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枷の行列

駅裏でKは順番を待っている。中央駅のプラットホームから、コンコースから、次々と発着する臨時列車に乗ろうとして、人々が溢れている。不自然に無口な行列の、その最後尾に並んでいるのだ。お行儀よく、ただうなだれる人々は、よく見れば、羊——。

羊たちは、各々、爪先立ちでぴょんぴょん小さくジャンプして進む。ふわふわの毛を、たがいに隙間なく寄り添わせている。新たに到着した車両の数だけ、順々に前へ進んでいく。並びからはみださないか、サーベルを手にした憲兵たちが居丈高に目を光らせる。なかには、ひときわ太った羊をひっつかまえ、大きく口を開けさせて金歯を物色する者さえいる。羊たちは怯え、ひそひそ声で連れていかれる場所に思いを馳せる。

到着した貨物から、丸刈りにされた羊の群れが吐き出される。白くてまんまるの羊が乗り込み、ピンクの皮と化した、枝のようにかぼそい羊が降りてくる。その繰り返し。羊たちは怯え、ひそひそ声で連れていかれる場所に思いを馳せる。

「どこへ行くんだ?」
「命があるだけでも、幸せだよ」

くたびれた駅員が、やたら大きな呼鈴を上下に振り鳴らしながら、駅をぐるりと幾重にも囲んだ行列の最後尾に現れる。Kに向かって、ずっと以前から申請していた書物の閲覧許可でも下りたかのように、乗車券は持っているのか、訊ねる。



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