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紙で遊ぶ 夜の庭(4)

ジタバタ飛び回っている蛾に、庭のすぐそばの街路灯が話しかけました。不思議なことに、蛾と街路灯は双方向で通じ合うんです。蛾は「この庭の物語をハッピーエンドで終わらせたい。なのにそれができないのが悔しい。」と訴えました。街路灯は「わたしは、このままで充分幸福だと思うよ。」と答えました。「いいかい。仮にだよ。ニワトリの目が見える昼間に、棘のない花が出会ったとする。」

昼間2

「ニワトリって、雑食で大食いなんだ。あっという間に花はニワトリの胃の中さ。花は棘を手放したことを後悔する間もないだろうね。」

花を食う

「甘い物に少し塩を入れると、甘味が際立つけれど、それと同じだと思うんだ。少し不完全。少し不満。夜の闇の中にいるからこそ、わたしたちみんな輝ける。」

夜の庭2

夜の闇は、静かに庭を包んでいました。夜明け前が一番暗く、街路灯が言う通り、庭の住人たちは一層輝きを増すのでした。もう1時間もすれば明るくなって、街路灯は消え、花も蛾も眠りにつくでしょう。ニワトリは少し前から、眠りに落ちていました。(おしまい)