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IT経験を持たない中小企業診断修得者と、彼のITストラテジスト試験の年⑥午後Ⅱ前編

この記事は、ITストラテジスト受験生のうち、非ITガチ勢かつ中小企業診断士の勉強をしたことがある人に向け、同じ境遇だった私個人の体験談を語るシリーズのうちの第6弾、午後Ⅱ編の前編です。


午前Ⅰから順番に書いてきたこのシリーズも、いよいよ最後の科目・午後Ⅱまで来ました。午後Ⅱは4つの科目の中で最も対策が大変で、難しい科目だと思います。

午後Ⅱ対策として私が最初に取り組んだのが、STの先輩に教えていただいた↓の参考書です。

いきなり論文を書くのはハードル高いですが、この参考書のワークを順番にやっていけば、なんとなく論文がどんなもんかつかめるようになっています。
本記事では、この参考書ではわからなかったこと、勉強進めるうちに気づいたことを中心に書いていきます。

何が難しいのか

じゃあ午後Ⅱのいったい何が難しいのか?
諸説あると思いますが、私が感じていたのは次の4点です。

①2時間で3,000文字くらい手書きしないといけない

まず時間が足りないのと、あと体力的にしんどいです。
与件文、設問文を読んで、あらすじみたいなのを作って、原稿用紙にガリガリ書いていきます。時間足りないので当然大急ぎで文字を書いていくわけですが、これが現代人にはなかなかしんどい。朝から午後Ⅰまでやった後なので、それなりに疲れも溜まっています。試験本番終わったあと、マジで手が爆発しそうになりました(ヘッダ画像参照。ちなみに今回もAI作)。
診断士試験の勉強したことある人ならある程度つぶしが効くのがITストラテジスト試験ですが、午後Ⅱだけはあまり貯金が使えない科目かなと思います。その分やってて一番楽しいんですけどね。

②事前に適切なネタを準備しておかないといけない

「ネタってなんやねん」というところから始まって、ネタを探して、過去問で練習してみて、やっぱりうまく書けなくてまた探して、、、を繰り返していく感じでした。自分自身のIT経験が乏しいので、ここはやはり苦労しました。
私は、用意するネタの幅はある程度絞っておいて、同じネタをいろんな角度から書いてみて深掘りしていくのがいいんじゃないかと考えていますが、そのへんの話は後編のネタ探し編にて。

③試験当日に現場対応をしないといけない

そんなふうに必死こいて、今までのだいたいの過去問に対応できるネタを準備できたとして、結局試験本番で目にするのは見たことのない設問です。用意したネタをそのまんま使えることなんてほとんどないはずなので、その場でのアドリブはどうしても必要になります。
その際、設問の要求に沿わせつつ、整合性のあるように用意したネタを捻じ曲げる必要があるので、やっぱりここは難しい。
(私は令和5年の本番、準備したネタがほぼ使えなくて、当日7割くらいアドリブで書きました。そこで、「アドリブで捻じ曲げる練習」がほとんどできていなかったことに気づきました。整合性が取れているかもわからないような状態で、ぜってー落ちたと思っていました。当日何書いたか、そんな状況なのになんで謎に合格したかの仮説についてはまた別記事で)

④何が求められているのかがわからない

最大の謎がこれでした。
字数制限を守るとか判読できる文字を書くとか日本語として最低限の体裁を整えるとか、まあそういうのは当然として、2時間必死こいて何を目指せばいいのか? 何がAで何がBなのか? できたて飲むか? 藤原紀香?
STの世界にふぞろい的なものはありません。一体全体、何を参考にしたらええんや……!!

何が求められているのか

しかし、さっきの④に関して、一切のヒントがないわけではありません。
公式で発表されている資料から、親分IPAが何を是としているのかが窺い知れます。

問題用紙に書いてること

6.解答に当たっては、次の指示に従ってください。指示に従わない場合は、評価を下げることがあります。
(1)問題文の趣旨に沿って解答してください

令和5年度春期ITストラテジスト試験午後Ⅱ 問題

問題文の趣旨に沿って」というのがなんとも意味深ですが、これがすべてと言っても過言ではないくらい核心を突いた言葉なんだと思います。
問題用紙にこの注意書きが書いてあるからこそ、午後Ⅱは「何でもいいよ! 論文書けたら送ってみて!」(※)ではないことがわかります。
問題文の趣旨に沿ってなかったら評価下げたろかワレ、とちゃんと書いてくれているわけです。
(※参照

この「問題文の趣旨」については後ほど。

採点講評に書いてること

試験後しばらく経ってから、IPAの公式HPで問題冊子や解答例と並んで公開される「採点講評」、通称「おまえらええ加減にせえや」資料にヒントがあります。……いや通称されてない。俺が勝手に呼んでるだけ。

(略)
 全問に共通して、”論述の対象とする構想、計画策定、システム開発などの概要”又は”論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものが散見された。これらは、評価の対象となるので、矛盾が生じないように適切な記述を心掛けてほしい。また、字数が少なくて経験や考えを十分に表現できていない論述も目立った。
 午後Ⅱ試験では、ITストラテジスト自身の経験と考えに基づいて、設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は、評価が低くなってしまうので、注意してほしい。
(略)
全社視点での多面的な分析を行い、経営に貢献し続けるITシステムを実現する上で、解決すべき真因が何かを特定するような論述を心掛けてほしい。また、”特性要因分析”、”AI による対応” など、分析手法や技術を用いたと記述しつつも、具体性に欠ける解答も散見された。ITストラテジストとして、経営の視点で業務・システムを分析する能力、問題を解決する能力を身に付けてほしい。
(略)
一方で、インシデントが社会や自社の経営に与えるインパクトについて、具体的な内容が示されていない論述も散見された。ITストラテジストは、システムリスク対応方針の効果を十分に検討し、事業部門と経営層に提案して承認を得られる分析能力や評価能力を養ってほしい。
(略)

令和5年度春期ITストラテジスト試験午後Ⅱ 採点講評

ここから読み取れる、ST午後Ⅱで求められる要素は、

  • 概要書と矛盾がないように書くこと

  • 少なすぎない字数で、経験や考えを十分に表現すること

  • 問題文および設問の趣旨に沿って論述すること

  • 具体性のある論述をすること

  • 分析手法や技術は具体的に書くこと

  • 経営の視点で業務・システムを分析し、問題を解決すること

ということですね。

問題文や設問の趣旨に沿って、経営の目線から、ある程度の字数で経験や考えを十分に表現しつつ、矛盾なく具体的に論述する。
一言で言ったらこういうことなんですが、もちろん簡単にはできません。
これは戒めとして自分の中に持っておいて、過去問練習やその振り返り、模試や本番でも、いろいろ迷ったらここに立ち戻るようにしていました。

問題文の趣旨てなんやねん

じゃあ沿え沿え言われるこの「問題の趣旨」ってなんやねん、という話ですが、問題文(与件文)に書いてある要素をちゃんと論文の中に取り入れろよ、ということだと理解しています。
たとえば、与件文の中で、「投資を行う際には、○○や××を検討し、経営陣に説明をする必要がある」なんて一節がある場合には、論文の中で「○○や××を検討した」と書かなあかんということです。ん? 一般論で話すのにも限界があるな!?
ということで令和3年度の問1を例にします。私が過去問演習やったときに書き込んだ与件文がこれ。ちなみにST勉強もiPad使うと便利やで。

令和3年度ITストラテジスト午後Ⅱ 問1(書き込み)

この与件文を読んで、
(第1段落)データとディジタル技術を使ったDXについて書かなあかんな!
(第2&第3段落)○○というDXを実現するための新サービスを企画して、△△という新規顧客を獲得する話にせなあかんな!
(第4段落)ターゲットの顧客を明確にし、そのニーズを基に新サービスを検討した、という話にせなあかんな!
(第5段落)収益モデル、業務プロセス、新サービスの市場への普及方法、リスク対応策、協業先、投資効果を経営層に提案せなあかんな!
という「趣旨」を読み取り、論文に盛り込まないといけないわけです!!!(すっきり)

「ITストラテジストたるもの、〇〇を検討する必要がある」とか「システム導入にあたって、〇〇することが重要である」とか、そういうのが与件文の中にいくつかあるので、漏れのないようにあらすじに盛り込んでいました。
全部が全部拾わなくても受かるのかもしれませんが、実際どうなのかわからないので書くに越したことはないと思います。

ちなみに私は、
与件文を読む→「趣旨」っぽいところに下線、使いたいキーワードには◯をつける→余白にあらすじを書きながら、与件の◯にチェックつけて消し込む→解答用紙に論文を書くときにあらすじにもチェックを入れて消し込む
という手順でやってました。
これは、過去問で練習してるうちに「趣旨」を認識しつつも書き忘れるというミスをしたので、チェックつけて忘れないようにした、という次第です。

その他

先述の、
問題文や設問の趣旨に沿って、経営の目線から、ある程度の字数で経験や考えを十分に表現しつつ、矛盾なく具体的に論述する。
のうち、すでに述べた「趣旨」以外について簡単に。

経営の目線から

ここは企業経営理論でやったような、アンゾフやらポーターやらの出番です。実際にアンゾフやポーターの名前は書きませんが、経営戦略の話が入ってくると「経営の目線」感が出てカッコいい感じになるんじゃないでしょうか。困ったら中小企業を題材にして差別化集中戦略とっとこう。こないだ知って驚いたんですがポーターってまだ生きてるんですね!
ITガチ勢の方は、ついつい技術的なところを詳しく書いていってしまうのがあるあるらしいですが、技術ばっかりで経営全体の話が薄くなると「経営の目線から」という要件を満たせなくなるのだと思います。

経験や考え

さっき紹介した参考書でもさんざっぱら言われている、「そこで私は〜」論法ですね。経験や考えをアピールするためにも、論文の中ではオラオラでいきましょう。

具体性

診断士2次試験の与件文の冒頭って結構具体的じゃないですか。「資本金〇〇万円、従業員○○名の○○業である」みたいな。ああいう感じで書いていけばいいんじゃないかなと思います。
冒頭の会社の紹介なら資本金、従業員数、年間売上高、事業内容、主要顧客とか。
論述対象にするシステムが取り扱ってるデータの中身とか。
投資効果を語る際の投資額やリターンの金額、正味現在価値とか。

ここらへんぼやかすと具体性がないと思われてしまうような気がします。逆に、数字書くだけで「この人は具体的やねえ~」と思ってもらえてお得かも? このへんは当日アドリブでやるのは無理があるので、事前に数字を準備しておくことをおすすめします。
詳しくは後編のネタこねこね編にて。


いったん前編はここで終わります。
前編は書き方中心でしたが、後編はネタに関する話と、書ききれなかったTIPSを書こうと思います。その先は開示請求した私の答案と振り返りを書きます。
年内に終わる……のか……?(トーンダウン)

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