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14話「裏切り者」



あやめ:…

飛鳥:…

ホースオルフェノクの姿から人間の姿に戻ったあやめ、ファイズの変身を解いた飛鳥。それぞれの正体を知り、二人の間に緊迫した雰囲気が漂っていた。




あやめ:飛鳥さんが、ファイズだったんですね…

飛鳥:まぁ…そういうあやめちゃんは、オルフェノクだったんだ…

あやめ:私たち、初めての出会いが物騒な感じでしたよね…

飛鳥:そう…だね。


二人して、ファイズとホースオルフェノクの戦闘の時を振り返っていた。


あやめ:私、誤解してました。ファイズは無作為にオルフェノクを襲う存在だと…

飛鳥:だから、私を…攻撃したのか。

あやめ:でも、さっきやこの前のでそうじゃないと思えました。飛鳥さんがファイズで良かったです。

飛鳥:ファイズになったせいで、こっちはかなり迷惑しているけどね…

あやめ:で、ですよね。こんな訳のわからない怪物のことに巻き込まれて…

飛鳥:ねぇ、こんなこと聞きたくないけど、あやめちゃん…その、人を襲ったことあるの?

あやめ:…


やはり、タブーな質問だったのか…と飛鳥は後悔していた。


あやめ:一人、事故で手にかけてしまって… でも、それからは人を襲ったことはありません。

あやめ:私と同じようにオルフェノクになってしまった人と、今一緒に住んでいるんですが、その人が言ってました。人間として生きていきたいって。だから、私もそうしたいです。

飛鳥:へ〜、偶然だね。同じこと言ってたオルフェノクに、前に会ったことあるよ。

あやめ:じゃあ、私たち以外にも…

飛鳥:うん、人間として生きたいオルフェノクはいるってことだね。


あやめ:知らなかったです…

飛鳥:そのオルフェノク、前にさくのことを別のオルフェノクから守ってくれたことがあってね。だから信じてあげたいの、その人のこと。それに、あやめちゃんも。

あやめ:え?

飛鳥:だって、この前助けてくれたじゃん。私のこと…

あやめ:飛鳥さん…




ー桟橋ー


都会の灯りに満ちた夜景が一望できるこの場所に、蓮加が一人佇んでいた。

美波:やっぱり、ここに居たのね。

蓮加:美波姉さん。何しに来たの?

美波:ほら、そんなツンツンしてないの。

蓮加:だって〜、あいつのベルト取れなかったのが悔しいの!!

美波:分かってるわ。そのことでね、良いこと思いついたの。

蓮加:良いことって?


美波が蓮加の側に寄り、蓮加の耳元で囁く。


蓮加:ふ〜ん、確かに面白そう

美波:でしょ?

美波の提案を聞いた蓮加と美波は、二人して不敵な笑みを浮かべていた。




数日後…

女子バスケ部の部員たちの失踪事件を独自で捜査していた麻衣と瑛紗は、事件の起きた高校に来ていた。


麻衣:この学校の警備室に行って、また当時の防犯カメラの映像を調べる。

瑛紗:最初に見せてもらった時は特に異常は見当たらなかったんですよね?

麻衣:そう、でも…もしかしたら…


二人が警備室に着くと、扉が開き警備員が部屋から出てきた。

警備員:ここは立ち入り禁止ですよ。

麻衣:すいません、こういう者なんですが。

麻衣は警察手帳を警備員に見せた。

警備員:警察、ですか…


瑛紗:ここで起きた失踪事件の捜査に協力して欲しいんです。

警備員:しかし、それはもうそちらが捜査を中止したと…

麻衣:すいません、でもどうしても調べないといけないことがあって…


警備員は渋々、麻衣と瑛紗を部屋に入れた。

警備員:その奥にモニターがあります。

麻衣:ありがとうございます。

警備員の言う通り、奥に進むと複数のモニターがありいくつかは学校の防犯カメラとつながっていた。

瑛紗:この何も写ってないモニター、使いますか。

麻衣:うん。あとは、当時の防犯カメラが捉えた映像を…


その時、後方で警備室の鍵を閉める音が聞こえた。


瑛紗:(鍵?まさか…!)

後ろを振り返ると、警備員が不気味な笑みを浮かべながら手を伸ばすと、指先が触手のように変化し麻衣と瑛紗の方に向かって飛んできた。

麻衣:!?

パリーーンッ!

咄嗟に瑛紗が麻衣を庇って床に伏せると、飛んできた触手がモニターに突き刺さった。


警備員:悪いね、君たちには消えてもらうよ。

警備員の全身が灰色の光に包まれ、やがて人間の姿からタコ型のオルフェノク・オクトパスオルフェノクの姿へと変わった。

麻衣:まさか、あなたが生徒たちを…

オ:違うな、あの女子生徒たちを手に掛けたのは別のオルフェノクさ。

瑛紗:一体何を企んでいるの!?

オ:証拠隠滅だよ。まぁ、君たちに今邪魔されてるんだけどね。

麻衣:(隠滅…じゃあ、やっぱりここに何かあるんだ!)


オクトパスオルフェノクは麻衣たちのもとに急接近すると、瑛紗を蹴飛ばし麻衣の首を掴むと、部屋の壁に向かって麻衣を投げ飛ばす。

麻衣:ぐっ…

瑛紗:先輩!この野郎!!!

オルフェノクの背後に瑛紗がダッシュで接近してキックを浴びせると、瑛紗はロストドライバーを装着し、T2ガイアメモリのジョーカーメモリを取り出す。

「JOKER」

瑛紗:変身!

瑛紗がジョーカーメモリをロストドライバーのスロットに装填し、スロットを傾けた。

「JOKER」


ドライバーからJのイニシャルが出現し、瑛紗の身体を紫色の電気と黒い粒子が覆い仮面ライダージョーカーへと変身させる。


瑛紗:はぁっ、はぁっ!!!

瑛紗がオクトパスオルフェノクの顔面に連続でフックを食らわし、怯んだところに回し蹴りをヒットさせ警備室の壁に沿って立てられた棚にオルフェノクを激突させた。

オ:うわぁ!!

ガシャーーーンッ!!

激突した衝撃でオルフェノクは棚の下敷きになる。

瑛紗:はぁあ!!!

鍵の閉まった扉を瑛紗がパンチでこじ開けると、倒れた麻衣の方へ駆け寄る。

麻衣:う…瑛紗、悪いね…

瑛紗:取り敢えず、ここから出ましょう。

瑛紗は負傷した麻衣に肩を貸すと、破った扉を抜けて警備室から脱出する。




さくら:ふ〜今日も沢山働いたぞ〜

バイクの修理屋のバイトを終えたさくらは、帰り道を歩いていた。

あやめ:遠藤さん。

声をかけられたさくらが振り返る。

さくら:おお、あやめちゃん。



さくら:この前はなんかごめんね、変なことに巻き込んじゃって。

あやめ:いいえ、けどあんな怪物によく出くわすんですか?

さくら:うん、私がファイズのベルトを持っているから。

あやめ:ファイズのベルト?もしかして、飛鳥さんが前に変身した…

さくら:そう。私は変身できなくて、代わりに飛鳥さんが変身して戦ってくれるの。飛鳥さん、初めて出会った時は一緒にいるのを嫌がっていたし、少し冷たい感じな人だったけど、でも根は凄い優しいの。この前なんかね…

とさくらが飛鳥のことを語り出す。それを聞いていたあやめは、さくらが飛鳥のことを話すほど、さくらが嬉しそうなのが感じ取れた。


あやめ:飛鳥さんのこと、好きなんですね。

さくら:えぇ…う、うん。

さくらの顔が赤くなっていた。


?:見つけましたよ、裏切り者。

あやめ:!?

さくら:だ、誰なの!?

?:お二人の命、もらいますね。

スーツ姿の男が、カマキリ型のオルフェノク・マンティスオルフェノクに変貌する。


あやめ:こっちへ!

さくらの手を取ると、あやめは猛ダッシュした。

さくら:え、ああ〜(というか、脚速い…)




オ:くそぉ!どこへ、逃げやがった。

瑛紗と麻衣に逃げられたオクトパスオルフェノクは、二人を追っていた。

オ:あいつらを始末しないと俺が…

美波:あら、ここで何しているの?

オ:あ、あなたはッ!!?

ラッキークローバーのメンバーが目の前に現れ、オルフェノクは思わず怖気づいた。

美波:あの学校から事件があった痕跡を消す。それが貴方の役目のはずだけど、どう?


オ:それが、突然邪魔が入りまして…

美波:ふ〜ん、外部の人間に「失踪事件にオルフェノクが関わってました〜」なんてことバレてないわよね??

オ:それが、警官の二人にどうやら勘付かれたらしく…

美波:あら、それは大変ね〜あなたの処分をしなくちゃいけないわね?


静かに不気味な笑みを浮かべながら美波はオルフェノクに接近し、手から青い炎を放出しワイングラスを作り出す。そのグラスの底から液体が湧き出る。

オ:ま、まさか!?

美波:ごめんね〜社長から指示が出されているの。あなたが任務に失敗しているのを確認したら、始末してって。

オ:や、やめろぉ!!

美波:さようなら。

美波がグラスから液体をオルフェノクの胸部に垂らす。

オ:あ、うわぁあああああ!!!!!!

サァ…     ドサッ

液体を浴びたオルフェノクは灰化し消滅してしまう。

美波:ふふ、可哀相に…




瑛紗:ふ〜、なんとか振り切ったようですね…

ジョーカーの変身を解除した瑛紗が一息つく。

麻衣:ごめん、私のせいで。

瑛紗:気にしないでください。

麻衣:とりあえず、あの事件にオルフェノクが関わっていることが分かったけど…今のところそれだけか…

瑛紗:だけじゃないですよ。

そう言うと、瑛紗がスマホの画面に写った男の写真を見せる。

麻衣:!これって…

瑛紗:あの警備員の顔です。それと、これが…

瑛紗がポケットから取り出したのは、何かの会社のネームタグと思われるものだった。

麻衣:す、スマートブレイン!?あの有名な企業の…

瑛紗:私たち、大変なことを判明させてしまったみたいです…




啓太郎:いや〜楽しかったですね。

美月:はい、なんか久しぶりにはっちゃけちゃいましたね笑。

遊園地でのデートを終えた二人は、カフェの外にあるテラス席でお茶をしていた。

美月:それにしても、ジェットコースター乗った時に啓太郎さんすっごい声あげてましたよね笑。


啓太郎:ちょっとやめてくださいよ、恥ずかしいですから笑

美月:ふふ、面白かったです。

啓太郎:乗ってるとき、ずっと笑ってましたもんね…



蓮加:裏切り者、み〜っけ。

蓮加は、啓太郎と美月の二人の様子を遠くから伺っていた。

ドキューンッ!!!

蓮加:!

背後から奇襲をかけられた蓮加が振り返ると、

瑞穂:見つけたぞ、今度こそ貴様を倒す。

蓮加:今、あんたの相手してる暇ないんだけど〜

瑞穂:知ったことか。

瑞穂は手にしていたカイザドライバーを装着する。

蓮加:けどいっか。リベンジしたかったし。

「9 1 3  Standing by」

カイザフォンに変身コードを入力した瑞穂は、カイザドライバーにカイザフォンをセットする。

瑞穂:変身。

「Complete」

瑞穂がカイザに変身するのと同時に、蓮加はセンチピードオルフェノクに変身した。

蓮加:今度こそぶっ潰してあげる。




オルフェノクの追っ手から逃げてきたあやめとさくらは、物陰に隠れて息を切らしていた。

あやめ:はぁ〜、はぁ〜

さくら:今、飛鳥さんに連絡入れたから、これできっと助けてくれ…

(壁が破壊される音)

あやめ・さくら:うわぁ!!!

衝撃で二人は吹き飛ばされた。


二人を追ってきたマンティスオルフェノクが両手に持っていた武器を投げ飛ばしコンクリートの壁を破壊し、破壊された穴から姿を見せる。


オ:もう逃げられませんよ?

さくら:(もう追いついてきたの…?)

あやめ:(どうしよう、このままじゃ…でも変身したら…)

オ:ふふ。

オルフェノクは左手であやめの首を掴むと、あやめの身体を持ち上げる。


あやめ:うぅ!?

オ:死んでもらいますね。


さくら:うぉおお!!

オルフェノクに捕まったあやめを救おうと、さくらがオルフェノクに向かって体当たりする。が、軽い音がしただけで微動だにしないオルフェノクだった。

オ:ふ、哀れですね。

オルフェノクが空いた右腕を振り回すとさくらの胸部に直撃し、さくらは吹き飛んで地面に転がされる。

さくら:がはぁ…

そのままさくらは意識を失ってしまう。


あやめ:遠藤…さん…

オ:フハハ、さてと裏切り者のオルフェノクである貴女を…!?


オルフェノクを睨みつけたあやめは全身に力を入れ、ホースオルフェノクに変身すると、魔剣を生成してオルフェノクの腹部を突く。

オ:ぬお!?

不意打ちをくらい、オルフェノクはあやめを手放す。





飛鳥:!

少しして、飛鳥がさくらたちの元に到着した。


飛鳥:(あやめちゃん…)

ホースオルフェノクに変身したあやめがオルフェノクと戦闘しているところを目撃した飛鳥は、倒れたさくらの元に駆け寄る。

飛鳥:さく!?しっかりして!!

さくらの呼吸を確かめると、息はしていた。

あやめ:遠藤さんを連れて、逃げてください!!

飛鳥:っ、分かった!

倒れたさくらを背負った飛鳥はバイクまでさくらを運び、自身の背後にさくらを乗せるとバイクを走らせた。


オ:ちっ。

あやめ:(これで良い…)

あやめは魔剣を振り、オルフェノクの正面を斬りつける。




スマートブレイン社ビル 社長室

村上:残念だ、お2人とも立派なオルフェノクとなると思っていたが…

デスクに置かれたPCの画面に映る美月とあやめの画像を見ながら、スマートブレイン社長の
村上がぼやく。

村上:もはや、これで裏切り者に決定となったか。


14話 完

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