13話「互いの正体」
美波:はっ!
ロブスターオルフェノクに変身した美波のサーベルがファイズに変身した飛鳥の胸部に当たり、飛鳥が吹き飛ばされてしまう。
飛鳥:うぐ…
美波:ふふ、……ん?
その時どこからか馬の蹄のような音が響いてきた。
ファイズとロブスターオルフェノクの間に4本の足を生やしたホースオルフェノクに変身したあやめが乱入し、魔剣でロブスターオルフェノクの肩を切り裂く。
あやめ:はぁああ!!
美波:!?
奇襲を受けて怯む美波にホースオルフェノクは2足形態になると斬撃をさらに繰り出し、美波を後退させる。
美波:うっ…
美波の動きに隙ができたのを確認した飛鳥はすかさずファイズフォンをフォンブラスターに変形させて、光弾のショットを美波に向かって放つ。
美波:面白いこと、するわね…
フォンブラスターから放たれたショットをかわした美波は腕を抑えながら撤退した。
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あやめ:…
飛鳥:…
ホースオルフェノクの姿のあやめとファイズの姿の飛鳥が、互いの正体を知らずに黙り込んで立ち尽くしていた。
飛鳥:お前…
飛鳥に呼びかけられ、あやめが振り返る。
あやめ:……うぁぁぁあ!!!
あやめは咆哮を辺りに響かせると、飛鳥に向かって急接近してきた。
飛鳥:(やっぱりか…)
飛鳥の目の前に迫ったあやめは魔剣を振り翳す。
あやめ:はぁあああ!!!
飛鳥:!
(風をきる音)
飛鳥の頭上すれすれのところで魔剣の動きが止まった。飛鳥が俯かせていた顔を上げると、魔剣を握っていたホースオルフェノクの腕が震えていた。
あやめ:ぐっ……
飛鳥:え…?
そのままあやめはゆっくりと魔剣を降ろすと、飛鳥に背を向けて歩みを進めその場から立ち去っていく。
飛鳥:(アイツ…)
ホースオルフェノクの後ろ姿を飛鳥はただじっと見守っていた…
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センチピードオルフェノクの姿となった蓮加はオルフェノクの力で鞭を生成した。
蓮加:ふん。
蓮加は鞭を振り回すと、カイザに変身した瑞穂が持っていたカイザブレイガンを鞭で括り付けて奪い取る。
瑞穂:しまった!
蓮加:いただき〜っと。
蓮加はそのまま奪い取ったカイザブレイガンの銃口を瑞穂に向けた。
瑞穂:!?
カイザブレイガンから放たれた光弾を両手でカバーしようとした瑞穂は、連続で飛んできた光弾の勢いに押されて地面に転がされていく。
瑞穂:がはぁ!!
蓮加:あはは、じゃあ〜ね〜
高揚していた蓮加が、カイザブレイガンの引き金を引こうとした瞬間、
(銃撃音)
背中に衝撃を受けた蓮加は動きが止まる。
蓮加:だ、誰!?
蓮加が背後に気を取られた隙に瑞穂はカイザフォンをドライバーから取り外して素早くフォンブラスターに変形させると、カイザブレイガンを持つ蓮加の右手に狙いを定めて撃った。
蓮加:あっ!?
瑞穂の反撃を受けた蓮加は右手からカイザブレイガンを手放してしまう。
すかさず瑞穂はカイザブレイガンを奪還すると、蓮加に向けてカイザブレイガンとフォンブラスターの二丁を連射した。
蓮加:うわぁ!!
連続で放たれた無数の光弾を浴びた蓮加が橋から落下し、瑞穂が蓮加が落下した場所へ駆け寄り橋の下に目線をやるも、蓮加の姿は見当たらなかった。
瑞穂:(ちっ、逃げられたか。)
変身を解除した瑞穂の脳裏に、クロコダイルオルフェノクとの戦闘が蘇る。
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(ここから回想)
J:ラッキークローバーの名に懸けて、お前を倒す。
二度カイザによって倒された筈のクロコダイルオルフェノクことラッキークローバーのJが、瑞穂と友香の前に立ち塞がる。
瑞穂:まだ生きていたのか!!
瑞穂はアタッシュケースからカイザドライバーを取り出して、装着した。
友香:瑞穂!?そんなことしたら…
カイザフォンを開き、変身コードを入力しようとした瑞穂の手を友香が止める。
瑞穂:分かっているよ。けど、やらないといけないの。みんなのために…
そして瑞穂はそっと友香の手をどかすと、カイザフォンに変身コードを入力した。
「9 1 3 Standing by」
瑞穂:変身。
「Complete」
瑞穂:でぁあああああ!!!!!
一瞬で間合いを詰めて敵に斬撃を繰り出すカイザの必殺技「カイザスラッシュ」が、クロコダイルオルフェノクにヒットする。
J:ぬぅおおおおおお!!!!
カイザスラッシュを受けたJが爆発とともに青い炎をあげ灰化し消滅した。
クロコダイルオルフェノクを倒し、カイザの変身を解除した瑞穂のもとに友香が駆け寄る。
友香:体、大丈夫?
瑞穂:え、ああ。なんとも…
そう答えた瞬間、瑞穂の中で怒りが湧いた。
瑞穂:(じゃあ、私のせいで…皆は…)
友香:瑞穂?
瑞穂は地面に膝をつくと、拳を握り締め力強く拳で地面を叩いた。瑞穂の拳と地面の砂がぶつかり、砂塵が舞う。
瑞穂:うぅ…!!!!!うわぁあああああ!!!!!!
(ここまで回想)
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さくら:飛鳥さん!
ロブスターオルフェノクから逃げたさくらの元に、ファイズの変身を解除した飛鳥がやってきた。
飛鳥:あれ?あやめちゃんは?
さくら:それが何か大事な用があるっていって、居なくなっちゃったんです。
飛鳥:そ、そっか…
あやめの正体を知らない飛鳥は、そのままさくらの話を聞いていた。
さくら:それより、あのオルフェノクはどうなりました?
飛鳥:逃げられたよ。
さくら:そうですか。でも、飛鳥さんが無事で良かったです。
飛鳥とさくらは、菊池クリーニングに帰ることにした。
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河川がすぐ横に流れている広場にやって来た瑛紗は、ベンチで腰掛けていた麻衣に声をかける。
瑛紗:白石先輩。
麻衣:瑛紗。毎回急に呼び出して、悪いね。
瑛紗:もう慣れましたよ笑。それより、大事な話って?もしかして、打ち切りになったあの失踪事件の捜査のことで?
麻衣:うん、と言ってもほぼ私の憶測なんだけどね。前に話した、最近噂になっている怪物のことなんだけど…
手すりに腕をかけて、河川に視線をやりながら麻衣がぼやく。
瑛紗:確か、オルフェノクとかって名前でしたっけ?普段は人間の姿だけど、人を襲うときに灰色の怪物に変身して人間を襲うんですよね。
麻衣:そう。そして、襲われた人間は肉体が灰になって消えてしまう…
瑛紗:・・・!なるほど、そのオルフェノクが失踪事件に関わっていると言いたいんですね。
瑛紗が右手の人差し指を上に立てて言う。
麻衣:流石ね。
瑛紗:でもそれを証明する物的証拠がまだ出てないと…いや、一つは私たちが見つけているのか、あの体育館の不自然な空洞がある壁。
麻衣:そう。それとね、これからもう一個、証拠を手に入れに行こうと思うの。
瑛紗:その為に私を呼んだんですね?
瑛紗の問いに、麻衣がゆっくりと頷いた。
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ー菊池クリーニング屋ー
飛鳥:ただいま〜、啓太郎くん。
さくら:ただいま〜、啓太郎。
啓太郎:あっ、えんちゃん飛鳥さん、おかえり!って、うわぁ!?
二人に呼ばれた啓太郎が慌てふためき、足を躓き転がる。
さくら:ちょっ、大丈夫!?
顔面を床に強打した啓太郎をさくらが起こすと、啓太郎の鼻から血が出ていた。
啓太郎:痛てててぇ…
飛鳥:あぁ…💦ほらティッシュ!
鼻血を止める為のティッシュを飛鳥が啓太郎に渡してあげる。
啓太郎:ごめん、飛鳥さんありがとう。
飛鳥:山に会った?
さくら:なるほどね…だから、浮かれていたんだ。
啓太郎:浮かれていたっていうか笑。そう、今日買い物している時にね。って、美月さんのこと苗字で呼び捨てしているけど、会ったことあるの?
飛鳥:あ、うん…
さくら:前にね、ちょっと。
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(ここから回想)
?:うわぁああ!?
スーパーの店員が足を躓いて転び、運んでいた段ボールに入っていた大量の野菜を落としてしまう。
啓太郎:だ、大丈夫ですか!?
偶々近くにいた啓太郎が駆け寄り、店員が落としたトマトやキャベツを拾い始めた。
店員:すいません…
啓太郎:いえいえ、困った時はお互い様ですから。
そう言った啓太郎が落ちていた他の野菜を拾うのを再開すると、啓太郎の手と別の人の手が触れ合った。
啓太郎:あっ、すいません…
?:困った時はお互い様、ですよね?
聞き覚えのある声で、啓太郎が顔を上げると、
啓太郎:美月さん!
美月:私も手伝いますね。
啓太郎と美月が協力して全ての野菜を拾い終わると、店員が2人に頭を下げた。
店員:ありがとうございます!
啓太郎:いえ、これくらい。あっ、野菜が傷ついてないかも見ますか?
店員:いやぁぁ…流石にそこまでしてもらわなくても…
美月:でも、心配ですよね?私も見ますよ!
(ここまで回想)
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さくら:へ〜。啓太郎は相変わらずだけど、山下さんも中々のお人好し…だね…
飛鳥:うんうん…
啓太郎:て言うことで、ちょっと仕事進んでなくてさ…ごめん!
飛鳥・さくら:そう来ると思った…
肩を落とす飛鳥とさくらであった…
さくら:どうかしたんですか?飛鳥さん。
アイロンがけの手を止めてボーッとしていた飛鳥にさくらが声をかける。
飛鳥:え。いやぁ…なんでもないよ。
少し気になっていたさくらだったが、それ以上に聞こうとはしなかった。
飛鳥:(あいつ…なんで私を…)
一度はファイズに変身した自分と戦った筈のホースオルフェノクが、何故今度は自分を助けたのか飛鳥は分からずにいた。
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ー都内 高層マンションー
美月:あ、おかえり〜
帰って来たあやめに、美月がいつもより笑顔で出迎える。
あやめ:なんか嬉しそう、ですね?
美月:え?そ、そうかな??笑
あやめ:はい、ものすごくわかりやすい表情ですよ?
少しして、あやめと美月はリビングでそれぞれ紅茶とコーヒーを飲みながら談笑し始めた。
美月:いや実はね、買い物に行った先で、よくクリーニング頼んでいる店の店長さんと会ってね。
あやめ:へ〜、そう、なんですね。
美月:うん。
あやめ:もしかして、その人好きなんですか?
美月:ぶほぉーーーーーー!!!!
飲んでいたコーヒーを美月が吹き出す。
美月:い、いやぁ…そんなんじゃないよ!笑
あやめ:(すごく分かりやすいくらい図星ですよ??)
美月:それはそうと、あやめちゃんは逆に暗いよ?何かあった?
あやめ:え?ああ、別になんでも…
美月:本当に?大丈夫?
あやめ:はい、心配しないでください。
言葉とは裏腹にあやめの頭の中では、飛鳥がファイズだったことに対する衝撃で一杯だった…
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ーBAR CLOVERー
蓮加:ああ!!!悔しいんだけど!!!!
美波:落ち着いて、蓮加。ほら、あなたの好きなカシスオレンジ用意するから。
蓮加:だって、一度はベルト手に入れてたのに、邪魔が入ってんだよ!!
美波:邪魔?誰だったの?
蓮加:う〜ん、よく姿は見えなかったから分かんないけど。とにかく、ソイツのせいでカイザのベルト手に入れられなかったの!!
美波:まぁまぁ、思い通りにならないことも時には起きるものよ。
蓮加:って、そっちはファイズのベルトを手に入れたの?
美波:いいえ。
蓮加:じゃあ、なんでそんな落ち着いていられるの?
美波:ふふ、時には辛抱も大事なのよ。
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夜の都会の歩道橋の上で、瑞穂は下の道路を通過していく車両たちを見下ろしていた。
瑞穂:(ラッキークローバー、あのメンバーの中に私たちの仇が…)
瑞穂の右手に一枚の写真が握られていた。その写真には、瑞穂の他に友香や由依、葵、そしてその他の若い男女たち、そして…
瑞穂:さくら、ちゃん…
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そして、数日後…
あやめ:ファイズのベルトを手に入れないと、美月さんが…でも…
その時、
?:裏切り者!!!
一体のオルフェノクが、あやめに奇襲を仕掛けて来た。
あやめ:!
オ:貴様、ラッキークローバーのメンバーにたてついたようだな。命知らずめ。
オルフェノクが腕を振り上げ、パンチをあやめの顔面めがけて繰り出す。が、ギリギリであやめは横に顔を動かしてかわしホースオルフェノクの姿に変身した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
飛鳥:!
バイクを走らせていた飛鳥の視界に、ホースオルフェノクとオルフェノクが戦闘しているのが入った。
飛鳥:あいつ…
バイクを急停止させ、飛鳥はファイズドライバーを装着した。
「5 5 5 Standing by」
飛鳥:変身。
「Complete」
あやめ:うわぁあ!?
オルフェノクの攻撃で魔剣を手放してしまったあやめは腹部を突かれ、吹き飛ばされてしまう。
飛鳥:たぁあああああ!
そこへ飛鳥が飛び入り、オルフェノクに不意打ちのキックを繰り出す。
その時、あやめの変身が解ける。
飛鳥:え!?
その一連の光景を見た飛鳥は驚きを隠せなかった。
オ:どこを見てる!!!
飛鳥が気を取られている隙に。オルフェノクは左フックを飛鳥の顔面に食らわす。
飛鳥:ぐう…(今は先に、コイツを)
斬撃をもらい地面に転がされながら、飛鳥はファイズアクセルフォームへと変形した。
「Reformation」
飛鳥がファイズアクセルのスイッチを押し「アクセルモード」が発動させる。
「Start Up」
一瞬にしてファイズの姿が見えなくなり、オルフェノクが戸惑いを見せる。
オ:消えただと⁉️
その直後、ファイズアクセルフォームによる高速かつ無数のパンチと回し蹴りが交互にオルフェノクに向けて飛んできた。
オ:な、なんだこの力は…!?
成す術なくオルフェノクは空中に打ち上げられると、飛鳥は右手にファイズショットを装着しファイズフォンのENTERボタンを押す。
「Exceed Charge」
ファイズショットにエネルギーが装填され、
飛鳥が高速でオルフェノクにファイズショットの打撃を連続で喰らわす。
飛鳥:はぁ、はぁ、はぁ!
「3 2 1 TIME OUT」
アクセルフォームが解除され、飛鳥はもとのファイズの姿に戻る。
オ:うわぁああああ‼️
ファイズショットのパンチを全て受けたオルフェノクが、断末魔をあげながら青い炎をあげて爆発しそのまま灰化し消滅した。
ファイズの変身を解除した飛鳥は、あやめの方へ振り返る。
あやめ:・・・
飛鳥:・・・
それぞれが相手の正体を知り、沈黙が続いた…
13話 完
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