おかわり攻撃

 「おかわりあるよ」

 おばあちゃん(父の実家をそう呼んでいた)で食事をするたびに、おじいちゃんは、ご飯のおかわりを促した。他にも、酢の物だの、佃煮だの、バナナだの仰山ぎょうさんあった。戦前の生まれで食べ物のなかった時代に青春を送っていたからか、腹いっぱい食わせたら喜んでくれると思っているのだろう。

 「これ食いんさい」といちいち勧めてくるたびに、私はあああと叫びたくなった。いらん、というと悲しい顔をされるので、ご飯を片側に寄せて大盛りに見せかけたり、横を向いてバナナを食っているフリをしたりして、その場をしのいだ。

 最近、おばあちゃんが施設に行くことになり、おじいちゃんを家に迎えた。おじいちゃんが毎日、家にいる生活が始まった。そして、今度はおじいちゃんが食え食え攻撃をされる番になった。

 おじいちゃんの息子、つまり私の父はDNAを受け継いでいるらしく、しきりに食え食えと迫る。「もういらんよ」と嫌そうな顔をしている。かわいそうに。まあ、自業自得か、と私も悪い顔になる。

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