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"超"距離スポーツは誰でもできる!?/『ナイアド ~その決意は海を越える~』

 今シーズン楽しみにしていた『ナイアド ~その決意は海を越える~』。

 ハリウッドの2大女帝、アネット・ベニングとジョディ・フォスターが初共演+実在の人物+スポ根ものということで、オスカーの匂いプンプンの作品。

 10月20日から日本でも限定公開されていましたが、Netflix制作のため早くも11月3日から配信されたので拝見させていただきました。ありがてえ。


ウルトラスイミング/長距離水泳とは?

 『ナイアド ~その決意は海を越える~』は、還暦を迎えた「ナイアド」が約180kmのウルトラスイミングに挑戦するお話です。

 180kmというと東京から静岡くらいまであります。ヒー。

 ナイアドが挑戦するLong-distance swimming(長距離水泳)は、オープン・ウォーター・スイミング(OWS)のひとつです。

 FINA(国際水泳連盟)によると最も古く、同時に新しい種目でもあり、それは世界初の競泳大会が「人工池」で1837年に行われ、2008年の北京オリンピックで約10kmのマラソンスイミングが導入されたことが理由とのこと。

 オリンピックでは約10kmの距離ですが、世界水泳では5km・10km・リレーの3種目があるようです。

 この種目の面白いところは、男性より女性のほうがよい記録を出せるということ。
 ただ競技の特性上、同条件下というのがなかなか難しいでしょうね。

長距離スポーツは誰でもできる!?

 本作のレビューを観ていたら、「健康で水泳が得意なひとであれば、誰でもできそう」というような超乱暴なコメントがあってビックリしました。

 実際はどうでしょうか?

ナイアドの記録についての疑義

 ナイアドの偉業について疑義があるのは確かです。

 それは観測者ログが不完全であることや、9時間以上の報告書の空白があることなどが理由で、ギネス記録も取り消されています

 また、映画でも描かれていますがお世辞にも性格がいいキャラクターとは言えず、そんなところも彼女の努力に水を差す結果になっているように思います。(本人も認めています)

"Maybe I had too much hubris, like, ‘I don’t need to prove this to anybody.’ That’s my bad"

偉業に関するナイアド自身のコメント

超距離スポーツに対する疑問

 こういった超距離スポーツや冒険に分類されるような挑戦に対する疑問みたいなものは自分もあります。

 ナイアドの挑戦についても莫大な費用と人員が割かれていますし、エベレスト登頂におけるシェルパの存在などを考えると、その達成にどれほどまでの意義があるのか疑問符を持つのは不思議ではありません。

 ただそれを誰でもできると言ってしまうのは乱暴すぎるかなと、たかがフルマラソンではありますが、過酷なスポーツに分類される競技を嗜むものとしては正直思います。

マラソン競技の実際

 前回の東京マラソンの結果を見てみましょう。

 これを見ると、マラソンであっても完走率は95.6%です。
 人数にして36,560人中36,751人、つまり191人が脱落しています。

 つまりフルマラソンですら、お金を払い自主的に申し込んだ人でも200人弱は完走できないのですから、この時点で誰でもというのは無理があるように思ってしまいます。

 これがウルトラマラソン(42.195kmを超える距離)になるとどうでしょうか。世界陸連公認のサロマ湖100キロウルトラマラソンで見てみます。

 最新の結果(2019年)で73.3%とフルマラソンに比べてグッと減ります。

 フルマラソンと比べると非常に低い数字です。
 そしてこのウルトラマラソンにエントリーする時点でかなりの走力を持っているひとばかりですから、その上で3割近い人が脱落するということは相当な過酷さです。

 100km、つまりフルマラソンの倍以上となりますので想像するだけで吐き気がします。

「海上」という過酷さも

 実は一時期ウルトラマラソンに移行しようと練習していた時期があるのですが、腰を壊したので断念した経験があります。
 陸上ですら100kmに挑戦する前に諦めた自分としては、それを超える距離を泳いで進むなんて絶対無理です。

 これも映画で描かれていますが、プールと比べ、圧倒的な悪条件。屋外ですから紫外線の影響をかなり受けますし、海水です。
 危険な生物も生息しています。

 何より大変だと思ったのが補給です。

 フルマラソンでも時間をかけて走っていると普通にお腹が空きます。
 ですが、運動中は内臓に負担がかなりかかりますので、消化が難しくなります。マラソン用の補給食ですらお腹を壊す人もいます。

 走りながらでもしんどい(実際4時間くらいまでのランナーだと立ち止まって補給したりします)のに、海の中で?ムリですよ。

 達成はもちろん、挑戦をするだけでも特別な才能が必要な競技です。

本日の一曲

 長距離競技と音楽は相性が良いようで、Qちゃんがhitomiの『LOVE2000』を聴いていたことでリリースから遅れてスマッシュヒットになったりなんてこともありましたが、ナイアドも映画の中で「プレイリスト」について話すシーンがあります。

 年寄り扱いされるのを嫌がりながら、選曲はやっぱり年齢を感じさせますね。

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