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『PERFECT DAYS』と『ブラッシュアップライフ』に見るかけがえのないルーチンの日々

 アカデミー賞の国際映画賞に日本代表としてエントリーしている『PERFECT DAYS』。それだけでなく現時点で9つの映画賞にノミネートされています。

 また主演の役所広司さんも、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞するだけでなく、ボストン映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞、オンライン女性批評家協会賞にノミネートされています。

 ただ『PEFECT DAYS』は、ヴィム・ヴェンダース監督によるもので、ドイツの映画監督です。

 今年は是枝裕和監督の『怪物』、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』、濱口竜介監督の『悪は存在しない』の3作が三大映画祭で高評価を受けた上、現在サプライズヒットをしている『ゴジラ-1.0』もあります。

 なのにドイツ人監督の『PERFECT DAYS』が日本代表!?なんで?って思ってました。

 ところがそんな『PERFECT DAYS』に自分はまんまと泣かされてしまいました。

わかりやすい"泣かせる"シーンがあるわけではない

 予告編のとおり『PERFECT DAYS』は静かな映画で、現実から逸脱した出来事が起こるわけではありません。
 もちろんゴジラは出てこないし、誰かが重い病気に罹ったりもしないし、特攻隊に入隊したりもしません。

 主人公のヒラヤマが過ごすのは、朝早く起きて現場に向かい、淡々とと仕事をこなした後に銭湯に入り、浅草駅地下にある居酒屋で一杯引っかける、休みの日は古本屋に寄ってたまに行きつけの小料理屋に向かうという何気ない日々です。

 ただ私たちの生活と同じように、不真面目な同僚がいたり、せっかくお風呂に入ったのに雨に降られたりとちょっと気が滅入ることが起きたり、ポテトサラダを少しサービスしてもらったりと嬉しい出来事もあります。

 それはつまらないルーチンでもあるし、日々の大切な生活でもあることを感じたとき、思い浮かんだのはバカリズムさん脚本・安藤サクラさん主演の『ブラッシュアップライフ』です。

あーちんが最終的に選んだ生活は

 『ブラッシュアップライフ』の主人公あーちんは、交通事故をきっかけに自分の人生をやり直すことになりますが、最終的に彼女が選ぶのは、生まれ故郷での生活です。

 いろいろな職業を経て選んだ職業は、1周目の地方公務員で、ほかの職業に比べれば大分地味な仕事です。
(実際はどの職業も地味な仕事の積み重ねなのであるということをドラマでは描いています)

 人生を5周した結果、「やっぱ働くなら地元がいいかな〜」という選択をするのです。
 『PERFECT DAYS』のヒラヤマは人生5周していませんが、終末期を迎えて選んだのはトイレの清掃員。

 描き方は違えど、どちらの作品も一見ルーチンのつまらない生活も、幸せな日々なのだと言ってくれているようで、なんだか泣けてくるのです。

 本日の一曲

 この曲を聴いて『トレインスポッティング』を思い出すのは間違いなく映画好き。

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