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自然と工芸(日曜美術館より)

最近、録りためていた
「日曜美術館」を見てる


今回のテーマは工芸
「至高の工芸をあなたに」


工芸も鑑賞としては個人的に
苦手意識があったのだが、

鑑賞のヒントがわかり
おもしろかった


①自然現象と人との共同作品


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松井康成

<練上嘯裂文茜手大壺>

この作者ははじめの頃、
ひび割れが出ないように
作品をつくっていた


しかし、ある時ひび割れが
もたらす美しさに気が付き、
そこからひび割れを生かした
作品を作るようになったらしい

(嘯裂文 しょうれつもん)


美しい球体

茜色のしま模様

ここまでは人の手で作った
アート作品


そこに自然がもたらす
ひび割れという模様が加わり、
この作品は完成している


ひび割れを美しいと思った
彼の感性に感動してしまう

なんて美しい作品だろう



②色の違いとデザインの個性


まずこの二つの陶器を
見てほしい

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<色鍋島更紗文大皿>

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<色絵魚貝図水指>


この二つの作品を
見比べてみると…

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白い色に微妙な違いがある


鍋島焼(佐賀の地域)は
純白の色合いが出せる

一方、九谷焼(北陸地方)は
やや灰色がかった白になる


そこで、デザインに個性が
生まれる


鍋島焼は白い部分を多く
生かした透明感のある
デザイン


九谷焼は模様の最密さや
色合いで魅了する
デザイン


この土の特性の違いが、
デザインの地域性を与えた


また、九谷焼には
黄色に黒の点々の
デザインがある

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これは黄色の釉薬が
とても溶けやすく
流れやすいからだ

黒の点を打つことで、
ストッパーにしているのだ



人の生み出すデザインには
自然が関わっているのだ



③偶然を楽しむ

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角偉三郎

<練金文合鹿椀>


この漆の作品はなんと
手で塗られている

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当然、手はかぶれてしまう

なぜ彼はそんなことをしたのか

彼はこう語る

「どうしても道具を使うと均一になってしまう。」

「手で塗ることによって、線が太くなったり細くなったり、薄くなったりする。」

「きれいにはしない。手を加えつつ風土に根差した素材を生かす。」


自然に密着することで
均一でない美学を
見出だしたのだろう


彼の椀は使えば使うほど
漆の膜が薄くなっていき、
素材感がよく出るように
なっている



工芸の美学を追及すると
自然の美に行き着く

今回そんなことを
知ることができた


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富本憲吉

「模様から模様を生み出すことなからず」

彼はそう宣言し、
人の真似はしなかった


彼が見つめたのは自然

この作品の模様も
自分の目でシダを見て
独自に作り上げた



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松田権六

漆の神様(漆聖)と呼ばれた彼は
こう言っている

「人に学ぶ。物に学ぶ。自然に学ぶ。」



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