文体の舵をとれ 第一章 自分の文のひびき その3

 問2だ。noteオキマリのなんかよくわからんおしゃんなテンプレ構文に倣って、毎回毎回ウィットに富んだ前置きを書くとか思ったら大間違いだ。うおお早速やってくぞ。

 リズムや流れでリアリティを演出して体現。ってなんかさらっと言われとるけど、おいおい。それって結構レベル高くないか? ヘイヘイ今すぐナウここでやれ! すぐにやれ! 明確にやれ! って言われたとき、具体的にどこをどう意識して書くのか。そこがポイントなんだと思う。
 ……は? 
 どうすればいいの??
 とりあえずいったん書いてみる。


 大概の出来事、とりわけヤなコトなんかは、「まあまあ」ということばから続ければ、まあ、幾分かは軽減されるので。だから僕はまあまあという言葉が口グセになっちゃってんだろうな。
 でもね、過去を振り返ってみて正直なはなし、この言葉に救われた記憶なんてものは……ない。ないな。でも口にしてる。多分数え切れないくらいは。
 他人に伝わるかどうかは置いておく。救われたいわけじゃないんだ。でもやってる。初詣に行ったらお賽銭を投げるし、雑誌の「今月の運勢」だって毎回読む。でも次の日にはさっぱり忘れている。そういう流れなの。僕は断じてこういった行為の果てに救われたいとかそういうわけじゃない。
 さて、そんな話はどうだっていい。実のところ僕はいま、まあまあ史上最大のピンチだ。いまっていうか、そんなふわっとしたニュアンスの「いま」なんか秒で追い越すくらい「いままさに」だ。
 だってあれ、ノンブレーキで僕に突っ込んでくるあのあれ。中型トラックじゃんな。
 え? 中型だから「まあまあ」なのか? いやいやいや、いや関係ない。軽自動車だろうがなんだろうがふつうに死ぬでしょ。しぬしぬ。まあ、多分。僕死ぬのか。死ぬよな。死ぬってなんなんだ? 死ぬってイチからゼロだろ? じゃあ「まあまあ」もクソもないよな。「まあまあ死んじゃう」っていったいなんなんだよ。
 それにしても、こんなに思考は巡っているのに身体はこれっぽっちも言うことを聞かない。あとちょっとで僕をぶっ飛ばそうとしているトラックを、もうなにしたって避けようがない。なのに、なのにどういう訳だろう。目の前のそれが永遠にこの身体に触れない。すげーな。事象の地平面かよ。あ。ダメダメダメ。宇宙のこと考え出したら終わり。……いや、終わりって。どんだけ今更かよ。


 「動きのある出来事」とかはじめに言われるもんだから、天邪鬼なので「ほぼ脳内の動き」だけで書いてしまった。
 そして普段からリズムに気を付けて書いてるつもりだけど、いまいちそれがリアリティに繋がっているのかどうかは疑問が残る。僕が普段書いている詩というジャンルは、イマジネーションで殺すことに偏重している世界なので、リアリティはあってもいいしなくてもいい。なのでそこまで重要視してこなかった。
 そもそもリアリティってのはリアルとはまったくの別物だ。めんどくさいから文圧で疑問なんてぶっ飛ばして良い感じに騙していきたい。
 ちなみに、死の間際、実際にスローモーションになるのかどうかなんて僕は知らない。仕事柄、交通事故を起こす人の話はどうしてもよく聞くけどね。ただ自分では事故ったことがない。これから先も轢かれたくない人生である。

 さていっかい置こう。そんで浦桐くんのやつを読んでみよう。


由希の様子がおかしくなったのは合宿二日目の夜からだった。消灯時間を過ぎても恋バナで盛り上がっていた私たちは、見回りに来た山センに布団に入るように促され、渋々布団に入った。しばらくは小声で部活の愚痴などを話していたが、皆疲れていたのだろう。次第に一人ずつ寝落ちしていった。
 深夜、眠りの浅かった私は僅かな物音で目を覚ました。マネージャーの由希が、なるべく音を立てないように、そっと襖を閉めて部屋を出て行くのが見えた。トイレかな、とはじめは気にも留めなかったけれど、それにしては戻りが遅い。数分の後、戻ってきた由希は布団に入ることなく、部屋に備え付けられた、鏡台の椅子を引き、そこに腰掛けた。「こんな時間に何を」と気にはなったけれど、他の皆を起こしては悪いと思い、私は由希に声をかけることなく布団を被り直し、寝たふりをした。

 由希こえーーー。この「おかしくなったのは〜〜からだった」と置くところがポイントだ。これがあるゆえに由希はこれから後もどんどんヤバげになっていくこと確定なのであり、そしてそのことは読者である僕達には知らされるが、対して作中の「私」は知らない。という構図が出来上がる。
 このはじめの一文以降、僕達は、今から絶対にコエーことが起きるのをわかってんのに、どうしたって作中主人公を止めることのできない無力な存在。として読み進めなければならない。
 知らないまま。「私」が怖い目に遭っていくことを見守らなきゃいけない。僕達読者は二人称の語り手と違って、作中に干渉どころか関わることすらできないまま、ただ見ていることすらできないのだ。

 ちなみにホラーは日常の地続きにあるからこそ恐ろしさが生まれるのだと考えている。そのためには何も起こらない、起こりそうもないところをしっかり書き、そこへ少しづつ小さな不穏さを滲出させていく必要がある。
 はじめは小さな雨漏りのようなそれも、誰かが腰を上げはじめた時点では、もうすでに止めようがなく、明らかに怪異であると認知されることによって勢いを増していく。だから上質なホラーにはきちんとした準備が必要なんだと思う。

 もし短編程度の文字数で書こうと思った場合、その日常パートはどれほどの量を重ねれば準備が整うのだろう? ちなみに僕自身一度もホラーを書いたことが無いので、ここはひとつ問2の条件をホラーでクリアーしてみることに挑戦したいと思う。

 あらためて確認したうえで、自分なりにこの条件を満たせるよう書いてみた。

 あんたは死んでいるんだろう。
 おそらく。
声が出ないから? 誰の目にも映っていないから? 愛されていないから? 
 わからない。それらはもうどれ一つとして確かめようがないから。その顔も勿論もう見えない。ほら、いまどんな顔をしてる? 見せてみろよ。
 …………
「わ……」
 は? なに?
「わたたわた私わた私わた私私私私」

 ッ!? ……気持ち悪、なんなんだよ、うざった。やめろクソ。
 耳を塞ごうとしてもその声は繰り返し聴こえてきて、それがいつからかどこからか、ずっと。
 それがたぶん頭の中だったところで反芻している。
「わわわたわた私私私私の私ののの」

 うっざ。なんなんだよ。わかってる。これも全部おまえのせいなんだろ? おまえ。おまえだよ。てか、良かったじゃんな。おまえ。最後にみんなに見てもらえて。

 屋上にさ、いつものみんな集めてさ。いつもみたいに服脱がして、流行りのやつ踊らせてんの撮って、いやいやいや、なにおまえその顔で可愛くてごめんだよとかって爆笑して、そんなこと一通りやったあと、お決まりの焼けたコンクリんとこに蹴り転がして、ええとあんときはその後、たしかそうだ。

「うわそこ、隅っこ。苔やば! ねえ、これ食えんじゃない?」

 って、誰かが言い出して。そんときのあんたの引きつった顔、忘れらんないわ。
 いやあんた……なんで笑顔とか作ってんの? は?? だってイヤなんだろ? ムカついて仕方ないんだろ? イライラしていまにも吐きそうなんじゃないの? 笑ってんじゃねーよ。そういうとこが気持ち悪い、マジで死んでほしい、殺してやりてえ、死ねよ、くたばれよ、こっから飛び降りてあたまが砕け散れよ、あたまが砕け散れ、あたまがががが砕。あた、あた頭頭頭あたま、が
「私私のこここ私わわ私」

 毎日毎日、どこで何をされてたって誰からも気付かれなくて、そうやってずっとずっと、とっくに死んでたはずのあんたに、そうか。
 私、突き落とされたんだ。

「わわわわわわたわた私私私わた私の私」
 なんなんだよ、さっきから繰り返し響いてるこの声、私のだったのか。頭どこだよ。気持ち悪。


 あれ? そもそもホラーかこれ? 怪異登場しなくてもホラーなのか? ホラーの条件よくわかってないな俺。
 いやまあいいか、とにかくこの短い助走からオチのある話を作ろうとしたら「ひっくり返す」のがテッパンだ。というわけで落として、ってか物理的に落としてひっくり返した。
 あと前回の記事で「痛い痛い痛い痛い痛い」系表現を小馬鹿にしてしまったので、逆に寄せた台詞を使うことにした。いや、そこはどうでもいいな。

 感想としてはむずい。あと眠い。いま深夜3時だし。つーわけで寝る。

 あ、やばい雑に締めそうになった。書いたの読めば伝わるだろムーブしそうになった。そんな職人のおっさんみたいなのだめだ。でも言うことが思い付かない。深夜だし。ねみーし。
 てかもうちょい早めに記事書きたいね。俺のせいで勉強の進みが遅い。

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