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全部流れ出てしまえ

ベッドに潜ったら、咳が止まらない。

どんどん音が大きくなっていき、骨にも響く。なにより彼の眠りを妨げてしまう。慌てて起き上がった。

喉の奥になにか誇りのようなモノが引っ掛かっている感覚がする。洗面所に向かい、口をゆすぐ。うがいへ移行する。合間合間でまだ咳が出た。少し空恐ろしくなった。ふっと鏡に映った自分の顔を見ると、無意識に眉間に皺が寄っている。自分の顔なのに、そうではないように思えた。

皺は触ってグリグリと伸ばしてみても、すぐ消えない。痛くもないし、違和感もない。けど、鏡の中の自分の顔があまりにも険しくて、なんだか恐ろしかった。皺が収まるまでの間、心臓がバクバクした。

険しい顔をどうにかしたくて、喉が痛いわけでもないのにうがい薬を取り出した。付属のカップ、そのメモリいっぱいにほぼ黒い茶色の液体を入れる。さらに水道水を注いで、数回に分けてうがいをした。白い洗面台に茶色の液体が飛び散るのをみて、うわ、と自分の行為なのにちょっと引いてしまう。けど同時に、液体が飛び散るさまをみて、自分の中にある悪いものが全部吐き出されたようにも思えた。

全部全部流れ出てしまえ。半ば祈るようにカップいっぱい分のうがいを終える。喉の奥で、独特の薬の匂いがする。まるで万能薬を飲んだ心地。飲んだことないけど。

そのままもう一度ベッドに戻って布団を被る。いつ眠ったのか覚えていないほど、コトリと眠りについた。アラームが鳴るまで、起きなかった。

2024年9月25日 晴れ(神戸)、移動したのち雨(東京)

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