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私に起こった小さな出来事

何年前かもう忘れました。ある昼下がり、私は一人で歩道を歩いていました。結婚して数年たった頃のことです。
前方から男子高校生の集団が歩いてきました。そして私とすれ違いざまに1人の男子高校生が私に向かって「●●●」(女性器)と言ってきました。あまりに突然のことで何の反応もできないまま向こうは遠ざかり私も歩いて行きました。
なぜこんなことが起きたのか未だにわからないし、どうすればよかったのかも分かりません。ただ道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男に侮辱されたわけです。
そして、相手は集団の中の一人でした。周りに同調する様子は見えなかったと思いますが、一瞬の出来事で何もできないまま過ぎ去って行きました。
ただこういった出来事を、モヤモヤしたまま飲み込むことしか出来ませんでした。
そういえば夫にも言っていないですね。

女性として生活していると時々このようにバカにされることがあります。バカにされるのも充分腹立たしいですが、身の危険を感じることもあります。

身の危険を感じたのは今から数十年前です。

私が大学生だった頃、女性コーラス部に所属していました。学内には男性コーラス部もあり、一緒に活動することがありました。
ある昼下がり、私は連絡事項を伝えに男性コーラス部の部室に行きました。部室には数人の部員がいました。私が連絡を伝えて部室を出ようとすると、一人が部室の引き戸をサッと閉じました。一瞬血の気が引きましたが、動揺を表には出さずに「何やってんの。早く開けてよ」と言いました。
すると相手はすぐ開けたので、ゆっくりと出て行きました。

白昼の大学内の、部室です。二人きりでもありません。何も起こらないと思います。でも、私はものすごく怖かったです。

こういう感じ、男性は理解できるのでしょうか。
こういうことを言うと、「お前なんか相手にするわけないだろ」とか、「逆に襲って欲しいわけ?」とか、さらに追い打ちをかけてくる人もいるかもしれません。

ただ私は、「私はこういうことが怖いんだよ。一般的に女性はこういうことが怖いんじゃないの。そういうことを理解しておいたほうがきっとお互い幸せな関係が築けると思いますよ」と伝えたいのです。

私が特別怖がりなのでしょうか。
ただ、常識的に考えても女性は男性よりも性的なことに関してのリスクは高いです。
性交すれば妊娠する可能性がありますし、妊娠期間は10ヶ月と長く、妊娠中の血流は二倍になり、死にやすいです。出産時には今でも完全に危険を回避することはできません。ある一定の確率で脳性麻痺や前置胎盤などの事故が起こります。産後も体調はなかなか戻りません。産んだ後は数時間おきに授乳のため起きなければならず、その後も日々成長する子供の新たな問題に対処しなければいけません。

相手がまともな人間で、ちゃんと結婚し、家の運営を協力してやってくれる人なのか。
女性は男性の資質を厳しく見極める必要があるのです。

しかし、男性は究極的には種を蒔くだけでいいので気安くなりがちなのではないでしょうか。

誤解を恐れずに言ってよければ、女性は自らが畑であり、そこに撒かれた種を10ヶ月ほどかけて育て、生まれてからも肥料を適切に与え様々な手をかけなくてはなりません。男性は、どこの畑に種を蒔くかは選ぶけれど、その後ちゃんと女性と一緒に世話をするかどうかは個人の資質によるところが大きいです。あちこちの畑に同時に種を撒くことも能力的には可能です。
女性が、自分の畑に撒かれた種が誰の種か法律的に確定させることができない、ってどうなんですかね。
(民法の規定によると、嫡出否認は男性のみが行うことができます)

話がずれてきました。
しかし、日本において自分の畑に撒かれた種を誰が撒いたか自分で決めることが出来ず、撒かれた種を取り除く(つまり中絶)際にも配偶者、もしくは相手の承認が必要で、緊急避妊薬は産婦人科でしか手に入れられなくて保険適用外なので高額です。(外国では薬局で医師の処方箋なしに手に入れられます)
女性が自分の人生を自分の意志で決定するのがとても難しいことがわかります。

時々、ニュースで生まれたばかりの赤ちゃんを遺棄致死した女性の事件が報道されます。その度に私はそうしてしまった女性のこと、そうせざるを得なくなってしまったのかもしれない事情のことに思いを馳せます。

日本の中学生は性交について、その具体的なことについて学校教育で学ぶことができないという事実に、どうしようもなく強い憤りと哀しみを感じます。
どうして教えないの!教えてあげないと自分の身を守ることもおぼつかないのに。

私が今まで性犯罪に合わなかったのは単に運が良かったからにすぎないのです。誰もそんな犯罪に合わないですむように。
男性にも女性にも、私にできる形で伝えていきたいと思います。

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