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損得勘定を大切に

(※母乳育児、ミルク育児のお話が含まれます。悩んでいらっしゃる方や苦しんでいらっしゃる方を傷つけてしまう内容があるかもしれません。私の体験談としてご覧頂ければ幸いです。)


娘を産んでから一年が過ぎました。

産まれたての娘は私にとって
『未知の生物』でした。

新生児と赤ちゃんは全く違うんだという事すら、産むまでほとんど知りませんでした。

新生児という言葉は知っているけれど、
赤ちゃんはだいたい同じ、という認識でした。

ですが、産まれたばかりの娘は、
目も開いてないし、たまに開いても寄り目だったり、コットに置けば泣いてしまうし、
私から声をかけたり、手を繋いだりしても、ほとんど反応無しです。

おっぱいでしかコンタクトできませんでした。

娘にとっては目もボヤけてほとんど見えない中で、
私の乳首だけが何かとつながるコンセントのようなもので唯一の安心材料だったんだと思います。

寝ててもおっぱい
起きてもおっぱい
眠りたいからおっぱい

私はおっぱいです。
または乳首と申します。
ニックネームはパイです。

私という存在が10だとしたら
乳首の存在は20000ぐらいになりました。

『あなたは母親なんだから』と言われれば
『いや、ただの乳首だよ、私は』と本心では思っていました。

母親と言う実感が全然湧かなかったのです。

これはもう感情うんぬんというよりは、
シンプルに現実でした。

そんな母乳ノイローゼ状態の私は、
プレッシャーを勝手に感じて、
社会や周囲から母親というイメージを求められているような気持ちに陥るようになりました。

そして母親の実感が無いのに、
自分が理想とする母親像を無理に演じたり、
その反面、自分は母性に欠けているのでは…と問い詰めてゲッソリしてゆきました。

見事な育児ノイローゼとなり相談機関に相談しては、逆に落ち込む日々が続きます。

『母親は強いから大丈夫!』
『もう立派なママだよ』
『母乳諦めるのはもったいないよ』

一回も本心を言えませんでした。
『母乳育児が辛い』と。

さらに娘が上手に私のおっぱいを飲めなくなってきて、生後4ヶ月の時には完全ミルク育児に切り替わりました。

そしておしゃぶりが活躍するようになりました。

『母乳?ミルク?』
の挨拶替わりの質問だったり

『おしゃぶりしてて、寂しいのかしら』
通りすがりの方の言葉だったり

そんな些細な言葉で気持ちが急に真っ暗になり、他のお母さんみたいにできない自分に泣きました。

その期間は私の人生の中で最大量の涙を流したと思います。



とある日も泣きながらミルクをあげ、おしゃぶりをして寝かしつけをしていました。

すやすやと幸せそうに眠る娘を見ながら
ごめんね…と泣いている私。

その時、ふとその状況に違和感を感じました。

娘はミルクを美味しそうに飲んでるし、
おしゃぶりで安心してねんねもできるし、
私だって数倍も育児が楽になったのに、
なんのために泣いてるの??

消去法で考えた結果、
私は実在するわけでもない自分の理想のために
自分を泣かせているんだと気づきました。

それは誰の得にもならない。
誰というよりなによりも
娘と私の得にならない。

シンプルに損得で考えた結果、
泣く事はなくなりました。

誰かに何か言われたとしても、
それで嫌な気分になって楽しいひとときがかき消されてしまうなら、
私たち親子の損になるし
心の中で『シッシッ!あっちにお行き!』
と追い払うようになりました。

損得勘定という言葉は、それまでは
あまり好きではありませんでした。

だけど一歳になった娘を見て思うのは、
お菓子を持っていれば寄ってくるし、
歯ブラシを用意すれば逃げていくし、
損得勘定はいたって健全で悪いことじゃ無いなということです。

嫌な事は嫌
やりたい事はやりたい
じいちゃんはお菓子をくれる人
ばあちゃんは褒めてくれる人

娘にはそんな損得勘定を大切にして育ってほしいと思うのでした。



そして母親の実感の話に戻りますが、
私が母親なんだなぁと少しずつ実感し始めたのは、
娘の強烈な後追いが始まってからです。

それは娘も、私を母親と認識したからだと思います。
もっと的確に表現するなら母親と娘というよりは、
『お互いに絶対的な人』
と表現する方が今は妥当かもしれません。

私はこのまま母親という実感が薄いままなのかもしれませんし、
先はわからないと言うのが正直なところです。



例えばこの世に
母親って言う言葉や
父親って言う言葉が
存在してなかったら
親子関係ってどうなっていると思いますか?




そんな答えも出ないことを想像しつつ、
娘の寝相のアクロバティックさに唖然とするのでした。

何故私の顔面を敷布団にして眠るんだろう。

オナラしないでね。








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