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「もっかい」を許容する会

「もっかい」

「もう1回」を縮めて言うと「もっかい」になりますよね。聞いたらわかります。文脈にもよるけれども。

縮めること

ことばって、音声になると、前の音と、後ろの音が重なることがあります。言いやすくするために、発音が変わります。「~というか」が「~てか」になることありますよね。

「もういっかい」

「もういっかい」が「もっかい」に変化するとはどういうことかを考えてみます。まず、「もういっかい」の「もう」は伸ばして発声するので「もー」になります。そして、誰にでもわかりやすくするために、ローマ字にしてみます。

mo-ikkai → mokkai

なるほど、「-i」が消失しただけのようです。

「-i」→「」

こんなパターンある? あるでしょうね。「統一」「大石」「聖域」とかですね。変化させてみます。
統一(to-itsu)⇒ とつ(totsu)
大石(o-ishi)⇒ おし(oshi)
聖域(se-iki)⇒ せき(seki)
まあ、わかっていたことですけれども、許容できません。個人の感覚なのでしょうけれど、許容できません。伝わりません。
それでは、別のパターンで考えてみます。

「mo-ikk」→「mokk」

もう考える気がないのがばれますね。ほとんど同じ構造で比較してみます。「もう1○」です。

もう1巻⇒もっかん
もう1簣⇒もっき
もう1句⇒もっく
もう1件⇒もっけん
もう1個⇒もっこ

はい、みなさん会話文を思い浮かべてください。
「もう1巻だけ貸して、続き気になる。そのあとからは自分で買うから。」
⇒「もっかんだけ貸して……」
簣(き)って何かというと、「もっこ」です。土を運ぶための竹のかごです。漢文を読んでいるときに出現して、日本人読者を困らせる漢字です。鈴木虎雄先生は「もっこ」と訳していました。「1もっこ」と単位にもなるみたいです。
「もう1句出そう。お~いお茶新俳句大賞で50万狙うんだろう?」
⇒「もっく出そう。……」
「もう1件行きましょう。まだまだ終電に間に合いますよ。」
⇒「うるせえ、帰らせろ」
「もう1個で全部そろいます。呪文でドラゴンを呼び出せます。」
⇒「もっこで……」

このように、「かきくけこ」をそろえてみましたが、許容できそうなものはありません。

「mo-ixx」⇒「moxx」

だめそうなのだけれど、試してみたかったので書き足します。
「もう1歳」⇒「もっさい」
「もう1周」⇒「もっしゅう」
「もう1升」⇒「もっしょう」
「もう1寸」⇒「もっすん」
「もう1戦」⇒「もっせん」
「もう1艘」⇒「もっそう」
「もう1体」⇒「もったい」
「もう1挺」⇒「もっちょう」
「もう1頭」⇒「もっとう」
「もう1杯」⇒「もっぱい」
「もう1品」⇒「もっぴん」
「もう1分」⇒「もっぷん」
「もう1遍」⇒「もっぺん」◎
「もう1本」⇒「もっぽん」

「もう1回」と同じ意味で使える「もう1遍」なら「もっぺん」で通じるように思います。使ってみてください。強く速く発音するのがコツです。たぶん。

まとめ

音の構成によるところがありますが、意味によるものが大きいようです。カ行ではうまくいかなかったけれど、「ぺ」ではできる、ということから、条件は音だけではないことがわかりました。また、「回」と同じ「か」で始まる「巻」が当てはまらないことも、条件が音だけでないことを裏付けます。

同じ意味のもので、おなじ縮め方ができそうだということはわかりました。あとは、これがどれだけ多くの人に認めてもらえるかですね。個人の感覚で判断していますので、サンプルを増やす必要がありそうです。

考えるのは楽しかったです。どこかで会った人に聞いてみましょう。それでは。


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