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店長論 第二章③

お店の開業の時に必ず実施する竣工検査。
竣工検査とは、お店の工事を依頼して什器や設備などを引き渡ししてもらう際にオーダーとの違いのチェックや、不備のチェックを一緒に立ち会って行う検査のこと。

僕は、10人以上のそれぞれのプロの大人たちに囲まれながらチェックしていた。


竣工検査の日は、今でも忘れない2011年3月11日。

揺れ始めて、のほほんと「地震ですね」なんて会話していたのだが、
全員が異変に気付き始める。

「ヘルメット投げろー、全員ヘルメットかぶるんだ!」
「ここにいるのは危険だから、逃げるぞ!」

と大人たちの飛び交う声に、焦りながら避難した。
東京なので、結果被害は少なかったのだが、よく揺れる立地であったこと、
真新しいお店の什器やPCが倒れそうになっていたことは、十分に怯える内容であった。

竣工検査でキーマンが集まっていたこともあり、
手分けして近隣店舗の異常確認やスタッフの安全の確認を図っていった。

帰れないスタッフたちを営業中止させた店舗で泊める手配をしながら
映画でしか見たことがないような残酷な映像と、
余震に怯えながら過ごしたのを覚えている。

何とか全スタッフの安否を確認し、次の日から実店舗の営業のフォローをしながら開業準備を進めていった。


幸いにも、東京はそこまで被害がなく、準備も滞りなく進んで、いよいよ開業。
しかし、自粛ムード真っただ中での開業は
今までにない本当に静かな開業となった。

もちろん売上予算は大幅未達。
採用人数は過剰。

初めての新店のリーダーで、初めての未曾有の出来事に翻弄されながら
気持ちを切り替えて、教育に全力投入していった。

ここで、昨日記した3つのミスが出始めた。

社員・アルバイトリーダー・アルバイトがそれぞれ反発しあう状況。
理想論を求める僕に次々と反発が起こる。
メンタルケアが必要なスタッフたちへの過剰な面談時間の投下。

自粛モードが少しずつ回復していった中でも、
スタッフ間の歪みが生じていき、退職者も続出し、売上は低迷した。

3つのミスによるトラブルは絶えなかったし、売上も低迷したが、
僕のスタンスだけは変えなかった。
求めるの理想論であって、妥協はしない。

やる気がないやつは、働かなくてよい。
遅刻するやつは、帰れ。
反抗するならとことん付き合う。ただし絶対にお前は間違っている。

若かったし、表現もチープだったけども
「教わる力」「叱る力」「巻き込む力」は努力で持っていたから
徹底的に自分を貫いた。

僕に合わないメンバーはどんどんやめていった。
壊滅的な要員不足でも自分が朝から晩まで働けばよいと思って
徹底的に自分を貫いた。

すると側近のメンバーから明らかに成長していった。
僕の作りたいお店やスタッフ像を理解し始め、僕のいない日も同じような目線で教育を進めてくれたのだ。

アルバイト採用するときは、必ず自分も面接に入り、ビジョンを動機付けして、勤務開始日にはスイッチを入れる事ができるスタッフがどんどん入ってきた。

開業1年間くらいは本当に苦労したが、結果すごく良い店に変わっていった。

育成店舗と位置付けてもらい、
新入社員研修の受け入れから、障がい者雇用のトラブルスタッフの受け入れ、うつ病で休職した社員の復帰受け入れなど。
本当に色んな課題をもらいながら、都度トラブルをたくさんの会話を繰り返すことで、前に進めることができた。

さまざまな課題のおかげで、店舗内でたくさんの人財をキャリアアップさせることもできた。自分自身がキャリアアップに感謝を感じていたので、本当に会社に恩返しできたと思う。

人財が育つと、勝手に売場はよくなり、売上がよくなる。
あまりにもシンプルだけれども、間違いない事実である。


色んなトラブルや課題を乗り越えながら3年間ほど店長を勤めた頃に
さらに課題をもらえることになる。
史上初の店舗の兼務を命じられるのだ。


続く。

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