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ボードゲーム集「The Games on Half a Checkerboard Series」経由で、作者Richard Hutnikさんの変態ぶりをいろいろ書いてみる

前回のnoteでは、小説『方形の円』について書きました。

『Tix』というボードゲームから連想して、書籍を紹介したわけですが、実はさらにこの小説から、あるボードゲーム集を連想しました。

それが今回紹介の「The Games on Half a Checkerboard Series」です。

「The Games on Half a Checkerboard Series」とは

チェスやオセロでは、持ち運びや携帯に便利な、2つに折り畳める盤面があります。
つまり、8×4の盤面です。

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この盤面をコンポーネントとして遊ぶボードゲーム集が「The Games on Half a Checkerboard Series」(以下、HCS)です。

で、何個のルールがあるのかというと、


盤面のマスの数と同じ、32種類。

しかも、これ、たった1人のゲームデザイナーRichard Hutnik(リーチャード・ハトニック)さんのやらかした事です。

そして、単なる趣味のデザイナーではない。
HCSの第1作目にあたる『J: The Misere Connection Game』は、アメリカのゲーム専門雑誌『Games Magazine』の2012年8月号に掲載されています。
他にも『2-5 Skidoo』は、同誌の2012年10月号に掲載されています。

おそらくプロのゲームデザイナーではないと思われますが、かといって1アマチュアでは片付けられないのが、Hutnikさんです。

HCSのゲームは、おおよそが2人用アブストラクトゲームですが、3人専用のゲームや、サイコロを使ったゲームもあります。
なかには、8×4を拡大したの盤面でも十分プレイできるであろうゲームもあります。

そもそも、Hutnikさんは、なんでこんなことを思いついたんだ?


Game System『Stonehenge』とは

Hutnikさんは、とあるGame Systemで遊ぶことのできるゲームルールを考えるために、その代用となるコンポーネントに「8×4の盤面」を使っていたのがきっかけのようです。

Hutnikさんが取り組んだGame Systemのコンポーネントは、2007年に発売されています。
HCSに収録したゲームは、2011年〜2012年に発表していますので、5年間くらいストックしていたものもあると思われます。

さて、そのGame Systemは何かというと、

『Stonehenge(ストーンヘンジ)』。

あの巨石群は、ボードゲームコンポーネントだ!

として、どんなゲームだったのか妄想全開のゲーム集です。
製品には5つのゲームルール収録されていますが、面々がすごい。
引用すると、

◆Bruno Faidutti(ブルーノ・フェデユッティ)さんが作った、
 多数決選挙ゲーム「上位ドルイド」。
◆Richard Garfield(リチャード・ガーフィールド)さんが作った、
 ブラフ(嘘つき)ゲーム「ストーンヘンジの魔法」
◆James Ernest (ジェームス・アーネスト)さんが作った、
 入札ゲーム「オークション・ブロック」
◆ Mike Selinker(マイク・セリンカー)さんが作った、
 競争ゲーム「ストーンヘンジの戦車レース」
◆Richard Borg(リチャード・ボーグ)さんが作った、
 戦闘ゲーム「アーサー王のゴーストナイト」

と、なかなか豪華なラインナップなのです。

それぞれのデザイナーについてどれほどすごいのかは、各自で調べてみてください。

日本でも、ホビージャパン社が輸入して、翻訳ルール付きで販売していました(……って、まだ売っているのかも)。

ところで、『Stonehenge』はこのようなコンポーネントです。

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なかなかにストーンでヘンジしていますね。


『Stonehenge』とHutnikさん

ところで、このコンポーネントでHutnikさんはゲームのルールを考えたわけですが、そもそも関わっているの?

これが、どうにもこうにも自作自演の薫りがするのですよ。

Boardgamegeekでの『Stonehenge』のフォーラムのスレッドを見ると、かなりの件数をHutnikさんのハンドルネームdocreasonで立てているのです。

そして、なぜか6本目の追加のゲームルール『Afro-Celt Mancala System』があるのです。

箱のクレジットを見ると、5人のデザイナーの表記しかありません。

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ちなみに、左上の黄色のものはシールを貼ったものです。
書かれているのは、「5つのゲームが収録!プラス追加のゲームはこのURLで」みたいなことです。

正直、胡散臭いですが、まあいいや。

そして、あの壮大とも言えるコンポーネントに、なぜ「8×4の盤面」が関わってくるのか?
その理由とも言えるのが、Hutnikさんが作った『Stonehenge』を使ったゲームルール『Crossing Stonehenge』から伺えます。

このゲーム、どこで遊んでいるのかというと、Boardgamegeekから引用した写真にあります。

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????
何なのかよくわからないでしょうが、つまり、真っ直ぐにしてみる

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外周しか使ってないやーん。
石使えやー。

ということです。
正直、胡散臭いですが、Hutnikさん面白すぎます。


世界最悪のボードゲーム『W.W.B』

Hutnikさんのつくったボードゲームは、Boardgamegeekに100以上登録しています。
HCSや『Stonehenge』のバリアントルール(これも10前後ある)も、登録しています。

なかでも、Hutnikさんの代表作……というか大問題作があります。
それが『W.W.B』です。

2011年に作られているので、HCSと同時期です。
何がすごいって、このゲームの評価。
Boardgamegeekの評価は、10点が最高点で最低点が1点となるのだが、『W.W.B』は

1.4点。

とてつもなく低いわけだが、Hutnikさんは

是非是非評価は1点で

と自ら宣言している。
評価の内訳ですが、投票数は41。
うち、10点1名・6点1名・5点1名・残りが1点。

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これ、どんなゲームなのかと言うと、2人専用双六です。

コンポーネントは、
・プレイヤーの駒1個づつの2個
・カード102枚(スタート・ゴール・数字の1〜100が書かれている)
・サイコロ1個(ただし、1面だけに5がある)

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サイコロ。

カードをすべて表にして並べます(全く適当で構いません)。
スタートカードに、2人のプレイヤーの駒を置きます。
最初にプレイするひとを決めます(決め方もルールにあるが、まあ好きにしてください)。

プレイ手番ですることですが、サイコロを振ります。
・「5」が出なかったら、何もありません。
・「5」が出たら、カードの数字の順番に5前進し、(全く適当に並べているので探してください)さらにもう1度サイコロを振って「5」が出ないと、スタートカードに戻ります(「5」が出れば、そのカードの位置に留まります)。
これで、手番終了です。

さらに重要なことは、数字カードには1人しか置くことができません。
もし、同じ数字カードに2人がいることになったら、2人ともスタートカードに戻ります。

ゲームの勝敗は、1〜100まで進み、さらにゴールドカードに止まると勝利です。

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ちなみに、Hutnikさんは

テストプレイなんてしてないよ

とルールに記載しています。

…………えー、以上です。
このゲームがただものでないことが、おわかりになられたのではないかとおもいます(棒読みにもなるよ、そりゃあ)。
フォーラムでは50本のスレッドが立っているので、好きな人はそりゃ好きでしょう(遊ぶか遊ばないかは別にして)。

さらに、GeekListも注目で、
The Worst Game Ever!(史上最悪のゲーム!)」
Games you never want to see on the table(テーブルの上で見たくないゲーム)」
などなど最悪ボードゲームリストに登録されています。
その中でも、登録数トップの最悪リスト
Only you can make this the WORST GEEKLIST EVER!(あなただけがこれを史上最悪のギークリストにすることができます!)」
にももちろん登録されていますが、リストを立てたのがHutnikさん本人だったりします。

『W.W.B』というタイトルは、何かの略だと思われますが、Hutnikさんからのコメントは特にありません。

おそらく「World's Worst Boardgame(世界最悪のボードゲーム)」は、標準的な候補だと思います。

もしくは「Who Wants Bacon?(誰かベーコン欲しい?)」。

言い回しで「bring home the bacon」があります。
この場合だとbaconは「お金」や「成功」「救い」などの意味(というか俗意)になります。


(そんな意図はないのだが)『W.W.B』の意義

ところで、『W.W.B』のコンポーネントとルールから察すると思いますが、5の倍数以外のカード、つまり、

80枚のカードは、通過するだけの存在
結局、サイコロを「5」でなく「1」にすれば、
通過するカードなんていらないから、
80枚のカードは無駄

です。
恐るべきことですが、パレートの法則(80:20の法則)に沿ってつくられたボードゲームなのです。
スタージョンの黙示(全てのものの90%はクズ)的に書くと、

ボードゲームの80%は無駄で出来ている

です。
これは、なかなかに的を射ていると思います。
チェスやチェッカー(ドラフツ)は、ゲームが終了したときに盤上に残っている駒は、双方合わせておおよそ6個前後、つまり総数の2割です。
トレーディングカードゲームだと、全種類の2割があれば、十分勝利できるデッキを組むことができるのでは?

『W.W.B』は、非常に教訓的な存在に思えてきます。
ただし、1番重要なことは、

やっぱり、世界最低のボードゲームである

ということです。


なお、『W.W.B』がゲーム終了するまでのプレイ時間を確率で求めると、
約810000000000000000000000000000000000年(810澗年)らしいです。

(注:ただし、1手番にどれくらいの時間を書けるかは不明です。
大抵の場合、1手番1秒が目安でしょうが、1時間だろうが、1週間だろうが、1年だろうが、世界最低のボードゲームなのでどうでもいいでしょう)


いいかげんに終わり

ということで、結局はRichard Hutnikさんの紹介になりました。
こんな変態的情報をたくさん書くとは思いませんでしたが、なんかスッキリしました


では。

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