せまゲー生半可集(10)~Sid Sacksonの『Interplay』は不偏ゲームなのか?
前回の記事はこちら。
今回は、去年12月の「アブストラクトゲーム Advent Calendar 2022」で書いた記事からの続きみたいな内容となります。
ということで前半は、去年の記事をところどころなぞっていきます。
Sid Sacksonの『Interplay』
Sid Sackson(シド・サクソン)さんの『Interplay(インタープレイ)』は、以下の記事で紹介しました。
Boardgamegeekの項目はこちら。
大雑把なルールは、
・手番のプレイヤーは、盤面にある1個のコマを動かす。動いたマスには別のピンを刺し、ゲーム中二度と同じマスに移動できない。
・移動した後、隣接したマスにあるピンの数だけ、得点がはいる。
・途中、コマが動けなくなるか、用意したピンをすべて刺しきったら、ゲーム終了。
・合計得点の多いプレイヤーの勝利。
です。
『インタープレイ』は2人用ゲームで、どちらのプレイヤーもコマの動かし方は同じルールです。
『インタープレイ』を紹介した記事で、不偏ゲームとはなにかを書きました。
引用すると、
なので、『インタープレイ』は不偏ゲームである、と思われます。
『Interplay』は不偏ゲームではない?
ところがですね。
Boardgamegeekには「"Impartial" 2-player Combinatorial games(公平な2人組合せゲーム)」という、リストがあります。
不偏ゲームを集めたリストでして、そこに『Interplay(インタープレイ)』も入って然るべきと思われますが、除外されています。
リストを立てたHerbさんが、これは不偏ゲームではないと判断した次第です。
その理由について、ちゃんと述べているのが素晴らしい。
いわゆる、負けが決定するような動きをつくることができるから、公平ではない、つまり不偏ゲームではない、ということです。
と、これまた『インタープレイ』を紹介した記事で書きまして、再度引用しました。
実際どうなのか?
前の記事では自分なりの意見を先延ばしにしておりました。
2ヶ月ほど経過しましたので、そろそろ自分の意見を表明しようかと思います。
先に、結論から書きます。
正直よくわかりませんが、多分違う。
でも、せまゲーでいいんじゃない?
不偏ゲームの終了条件と勝利条件
Wikipediaに「不偏ゲーム」の項があります。
後半に、不偏ゲームとはなにか、の条件5つが書かれています。
上の引用で「terminal position(ターミナル・ポジション)」という、意味不明と思われる言葉があります。
これも、同項目で説明されています。
例えば、ニム(三山くずし)のように、すべての山の石(コマ)をすべて取りきってしまいこれ以上取れない、全く石(コマ)がない状態が、不可能な局面(ターミナル・ポジション)になります。
しかし、例外と思えるゲームもあります。
たとえば「せまゲー生半可集」でも紹介したゲームで『Notakto(ノタクト)』や『Traffic Lights(トラフィック・ライツ)』などは、まだコマを置いてアクションが出来る状態なのに、3目並ぶとゲームが終了となります。
この場合は、3目並ぶ状態がターミナル・ポジションだ、と決めることで不偏ゲームとしてみなしています。
ところで、ゲームが終了する条件は、5つの条件の2番目、
(2)1人のプレイヤーがterminal positionに達したとき、勝者が決まる。
にあたり、不偏ゲームの終了条件となります。
で、勝利条件なのですが、
特に明記されていません。
終了したら、勝者が決まる。
それだけです。
例えば、ニム(三山くずし)だと、終了条件に達した(すべての山を取り尽くした)プレイヤーが勝者になる、あるいは、逆(ミゼールのルールの場合)に敗者となります。
数学の専門分野の1つ、組合せゲーム理論で不偏ゲームを研究では、ニム値(あるいは、グランディ数など呼び名がいくつかある)を定義しています。
大雑把にニム値はどんな数かというと、
・ニム値が0だとターミナル・ポジションの状態。
・ニム値が0でないならばターミナル・ポジションの状態ではない。
です。
数学という学問としては、とにかく一般化かつ簡素化な結果を求めていきます。
一番シンプルな勝利条件なにか。
ニムのように、ほぼ終了条件で決まる条件です。
『Interplay』の終了条件と勝利条件
本題の、『Interplay(インタープレイ)』です。
それぞれの条件を書き出してみると、
終了条件:以下の2つのどちらかを満たす。
(1)手番でコマの移動ができなくなる(ターミナル・ポジション)。
(2)規定回数の移動を行う(それぞれ18手のアクションを行う)。
勝利条件:以下の条件で決める。
(3)ゲーム中のアクションで得たポイントの合計が多いほうが勝者。
となります。
(1)は、不偏ゲームの条件に沿っています。
(2)ですが、これを『Notact(ノタクト)』などの3目並べのように、ターミナル・ポジションとみなすのかどうか、が問題となります。
(3)は、終了条件からはおおきく離れた、独立した勝利条件です。
独立している点は、大きな問題ではありませんが、同点の場合は引き分けとなるのが、問題です。
甘くみるならば、(3)の引き分けになる場合を、どちらかを勝者にするように変更するならば、ぎりぎり不偏ゲーム(あるいは、擬不偏ゲーム(不偏ゲームもどき))としてみていいのかなあ、と思います。
締め
ということで、不偏ゲームもどきかも知れないのですが、せまゲーでいいんじゃないの、な『Interplay(インタープレイ)』について、あれこれ考えてみました。
なかなか、お固い内容になってしまいました。
次回以降ですが、固くて長くなるかも、と前フリしておきます。
では。
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