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お気に入りの色を装備する。

このあと、マニキュアを塗る。

たまにセルフネイルをすることがある。といっても、グラデーションや柄など凝ったことをするわけではなく、基本的に単色を塗るだけのシンプルなものだ。自分の中でドストライクの色と出会えるとしばらくそればかり。ちなみにお気に入りは、日本画用絵具の老舗、上羽絵惣さんの胡粉ネイル。塗りやすいし、カラーバリエーションも豊富。

ネイルで思い出す、大学時代のある先生の話を少ししたい。

その人は、女性の非常勤講師で、文章の書き方についての講義を受け持っていた。厳しいことも言われたが、愛を感じられる、ハキハキとした気持ちのいい人だった。

印象的だったのが、いつも講義ごとにデザインの異なるネイルをしていたこと。ある日講義が始まる前、教室の最前列に座って待っていたら、目の前の教卓に先生がやってきた。ふと手元に注目すると、リンゴの柄のネイルをしていた。それを見て思わず、「りんご、可愛いですねえ」と声に出た。

先生は、「あら、気づいてくれてありがとう」と微笑んだ。講義外の時間に会話をしたのはこの時が初めてだった。

「ネイル、お好きなんですか? いつもデザイン違うなあと思って」

すると先生は私に手の甲を向け、5本の指すべてのネイルデザインが見えるようにしながら、

「指先が華やかだと、気持ちが明るくなるの。例えば、パソコンで文字を打っているときとか、目に入ると意外と心が躍るのよ。自分の機嫌を自分でとるためにやっているの」

ふふふ、と笑う先生はどこか得意げで、とてもチャーミングに見えた。自分の機嫌は自分でとる。そういった先生を、カッコイイなあと思った。

マニキュアを塗る。それはもちろんファッションの一環という側面があるけれど、それ以上の理由もある。気持ちを上向きにしたいとき、気合を入れたいとき。

というわけで大切な明日のために、お気に入りの色をこれから塗る。

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