀州は周参見生まれの若き船頭善助の物語。ラ・パスの浜辺で保護者コマンダンテと涙の別れをした5か月後、善助は初太郎と共にマサトランの港からアメリカ船で…

西岡泉
1か月前
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善助漂流記(その3)

(あらすじ)天保12年(1841年)、善助たち13名を乗せた永寿丸は犬吠埼沖で難破した。太平洋をさまようこと約4カ月。永寿丸はスペイン船エンサーヨ号に救助され、全員無事…

西岡泉
2か月前
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善助漂流記(その2)

(あらすじ)日本人で初めてメキシコに漂流した紀州周参見生まれの船頭善助は、我が家のご先祖様だった。 ( 物語 その2)  今から180年前の天保12年8月23日(1841年10月7…

西岡泉
2か月前
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善助漂流記(その1)

 おれは岩礁の上に立つ。すっ裸で、かぐろい陽光にさらされて。  燃えたぎる意思を感じさせる硬質な文体だ。誰が書いたのだろう。北杜夫である。これは北杜夫の『酔いど…

西岡泉
2か月前
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追憶のハイウェイ

おれは逃げる ハイウェイを逃げる 逃げるその先は またハイウェイ 振り向くと おまえに追いつかれる ハイウェイは 逆回転するベルトコンベアか 走れば走るほど 足が重くな…

西岡泉
2か月前
250

希望ヶ丘商店街

時間を転がしてみたいような 緩やかな斜面に 赤い千日紅が咲く午後 空の隅っこに寝転がった 顔を空白にしておいてはいけない 君の声が聞こえた 雲が離れて行った 空は何を…

西岡泉
3か月前
239

星と金属

冬の季節風がかき集めた 記憶の中から 端がまくれ上がった手記を 一冊見つけた 葉を落とした欅が 毛細血管のような枝を 空の曲面に張り巡らせていた 優しい言葉をかけてく…

西岡泉
3か月前
271
スタンド・バイ・ミー(動画追加)

スタンド・バイ・ミー(動画追加)

大村三兄弟との
冒険の話をしよう
あのトム・ソーヤや
ハックルベリー・フィンも
顔負けの大冒険
想い出すだけで胸が熱くなる

やすみちゃん けんちゃん みきお 
みきおは一番年下
みきおと呼んでた
いつも鼻を垂らしてた
いつも一緒に遊んでた
となりの大村さんの三兄弟

磁石で鉄粉を集める
遊びにも飽きてしまったし
冒険をしよう
とても暑い日だったけど
早起きしてさあ出発
行先なんか決めない大冒険

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日本国際救助隊

日本国際救助隊

どうしても書いておきたいことがある

私はアリをコップの水で溺死させたり、小さなバッタを冷蔵庫の製氷室で凍死させたり、カエルを2B弾で爆死させたりして遊んでいた。いったいどれだけの命を奪ったことか。そんな遊びに耽っていた子供の頃からずっと考えていることがある。それは、自衛隊を軍隊ではなくて、あの「サンダーバード」のような国際救助隊に変えることはできないかということである。「サンダーバード」とは世界

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何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れたような朝
二人の少女が階段を駆け登っていた

既に過去となった未来が
今を目覚めさせる

将来は医者になるのが夢だった少年が
定年を三年後に控えたサラリーマンに
なってしまっていた
そんな現在の自分にがく然とする
というようなことなのか

そんなしょぼくれたことじゃないだろう
夕べ寝る前は明日だったはずなのに
夜が明けたら今日になっていた
今からどうやって生きていけばいいんだ
と布

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いいから言ってみな

いいから言ってみな

- ビートルズの “Things We Said Today“ に捧げる -

言ってしまったことは仕方がない
言わなければよかったと
今さら後悔したって仕方がない
想い出は消えても
言ってしまったことは消せない
取り返しがつかなくなっても仕方がない
もう言ってしまったんだから
そう言おうと思って
言ったんだろう?
だからいいじゃないか
言わなかったことにして欲しい
なんてこと言いだしたら

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泪橋

泪橋

目蓋をあけて見え始めてくる
消えかけの風景が好きだ
何があっても踏みとどまろう
近過ぎる夢から
繋げて 繋げて
遠過ぎる夢へ
泪の橋を架ける

風に結わえつけた
ほどけかけの記憶
希望ヶ丘商店街の上に
朝焼け空が架かっていた
豆腐屋のおじさんが
おばさんと一緒に作った朝一番の豆腐を
冷たい水から掬い上げてくれた
黄昏には
駅に通じる通りに灯りがついて
「ローレライ」のマダムが
ほかほかのポークカツ

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駆けてゆく少年

駆けてゆく少年

少年は 樹木と夕陽と詩が好きだった

少年は樹木を愛し過ぎたので
彼の涙は夜露に似ていた
少年は夕陽を愛し過ぎたので
彼の頬は人に遇うと赫くなった
少年の言葉は少し異様だったので
詩を書くことはいつも少年を傷つけた

機械工場の片隅に
油にまみれた工具と
おどけた瞳をもつ仕上工がいて
それがかっての少年だったりする
彼の毎日は同じ繰り返しで
一週間が一年に思えたりする
あすにはきょうがきのうになり

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空の雲の手入れをした

空の雲の手入れをした

冷蔵庫から
ブルガリアヨーグルトを出す
ナイフで輪切りにしたバナナを
ヨーグルトの上に乗せる
ジャムとシロップは気分次第
ネスカフェゴールドブレンドに
90度に沸かしたお湯を注ぐ頃
チーズトーストが焼きあがる
君はいつもコーヒーを飲み残し
ぼくはいつもコーヒーを2杯飲みほす

庭に出て
空の雲の手入れをした
ラナンキュラス・ラックスが
朝陽に光っていた
雲は過去形と現在形が
混じっていた
文法上は

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夜が明けるときいちにちは終わる

夜が明けるときいちにちは終わる

夜が明けるとき
いちにちは終わる
そう信じて生きてきた
息も絶え絶えの夢をみて
夜にはじかれ続けてきた
眠れないものは月の下に集まれ
空の音階に紛れて
海が密かに降りてくるのを待とう
明けがた
苔のように眠り込んでいる
もうひとりの自分に逢えるから

飛行機のジェットエンジンが
夜の街を吸い込んでいった
幸せは温かい拳銃
ジョン・レノンの声が
空を掻き回していた
幸せは熱いのか温かいなのか

夏休

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善助漂流記(旅は続く)

善助漂流記(旅は続く)

 善助の漂流物語はまだまだ終わらない。善助のほかにもうひとり海の冒険に駆り立てられたご先祖様がいた。名前を瀧本万吉という。
 善助は妻の父方の先祖だけれども、瀧本万吉は妻の母方の先祖である。なぜか偉大なご先祖様はふたりとも妻の実家の先祖なのである。

 瀧本万吉は1885年(明治18年)和歌山県の周参見で生まれた。善助と同郷である。善助が亡くなったのが1874年(明治7年)だから、その11年後に生

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善助漂流記(その4)

善助漂流記(その4)

(あらすじ)紀州は周参見生まれの若き船頭善助の物語。ラ・パスの浜辺で保護者コマンダンテと涙の別れをした5か月後、善助は初太郎と共にマサトランの港からアメリカ船で出航し、マカオを経由して、ついに長崎に着いたのだった。時は1844年1月(天保14年12月)。

( 物語 その4)
 善助は長崎に1年以上留め置かれた。奉行所でいろいろ取り調べられたうえ、踏み絵もさせられたという。鎖国という国法を破った犯

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善助漂流記(その3)

善助漂流記(その3)

(あらすじ)天保12年(1841年)、善助たち13名を乗せた永寿丸は犬吠埼沖で難破した。太平洋をさまようこと約4カ月。永寿丸はスペイン船エンサーヨ号に救助され、全員無事にメキシコのカリフォルニア半島に上陸した。

(物語 その3)
 カボ・サン・ルカスに降ろされた善助たち7名は、数日後にサン・ホッセという村に船で送られた。そこで他の2名とも合流し、13名のうち9名がサン・ホッセ村に集まったのである

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善助漂流記(その2)

善助漂流記(その2)

(あらすじ)日本人で初めてメキシコに漂流した紀州周参見生まれの船頭善助は、我が家のご先祖様だった。

( 物語 その2)
 今から180年前の天保12年8月23日(1841年10月7日;以後西暦表示)、神戸港を永寿丸という千石船が出航した。まだ21歳の若き船頭善助をはじめ乗組員は総勢13名。永寿丸は酒・砂糖・塩・綿・線香などの商い品を満載して奥州南部藩の宮古に向かった。

 ところが、同年11月に

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善助漂流記(その1)

善助漂流記(その1)

 おれは岩礁の上に立つ。すっ裸で、かぐろい陽光にさらされて。

 燃えたぎる意思を感じさせる硬質な文体だ。誰が書いたのだろう。北杜夫である。これは北杜夫の『酔いどれ船』という小説の書き出しである。『酔いどれ船』は漂流者や異国を放浪した人たちを描いた短編集である。その第一話に、紀州は周参見生まれの善助という21歳の若き船頭が登場する。

 天保12年(1841年)、善助はアメリカ大陸のメキシコまで漂

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追憶のハイウェイ

追憶のハイウェイ

おれは逃げる
ハイウェイを逃げる
逃げるその先は
またハイウェイ

振り向くと
おまえに追いつかれる
ハイウェイは
逆回転するベルトコンベアか
走れば走るほど
足が重くなる
ヨモツヒラサカ
塞いだ岩を押しあけて
おまえが追ってくる
走れば走るほど
傾斜がきつくなる
登坂車線もない
追憶を捨てる場所もない
パーキングエリアで
トイレに駆け込む間もない
パンツがぐちょぐちょになっても
逃げるしかない

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希望ヶ丘商店街

希望ヶ丘商店街

時間を転がしてみたいような
緩やかな斜面に
赤い千日紅が咲く午後
空の隅っこに寝転がった
顔を空白にしておいてはいけない
君の声が聞こえた
雲が離れて行った
空は何を裏切ったのだろう

朝から晩まで
明石海峡を見ていたことがあった
目は他のことを考えていた
音楽っていいね
楽譜があれば
歌でも交響曲でも
何回でも再現できる
ナゴヤドームで
ポールがジョージの『サムシング』を
ウクレレを弾きながら歌

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星と金属

星と金属

冬の季節風がかき集めた
記憶の中から
端がまくれ上がった手記を
一冊見つけた

葉を落とした欅が
毛細血管のような枝を
空の曲面に張り巡らせていた
優しい言葉をかけてくれる人が
優しい人ではない

あなたにはもう何も言うことはない
そう言われた
取り返しがつかないことを数えあげてみる
忘れてしまった悲しみと
忘れられない悲しみの間を
君は風のように
吹きぬけてゆけるか

あしたの時刻が懸けられてい

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