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ラーメンとの距離感

 自分はいわゆる"ラヲタ"とは程遠い位置にいる。例えば、サッポロ一番みそラーメンやチャルメラ、チキンラーメンなどの即席袋系はもちろん、カップ麺もコンビニ限定コラボは特に好きだ。ちなみに、サッポロ一番塩ラーメンの塩味がバターを乗せたら最高なのはよくわかるが、ラーメン屋の塩ラーメンの微妙な味が未だわからなったりする程度の自称ラーメン好きである。
 さて、我が地元・足立区は綾瀬にあるラーメン屋『陽はまたのぼる』は、煮干しがウリである。
 私が恥ずかしながら煮干しラーメンなるものを初めて食べたのもこの店であった。塩分濃度を低すぎずあっさりと澄み切ったコク深き淡麗スープも良いが、濃厚ないわゆるセメント系と称されるネズミ色のドロドロとしたスープから織り成される、まさかの煮干しの苦味が一切無いマイルドな味は、食した後からのゲップまでもほのかに磯香る存在感。また、その麺も良いのだ。
 そんな人生初の煮干しラーメンに触発され、足立区界隈や都心のラーメン屋を食べ歩いてみてわかったのだが、スープがイマイチだとラーメン全体がイマイチなのは言わずもがな、スープが美味しく麺がイマイチで惜しい店が多い昨今、『陽はまたのぼる』はスープも麺も、旨い。ボソボソっと日本蕎麦のように噛んで味わえる麺であり、旨い。
『陽はまたのぼる』では麺の大盛りの代わりに、『和え玉』という替え玉のような麺のおかわりシステムが採用されているのだが、その和え玉をスープに浸し、つけ麺にするのも旨いが、自分は麺を味わうためにそのまま啜る。今日は2杯啜ったが、まだイケた。そのくらい麺だけでも味わえる強みのある店なのだ。
 他にも、店主ならではのチャーシューのレア加減や煮干し選別のこだわりもあるだろう。また講談社2017年度TRYラーメン大賞 新人賞にぼし部門で優勝されたり、さらに店名由来の店主御用達なバンド『Dragon Ash』がまさかのマジで来店したり、はたまた今年からは毎週火曜日に月替わり限定メニューを開始などなど、これからもネタが尽きない店だとは思う。
 そんな『陽はまたのぼる』に代表される(第何次⁈)ラーメンブームの最中にも、僭越ながら私は、"たかがラーメン感"を忘れてはならないと思うのである。ラーメンも客も。
 底を着いた果てにようやく出た給料の後、会社でイヤな事があり凹んだ後、果ては目を背けたくなるような日常のド底辺にでも一輪の彩りを添えてくれるのが、一杯のラーメンではなかったか……⁈
 目移りするトッピングを含めたならば、もはや一杯千円時代に突入した感もあるラーメンだが、私は日常の活力となる千円で余韻のゲップ含め半日以上は愉しめる日常の"エンタ麺"として、居て在って欲しい。
 そんなラーメン本来と言っても過言ではない、小さいながら存在感はデカい"日常の立ち位置"があってこそ、"されどラーメン感"が丼の底から滲み出てくるのではないか。

陽はまたのぼるhttps://twitter.com/masa_ponkotu

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