「ペンシルパズル」は「パズルゲーム」であり「紙ペンゲーム」である、という仮説を立ててみる

この記事はペンシルパズルAI Advent Calendar 2019、25日目の記事です。

今回のノートを書くきっかけ

前々回のノートでは「パズルゲーム」、前回は「日本パズル協会」を中心にふれていきました。それも今回のノートの下準備でした。


以前、「ロール・アンド・ライト」についてノートを書きました。その際「紙ペンゲーム」関係の情報をあさっていると、こんなツイートに出くわしました。

「…いや、殴りはしないでしょ。むしろ勝手に商用で「ペンシルパズル」を使ったら、全力でドロップキックかますでしょ」などと読みながらひとりごちてました。しかし、確かに

(数独のジャンルである)「ペンシルパズル」は「紙ペンゲーム」

という発想は腑に落ちました。その根拠や理由を、またもや自分なりの仮説を立てて探ってみます。

ボードゲーム◯◯のバリアント『詰◯◯』

ニコリのペンシルパズルの1つに『ゴールは5』があります。これは『詰連珠』をベースにしたルールのパズルです。
『詰連珠』は、

ボードゲーム『連珠』のバリアント

といえます。この『詰◯◯』というバリアントは、さまざまなボードゲーム(とりわけアブストラクトゲーム)に充てることができます。
さて、『詰◯◯』の分類を1つ考えてみます。分け方は「コマ(ピース)の扱い方」です。

A:盤面のコマを移動することができる(例:詰将棋・チェスプロブレム)
B:盤面のコマは移動できないが、取り除くこともできる(例:詰碁)
C:盤面のコマは移動できないし、取り除けない(例:詰連珠)

えー…実のところ、結構遠回しな説明をしておりまして、

記号(コマ)を描き込むだけ = コマ(記号)は移動も除去もしない
 紙ペンゲーム = Cタイプの『詰◯◯』

ということです。
このように考えると、実は日本は

1大「紙ペンゲーム」製造国

と見ることもできます。

従来のパズルとは異なる進化

パズル雑誌『ニコリ』では、投稿者から新しい「ペンシルパズル」を掲載しつつ、数独のように需要生産できるものを選抜していく「オモロパズルのできるまで」というコーナーがあります。30年以上続いており、取り上げられた新作はのべ400種類以上と思われます。

このコーナーから生まれた、ある「ペンシルパズル」が実は従来のパズルと比べてみると希有な特徴を持っていました。そのパズルとは、



『スリザーリンク』。

「オモロパズル」出身のなかでは、もっともメジャーと言い切っていいでしょう。そして、希有だった特徴は何かといえば、




描き込む線の個数が不明

です。それまでの「ペンシルパズル」だと『数独』『カックロ』『ナンバーリンク』『クロスワード』『スケルトン』などありますが、1マスに1つ記号・数字・文字を入れるので個数がわかります。
ペンシルパズル以外でも、『タングラム』『ペントミノ』『ジグソーパズル』にしても、使用するピースの個数がわかります。『キャストパズル』『知恵の輪』も同様です。
個数に関わらないパズルは、おそらく『迷路』くらいではないでしょうか。

ただし、線を描かないところに「×」などの記号を書き込めば、全体としての個数は確定します。しかし、実際のところ確認のための記号なので、省略できることを考えると、やはり個数不明とみなしたほうが自然でしょう。

さらに厳密に言えば、ルールと問題の表出された情報から、書き込む線の個数が確定できない、ということです。
すべてのマスと盤面の外側に、線の通る数を表出すれば、すべての数字を足して2で割ると、書き込む線の個数がわかります。
リンク先の例題の場合だと、
 0001111   = 4
00221131  =10
02211310  =10  太線が盤面内
22131310  =13     盤面外は太線でない
30122300  =12
31121220  =12
21112221  =13
33310231  =17
 1010001   = 3
         合計 94 2で割って47本が書き込む線

ニコリの初期の時代には、世界文化社からパズル雑誌『パズラー』があり、「オモロパズルのできるまで」と同じように「パズル激作塾」というコーナーがありました。
よくよく考えると、『スリザーリンク』のように描き込む記号の個数が不明というパズルは、ほとんど登場していなかったと思います。

例をあげると「ビルディングパズル」「ウォールロジック」「ABCプレース」「バトルシップ」「何種類」「しろまるくろまる」は、描き込む記号の個数が確定しています。
ボンバーパズル」は描き込む記号の個数が不明ですが、あらかじめ書き込む個数を示す形式も出題されます。

一方、ニコリでは『スリザーリンク』以降、描き込む記号の個数不明パズルがどんどん登場しました。ニコリの別冊から数冊に掲載された「ペンシルパズル」を分類してみます。

『ザ・ペンシルパズル2020』
描き込む記号の個数不明
ペンシルズ (厳密に言えば、軸・芯・線の個数が不明で、全体では確定)
美術館
ヤジリン(厳密に言えば、黒マス・線の個数が不明で、全体では確定)
へやわけ
ましゅ
スリザーリンク
ミッドループ
描き込む記号の個数確定
ナンバーリンク
カックロ
ダブルチョコ(厳密に言えば、書き込む線の個数は不明

『ニコリのペンパ2019』(※上記で重複したパズルは除く)
描き込む記号の個数不明
ぬりめいず
ぬりみさき
描き込む記号の個数確定
ぬりかべ
四角に切れ(厳密に言えば、書き込む線の個数は不明
波及効果
ストストーン

『ニコリのペンパ2018』(※上記で重複したパズルは除く)
描き込む記号の個数不明
シャカシャカ
月か太陽
描き込む記号の個数確定
フィルオミノ

『ニコリのペンパ2017』(※上記で重複したパズルは除く)
描き込む記号の個数不明
ヘルゴルフ
ウソワン
描き込む記号の個数確定
ドッスンフワリ

『ニコリのペンパ2016』(※上記で重複したパズルは除く)
描き込む記号の個数不明
流れるループ

『ニコリのペンパ2015』(※上記で重複したパズルは除く)
描き込む記号の個数確定
のりのり
縦横さん


『スリザーリンク』のような「ループ系」のパズル以外でも、個数不明になるものが結構あります。

誰が「プレイヤー」なのか?

「ペンシルパズル」が「パズルゲーム」「紙ペンゲーム」である、とは言い切れません。しかし、「パズル」全体からみると特徴的な進化をしていると、この際だから言い切っちゃいましょう。

では締めに入ろうと思うのですが……今回のノートを書くために、あれこれ考えていたらまた新たな命題が生まれました。
仮に「ペンシルパズル」を「ゲーム」としましょう。この場合、そのゲームの「プレイヤー」は誰なのでしょうか?
パズル製作・作成の話題では、「解き手」「作り手」というワード(用語)を使うのですが、果たしてどちらも「プレイヤー」ということなのでしょうか?では、パズルの「ルール」に対応している「プレイヤー」とは誰なのでしょうか?

ということで、また来年もよろしく!

…あの、来年のAdventerということでなく、年明けにもノートにアップしようと努力しますので、どうかひとつ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?