GW読書感想文③世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた~実例から見えてくる、真のビジネスマンとは?~

 本日もご覧くださりありがとうございます。ちゃんでらです。外出できないGWなんて初めてですね。やることが無さ過ぎます。こういう時はやはり本を読むのが最適なんでしょうか。

 さて、今回は第3回として、「世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を一冊にまとめてみた」という本の感想についてまとめていきます。この本、いわゆる様々な本の要旨についてまとめてある「要約本」であり、「いろんな本読みたいけど活字苦手だし時間ないよ!」という方にはおすすめのビジネス本だと思います。

➀概要

 この本は2019年にKADOKAWA社から出版された、比較的新しいビジネス書になります。KADOKAWA社のHPによると60万部以上売れているようです。内容は、忙しいビジネスマンのために、MBA(経営学修士)で必読とされている50の本の内容を、要約して1冊にまとめた本になります。紹介されている書籍はその内容に応じて6つに分類されており(後述)、自分が知りたいと思う内容を重点的に読むこともできます。作者は2002年に多摩大学大学院MBAを修了し、2013年に多摩大学大学院客員教授も担当された永井孝尚氏で、同氏の著作には同じく60万部を突破した「100円のコーラを1000円で売る方法」(kADOKAWA)や「これ、いったいどうやったら売れるんですか?」(SB新書)などがあります。

 この本では、「日本のビジネスマンは、経営理論やセオリーを理解せず、現場の経験や精神論に頼る人が多い」とし、時間がない、わかっていても敷居が高い人のために「仕事でどう生かせるか」「わかりやすさ」「面白さ」この3点を重視したと述べています。事実50冊を一冊にまとめた、ということで、1冊当たりの情報量はそこまで多くないものの、独自の図や実例を用いたりすることで読み手にわかりやすく伝わる工夫がされています。従ってこの本を読んで基本的な考えを理解し、深く学んでみたい書物を発展として読むのがいいと思います。それでは詳しく各章の内容を見ていきましょう。

②各章のまとめ

第1章.「戦略」

 この本では大きく「市場とは?」「競合に勝つには?」「自社の強みとは何か?どのように磨くことが出来るか?」という競争における自社の「戦略」について、10冊の書籍をまとめています。
例えば、「競争戦略の本質は、競争をいかに回避し、高収益を出し続けるか」という主題でまとめられた「新訂 競争の戦略」(M・E・ポーター、ダイヤモンド社)や、「競争に勝つためには、『何をやらないか』を明確にせよ」という主張がなされている「競争戦略論Ⅰ」(M・E・ポーター、ダイヤモンド社)などの書籍が紹介されています。その中で個人的に良いと思った書籍を紹介します。

「戦略サファリ 第2版」ヘンリー・ミンツバーグ、東洋経済新報社)

 この本では、戦略には「創発戦略」「計画された戦略」の2つがあるとし、両者を組み合わせる必要性が提唱されています。創発戦略とは、試行錯誤を重ねることで生み出される戦略のことで、どちらかと言えば現場からのボトムアップ的な戦略であり、計画された戦略とは予めきっちり決められた戦略の事を指します。これらは片方だけだと、行き当たりばったりになったり、想定外の事象に対応できなくなります。従ってまずは計画的に考え、現場での状況に応じて計画を変えるのが望ましいと言っています。柔軟性を持ちながらも、明確な芯をもって行動する必要性が示されていると感じました。

第2章.「顧客」と「イノベーション」

 この章では、主に商品を購入する「顧客」の心理と、その顧客の関心をさらい市場を変革する「イノベーション」に関して6つの書籍を紹介しています。例えば「顧客ロイヤリティのマネジメント」(フレデリック・F・ライクヘルド、ダイヤモンド社)では、顧客維持率を上げること(新規のお客様を増やすより既存のお客様との関係を維持するなど)が、顧客生涯価値が高まり長期的にたくさんの利益をもたらしてくれるという事が述べられていますし、「キャズムver.2」(ジェフリー・ムーア、翔泳社)では、テクノロジー・ライフサイクル(ある技術がどの人に受け入れられるかを段階的に描いたグラフ)を使って、商品が売るためにフェーズに応じて顧客の心理を分析して売る必要性が述べられています。その中で興味深かった書籍を1つ紹介します。

②イノベーションのジレンマ(クレイトン・クリステンセン、翔泳社
 
この本では「顧客の声を真摯に受け止め、技術革新に勤しみ、競争感覚を強く持つ」リーダー企業ほど、その地位を失いやすいという仮説を立て、コンパクトカメラ市場がiPhoneによって駆逐されたことを例に、イノベーションが持つ破壊的技術の特性と、それを生み出すための法則について述べられています。技術には既存の製品性能を高める「持続的技術」と、性能は落ちるがそれまでなしえなかった価値(低価格・小型化・携帯化)をもたらす「破壊的技術」に分かれるとし、破壊的技術が新たな顧客とともに成長していくことでそれまで市場を支配していた技術が淘汰され、イノベーションが起こるとしています。最初は「とりあえず写真が撮れる」「メールで送れて便利」くらいの性能だった携帯のカメラ機能が、現在では普通のカメラ以上に綺麗に撮れるのでびっくりした、という経験は皆さんもしたことがあると思います。
 こうならないためには、視点を変え全く新しい市場を開拓したり、既存の価値観や枠組みを捨てることが必要だとされています。自分の技術を磨くことだけに執着するのではなく、広く市場を捉え、差別化する重要性を学んだとともに、イノベーションの恐ろしさを痛感しました。

第3章.「起業」と「新規事業」

 この章では、起業や新規事業に必要な「イノベーション」に関して更なる理解を深めると共に、過去の事例から現在につながる優秀な考えや理論が乗っている10の書籍を紹介しています。「経済発展の原動力となるイノベーションは、既存知と既存知の組み合わせで生じる」と述べた「起業家とは何か」(J・A・シュンペーター、東洋経済新報社)や、既存の市場を分析し、その上で顧客視点で選ばれるために何を行い、競合のいない新市場(ブルーオーシャン)を創り出す必要性を説いた「新版 ブルー・オーシャン戦略」(W・チャン・キム/レネ・モボルニュ、ダイヤモンド社)など、一度は聞いたであろう内容が多く収録されている章となっています。この章の中ではこの書籍を紹介します。

アダプト思考(ティム・ハーフォード、武田ランダムハウスジャパン)
 本書のテーマを一言で言うと「計画に時間をかけすぎず、失敗を恐れずトライ・アンド・エラーを重ねろ」ということになります。
ビジネスに生物学で得られた「突然変異で環境に適合したものだけが生き残ってきた」という知見を取り入れ、環境に適応するために変化し続けることが生き残る唯一の方法だという事を述べています。そして進化するためには

・新しいことを試す(挑戦には失敗がつきものだと覚悟しておく)
・失敗しても大きな問題にならないようにする(小さく少しずつ始めたり、あらかじめ対策を立てたりする)
・失敗を失敗と認める(認めない限り学ぶことはできない)

ことが必要だとしています。計画に時間をかけすぎるのではなく、どんどんやってから学ぶことが必要だと感じたため、ご紹介しました。

第4章.「マーケティング」

 この章ではマーケティングを構成する要素である「価格」「ブランド力」「ビジネスモデル」などについてまとめた5つの書籍について紹介しています。ブランドが持つ資産価値についてまとめた「ブランド優位の戦略」(デービッド・A・アーカー、ダイヤモンド社)や、法人セールスにおける買い手の分析の重要性を提示した「戦略販売」(R・B・ミラー、ダイヤモンド社)などが紹介されています。その中ではこちらを紹介します。

「価格の掟」(ハーマン・サイモン、中央経済社)
 
この本では、価格は価値判断を大いに含んだ、変動性のあるものだとし、その仕組みを理解するために行動経済学の重要性を提示しています。この行動経済学は合理的ではない人の活動を説明するのに役立つとし、以下の3つの理論を述べています

⑴プロスペクト理論
 人間の損得に関する感覚の不一致性を示した理論で、損失は利得より大きく感じられたり、利得のある時はリスク回避的になるが損失のある時はリスク志向的になる理論を指す。

⑵プラシーボ効果
仮に利き目がない物でも、そう思い込むことで、実際に効き目があるものと同じ効果が生じるという現象を指す。経済に置き換えると、人は価格と品質を結びつけて考えるため、価格をもとに品質を考える事があるということを示している。

⑶アンカー効果
人は何かの数字を与えられると、それが無作為でもその数字を基準に考えるという効果を指す。価格が適切であるかどうか判断できない場合、少しでもその数字を役立てようと判断に用いるということを示している。

これらを踏まえ、高価格戦略で勝負する必要性が本書では述べられています。なぜなら低価格戦略は効果的な一方で、効率を重視し無駄を徹底的に省く必要があり、負担が大きく余裕がなくなるからであるとされています。価格に関して理解を深めたいと思いご紹介しました。

第5章.「リーダーシップ」と「組織」

 この章では企業における理想の組織の形や、その組織を力強くひっぱるリーダーが持つべき素質などに関する11の書籍が紹介されています。「やってみよ!ダメなら直せ!試してみよ!」という行動第一の精神や、顧客から学ぶことで多くの気づきを得ること、基本となる考えから離れず業務を行うなど、優良企業が実践している8つの特質について述べた「エクセレントカンパニー」(トム・ピーターズ/ロバート・ウォータマン、英治出版)や、2007年の低迷期から「らしさ」を追求し不死鳥のように復活したスターバックスの再生に関する「スターバックス再生物語」(ハワード・シュルツ)など、非常に幅広い内容が記載されている章になります。
この中で最も印象に残ったのは以下の書籍になります。

「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」(ジム・コリンズ、日経BP社)
 この本はアメリカにおける各業界のトップ企業をまとめ、その企業に共通して存在する法則についてまとめた「ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の法則」(ジム・コリンズ、日経BP社)の続きとなる本です。1作目はアメリカを代表する大企業を対象に、共通して見られる法則(基本理念に即して考える、挑戦を恐れない、先見の明やカリスマ性は必ずしも必要ではない)が記載されていたが、2作目では「長期間平凡だったがある時に急激に飛躍し高業績を長年継続できるようになった企業」11社を選び、その法則を明らかにした本です。従って一作目以上に「会社が伸びる」秘訣が詰まっていると言えます。その法則というのが「先に人材から決め、そこからやるべきことを決める」「厳しい現実を直視しつつ必ず勝てると信じる」などがあるのですが、特筆すべきが、11社のリーダーすべてが「第5水準のリーダーシップを持っていた」ということです。この第5水準のリーダーシップとは、個人としては非常に謙虚で、ともすると弱気に見えるが、いざという強い意志を持って大胆な判断を下せる素質の事を指します。必ずしもカリスマ性が必要ではなく、内面に誰よりも熱い情熱を持ち合わせ、良い結果を出すために職人のように行動する人間こそが組織を大きく発展させる、とこの本は主張しています。個人としての謙虚さと、職業人としての意志の強さの矛盾した二要素を兼ね備えた「やるときはとことんやる」人が必要という事ですね。

 この章は米マクドナルドの発展に寄与したレイ・クロックの手段を選ばない徹底的な顧客主義について述べた「成功はゴミ箱の中に」(レイ・クロック、プレジデント社)や、「経営の神様」とも言われた松下幸之助の半生から必要なリーダーとしての素質を学ぶ「幸之助論」(ジョン・P・コッター、ダイヤモンド社)なども面白かったので、ぜひ読んでみて下さい。

第6章.「人」

 この章ではビジネスにおける人間の内面的な働きについて、心理的観点から説明している7つの書籍について説明しています。モチベーションを上げるために「内発的動機付け」を上げることの必要性を説いた「人を伸ばす力」(エドワード・L・デシ、新曜社)や、「いいことをされたらそれ以上に返さなくてはいけない」「みんながやっていることは正しいからやってもいい」「権威がある人は正しいとみなしてしまう」といった、日常で陥りがちな思考の罠について述べた「影響力の武器」(ロバート・チャルディーニ・誠信書房)など、ビジネスに関係なく知っておくと得をする知識が得られる章になっています。その中で紹介するのはこれです。

「GIVE&TAKE 『与える人』こそ成長する」(アダム・グラント・三笠書房)
→本著では人間を自分が多めに利益を得ようとする「テイカー」、平等に二等分し、損得を公平に考える「マッチャ―」、そして相手に多めに利益を与えるお人よしの「ギバー」の3つに分かれるとし、仕事においてギバーが成果を出せるという主張を行った本です。ここで興味深いのが、ギバーの中でも成果が出せる人とそうでない人に分かれるという事です。これはどういうことでしょうか?

 こうなる理由としては「相手だけに利益があるようにする」のか「自分も相手も利益があるようにする」という違いだと本著では述べられています。前者はとにかく与えるだけなので自分の事は後回しで、ただ疲弊していくので生産性も低くなる。一方後者は相手の利益も追及しながら自分も利益を得られる「win-win」のギブをしているので、生産性が高い、と述べています。7つの習慣でもwin-winの重要性が説かれていましたが、あらためて実感しました。

 また、ギバーであることは精神的幸福や人生の満足度を上げ、精神疾患の発症度を下げるという調査結果があるなど、人生を豊かにするうえでも必要であるとされています。短絡的な見返りを求めず、自分も相手も得をする行いをしていきたいですね。

③感想

 この本そのもののわかりやすさは序盤で述べたので、全体を読んだ感想を述べると「ビジネスでも個人でも通ずる要素っていっぱいある!」という事です。基本的な考えを曲げない一方で柔軟に対応していくこと、失敗を当たり前としてとにかくやってみる事、既存の人付き合いを大切にすることで多くの恩恵が受けられるなど、実生活に役立つ知見が複数得られると感じました。一方で理解の及ばない箇所もあったため、より深い理解が必要だとも感じました。

④最後に

 かなり長くなってしまいましたが、いかがでしょうか。とりあえずビジネスに関する知識を広く得たい、という方にはお勧めの本だと思います。ここまでご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします!

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