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寝付けなかった夜のこと

布団に潜ったものの、なかなか寝付けない夜だった。

まぶたを閉じ、じっとし、深呼吸を繰り返してもなかなか睡魔がやってこない。動かないことに耐えられなくなって、何度も寝返りを打つ。なんだか掛布団が嫌に纏わりついてきているようで寝苦しさを覚え始める。

ぱちりと目を開け、少しの間天井を見つめた。カーテンの隙間から、上から下へ光が数回移動する。音は聞こえないものの、車が走っているようだった。瞼は重くならない。

ベッド上の棚に備え付けられたライトのスイッチを入れる。眠れるなら、眠りたかった。けれどすぐに眠れる予感はとうに過ぎ、半ば諦めにも近い気持ちで読みかけの本を手に取った。

ベッドの上で横たわりながら本を読む、という行為はずいぶん久しぶりのような気がした。最近、本に書かれた文章を読んでもただただ滑っていくような感じで頭に入ってこない、なんてことが続いていたけれど、この時はどんどん潜り込めている感覚がした。

目は冴えわたるばかりで、もう開き直ったように読みふける。結局最後まで読み切った。途中涙が出て来て、頬の上には乾いた跡があった。

読み終わった後割とすぐ、欠伸が出て、また涙が出た。眠れるかもしれないとドキドキする。時計は見ないようにしていた。見たら、起床時間までを逆算して「あと◯時間しか寝れないのに」と凹みそうだったから。

まぶたを閉じると、まだ冴えている感覚は残りつつも、読み始める前とはちょっと違うような気がした。辺りはまだまだシンとしていて、ほとんど誰も活動していないことに、なんだか安堵した。

今日のヘッダーは上野にあるROUTE BOOKS

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