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あなたのためのひな壇芸人じゃないんだけどな、と思った日

「楽しく話してるのを聞くのが、好きだよ。だから、もっと話してほしい!」

以前お付き合いした人がそう言った。お互い沈黙したとき、わたしを見て「具合悪い?」と聞かれ、驚いて否定した後のことだった。

頭の中に架空のバラエティー番組が浮かぶ。わたしはひな壇に座っていて、MCは元カレ。わたし、あなたを楽しませるためにエピソードトークを用意しているひな壇芸人じゃないんだけどなあ。

メキョ。

悪意なんてまったく、これっぽっちもなかったと思う。それでも心が変な音をたてた。あれがきっと、距離を置きたいと思う第1波だった。

わたしはどうにも、はじめましての人、久しぶりな人、新たな関係がはじまったばかりの人の前では、沈黙を恐れ、距離感を見誤ったり、喋りすぎる傾向があった。自覚した今も、うっかりするとやってしまう。

取引先と営業みたいだ。そしてそれは、コンスタントに会うとなると、もって3回くらい。それ以降は電池が切れたみたいに口数も減るし、ひどいと会いたくなくなる。一方相手は、「楽しく、よく話す子」と認識していることが多く、そのギャップに驚かれる。

「常に話せるわけじゃないよ」とか「黙ることもあるよ」とか、伝えられることは色々あったのに。なぜか当時はうまく言えなくて、「明るくたくさん話すわたしじゃなきゃダメなんだ」と思ってしまった。

そんなんじゃ、関係が続くわけない。限界はあっという間に来る。別れたあと、周りのパートナー同士をみるたび感嘆していた。心を開け渡せる関係というのは、なんてすごいことなんだろう。

結局わたしは、相手に心を開くことができずにいて、相手のことをちゃんと知ろうともしてなかっただけなのだと、今ならわかる。

もうずいぶん前のことだけど、時折戒めのように思い出す。

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