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【前編】まさにSFレベルの天才/宇多田ヒカル『SIENCE FICTION』

 宇多田ヒカルがデビュー25周年を迎えるにあたってX上でカウントダウンがはじまり、「ひさびさのツアーか!?」と予想したファンは少なくなかったはず。

 その予想は的中することになったのですが、その期待を超えてなんとベストアルバムの発売!しかもそのタイトルは『SIENCE FICTION』!

 本人もこのタイトルが思い浮かんだときに「これだ!」と思ったらしいのですが、こんなにしっくりくるものもなかった。タイトルだけで名盤決定。

 一方でベストアルバムか…と思ったファンもいたはず。
 宇多田ヒカルは明らかにスタジオで音楽を創り上げるミュージシャンであり、それが産み落とされるのはスタジオアルバムであり、ライブではない。

 それを明確にさせたのが『Fantôme』であり、さらに最高の形で昇華させたのが『BADモード』でした。
 『BADモード』はこれで引退してしまうのではと思ったくらいの素晴らしい作品でしたが、その心配をよそに黙々と職人のように(というか職人である)宇多田ヒカルは作品をリリースし続け、ファンを安心させていた中でのベストアルバムリリース!

 思えば「25」という数字に拘るのは少し彼女らしくないなと思いましたが、ここまで続けてこられたという感謝の想いだったようです。

(長くなったので前後編で分けます)


シングルコレクションはベストアルバムじゃないの…?

 初のベストアルバム!という冠に、いやシングルコレクションは…?『Utada the Best』は…?と思ったひとも少なくなかったはず。

 まず『Utada the Best』は宇多田ヒカルの意向に反して作品の上、シングルコレクションの発売日にぶつけてくるというレコード会社の対応に「ファンにお金を出させたくない」と表明するほどの黒歴史アルバムなのでノーカウント。

 ではシングルコレクションは?というと、これはあくまで「シングルコレクション」であってベストアルバムではないということのようです。
 この「ベストアルバム」というのは和製英語な上、スタジオアルバムではないセレクションアルバムに分類されるシングルコレクションやグレイテストヒッツなどの総称になっています。

 どちらかというと本作はグレイテストヒッツに近い「現時点での新旧含めた彼女が思うベストな楽曲を収録したアルバム」と理解するのが正しいのでしょう。

収録されなかったシングル曲

 ここでそれを明確にする上でも収録されなかったシングル曲をまず見てみましょう。

time will tell

 "Automatic"旋風が巻き起こる前にラジオでパワープッシュされていたのはこの曲であり、これがデビュー曲になるのかと思いきや両A面で、売れまくった割りに世間認知度が低い曲。

 当時は短冊形の8cmシングルとマキシシングルと言われていた12cmシングルが発売されてましたが、12cmシングルに収録されてたB面のMIXが好きでよく聞いてました。

Movin' on without you

 "Automatic"がR&Bだったのに続くシングルがまさかのハウスという選択に衝撃受けたひとたちがかなりいたはず。

 ただそこについてはあまり言及されず、藤圭子の娘ということや言葉の区切り位置なんかの話が当時は多かったですね。そこじゃないのに。

Wait & See 〜リスク〜

 ジャム&ルイスを連続起用しましたが、前作の"Addicted To You"が衝撃的すぎて、(彼女の中では)平凡な楽曲という印象。

For You

 メロディが気に入りすぎて、歌詞に難儀したというこの曲は(シングル曲だから隠れてないけど)隠れた名曲。終盤のフェイクが好き。

タイム・リミット

 GLAYのTAKUROとの共作というめちゃくちゃ珍しい楽曲なだけあって、メロディラインがいい意味で彼女っぽくない。でも歌詞が哲学的。

FINAL DISTANCE

 元々は2枚めのスタジオアルバムのタイトル曲だったのに、それをバラードにして全く別の楽曲に変容させた上、3枚めのアルバム制作のきっかけになった(つまり前作の曲なのに3枚めのアルバムに収録された)という実はすごい作品。
 このあたりからアレンジにも関わるようになる。

誰かの願いが叶うころ

 このシングルからアレンジが本人のみとなったのにその巧みさに舌を巻いて、タワーレコードで視聴しまくったのを覚えています。(ちゃんと買いました)

Be My Last

 積極的に聴かないのですが、それはギター主体のアレンジだからでしょうか。

Passion

 逆再生といえばこの曲と"BOY MEETS GIRL"(古い)

Keep Tryin'

 LISMO!はなぜSpotifyになれなかったのか。

ぼくはくま

 あまり邦楽は聴かないという宇多田さんは"コンピューターおばちゃん"は知っていたのだろうか。(カップリングで放送された)

Kiss & Cry

 ヒッキー、「キスクラ」知ってるのね!と思ったフィギュアスケートファンが少なくなかったはず。

HEART STATION/Stay Gold

 両A面で両方とも収録されなかった珍しいシングル盤。

Face My Fears

 この曲シングルで発売されてたのね!といま気づきました。

Eternally

 『Distance』に収録されていたバラードが7年のときを経てフジ系ドラマに起用され、配信リリース。
 プロデューサー、ファンだったんでしょうね。

桜流し

 「人間活動」の中、突然発売。
 エヴァンゲリオンと宇多田ヒカルが完全に切り離せなくなりました。

真夏の通り雨

 MVが一番好きかもしれない。アルバムとしては『BADモード』が最高傑作だと思うけれど、『Fantôme』は収録されている楽曲ひとつひとつが魂を削るような楽曲ばかりという印象。

大空で抱きしめて

 ポップなアレンジからストリングスが入る壮大なアレンジに変わっていくという、最近の楽曲に通ずる要素があることを考えるとこの辺りからまたギアチェンジというか、別の領域に入っていったと言えるのかも。

Forevermore

 突然MVで踊りだしたのでちょっとビックリしましたが、「表現」の領域が広がっていったのかも。
 清水ミチコさんが「歌手の周りでダンサーが踊りまくってて、歌に全然集中できない」というネタはこの楽曲のライブバージョンが元になってる気がする…。

Play A Love Song

 "大空で抱きしめて"あたりからやたらタイアップが増えたなという印象がありますが、宇多田ヒカルを聴いて育った世代が偉くなっているのかもしれない。

誰にも言わない

 『Fantôme』が発売されたときにバズってたイラストがあって、まさに!ともう別次元の存在になったと思ったのに、『BADモード』でさらに確変していて、何度確変するの!?と理解が追いつかなくなったのがこの曲あたり。

PINK BLOOD

 2023年一番私が再生した曲がコチラです。
 SNSの時代に悩むひとに向けた人生讃歌。

君に夢中

 TBSドラマ『最愛』の主題歌。
 珍しく毎週観てたのに、最終回を迎えたら良いのはこの曲だけでした…。

本日のドレス:ジョディ・フォスター

 相変わらずキレイだし、めちゃくちゃ外しているわけではないのになんだか野暮ったい印象になったのはなんでなんだろう…。ブランドはロエベ。(★☆☆)

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