せまゲー生半可集(22)&超動くマンカラ(15)~ Progressive Mancala
前回の記事はこちら。
ここ数回、アインシュタインタイルばかりで、せまゲーおろそか中でした。
ほぼ2ヶ月ぶりに戻ってまいりました。
しかも、今回はマンカラを取り上げるので、昨年末で一区切り付いた超動くマンカラとの合体となります。
考案者に足を向けて寝てはならない
今回取り上げるのは『Progressive Mancala(プログレッシブ・マンカラ)』。
考案者はRalf Gering(ラルフ・ゲーリング)さんで、2004年に考案。
BoardgamegeekにはRalfさんのプロフィール情報はありません。
探してみると、マンカラの情報を集めたポータル「Mancala World」にありました。
なんと、このポータルでのRalfさんのIDがMr.Mancala(ミスター・マンカラ)。
不遜に思えますが、これはこれでその通りなのです。
だって、「Mancala World」を立ち上げた張本人なのですから。
現時点、マンカラにおける第一オタクたる人物がRalfさんです。
Ralfさんは、マンカラに関する膨大な記事を産み出し、新たなマンカラも考案しています。
その1つが『プログレッシブ・マンカラ』で、「Mancala World」にも項目があります。
マンカラ盤面のマスの数え方って独特?
『Progressive Mancala(プログレッシブ・マンカラ)』を紹介している記事では、1×11の盤面を使うと紹介されています。
たとえば、BGGのGeeklist「Games played on a 1×n grid (one-dimensional grids)」では、”A one dimensionl mancala version (1x11)”と書かれています。
ところがですね、盤面を見ると
なんか盤面の並んだ穴の下にもう1個穴があるんですが。
この穴は、例えば『Kalah(カラハ)』の盤面だと2×6に並んだ穴の両脇に1つずつ大きな穴があります。
この穴は、プレイヤーの得点集計に使われます。
その一方、ゲームの進行中に盤面の穴と同じように石(コマ)を蒔かれるのですが、別扱いをして数えないようです。
例えば『Oware(オワリ)』だと、ゲームの進行中そこに石を蒔くことはないので、完全に盤面の穴と異なり理解しやすいです。
ケーキは別腹みたいな気分ですが、とにかく盤面にはないのです。
いささかモヤモヤしますが、1次元盤面には変わらないので『プログレッシブ・マンカラ』は立派なせまゲーです。
『Progressive Mancala』の遊び方
では、遊び方をざっと書いてみます。
2人で遊びます。
盤面の他に、石(コマ)を55個用意します。
ゲーム開始時は、盤面の穴11個にそれぞれ石を5個配置します。
盤面外にあるもう1個の穴(太線で強調)は、ゴールとよびます。
先手後手と交互に手番がまわります。
手番のプレイヤーは、盤面の穴から1つを選び、すべての石を1個づつ蒔いていく、いわゆるマンカラをします。
通常の伝統的なマンカラは、双方のプレイヤーがマンカラで石を蒔いていく方向は一緒ですが、『Progressive Mancala(プログレッシブ・マンカラ)』は異なります。
先手は、k→j→i→……→b→a→ゴール→k→j→i→……の向き(黄色の矢印)に蒔きます。
後手は、a→b→c→……→j→k→ゴール→a→b→c→……の向き(水色の矢印)に蒔きます。
互いに異なる向きとなるのは『プログレッシブ・マンカラ』の特徴でもあります。
プレイヤーの手番のマンカラですが、ラップ方式となります。
これは、最後の石を蒔き終えた穴が空ではなく1個以上石がある場合は、最後に蒔いた石とその穴にある石をすべて取って、またマンカラしていきます(さらに、最後の石を蒔き終えた穴が空でなければ、またマンカラです)。
最後に石を蒔き終えた穴(a〜k)が空だった場合は、そこで手番が終了します。
加えて、次の相手の手番はボーナスとして手番が1回分増えます(つまり、相手が有利になるのでペナルティと考えられます)。
手番終了によってプレイヤー自身にボーナスが得られるマンカラはいくつかありますが、相手にボーナスを与えるルールのマンカラは、どうやら『プログレッシブ・マンカラ』だけのようです。
最後に石を蒔き終えたのがゴールだった場合は、プレイヤーはその石とゴールにある石を得点として獲得します。
ゲームで使用する石は55個あるので、過半数の28個以上石を合計得点した時点で、そのプレイヤーの勝利となります。
……以上がルールとなりますが、書き出してみてもピンとこないので、プレイ例をみてみましょう。
『Progressive Mancala』のプレイ例
「Mancala World」の『Progressive Mancala(プログレッシブ・マンカラ)』には、実際に遊んだ棋譜が2つ書かれています(Game1、Game2)。
今回は、Game2の棋譜を図示しつつゲームを鑑賞してみます。
【ゲーム開始】
【先手1手目:k 1点獲得(1vs0)】
kから石を5個マンカラをするとfで終わり、fから開始して6個マンカラをするとゴールで終了するので、1点を獲得します。
Game1でも、先手はkから始めています。
その他の手はどうかといえば、
・eから始めると1点を獲得します。
kと比べると、石のない穴が1つ少ないので、後手にボーナスの重圧を与えることを鑑みると、弱いかもしれません。
・その他の穴は、例えばhから始めると、h→c→i→cとなり、相手にボーナスを与えてしまうので、不利です。
【後手1手目:c 2点獲得(1vs2)】
c→i→d→ゴールで2点獲得。
Game1でも後手は同じ手でした。
では、c以外の手はどうなのか……これは後ほど書いてみます。
【先手2手目:h 1点獲得(2vs2)】
h→GOALで1点獲得。
次の後手は少し長くなりますが、全部追っていきます。
【後手2手目:k 4点獲得(2vs6)】
k→a→j→g→f→GOALで4点獲得。
……というか、ラップ方式のマンカラあるあるかも知れませんが、
こんな長い手わかるか!?
と、ツッコみたくなります。
まあ、これよりももっと長くなる手は平気であるんですが。
【先手3手目:d 1点獲得(3vs6)】
【後手3手目:j 1点獲得(3vs7)】
まとめて。
これくらいがわかりやすいですね。
次の先手ですが、思いっきりミスをします。
【先手4手目:g 相手にボーナス手番(3vs7)】
本対戦はオンラインで行われていたので、どうやら違った穴を指定したミスでは?と思われます。
おそらく、隣のhからが狙いの一手と推測します。
その場合(図示は割愛しますが)、h→e→d→b→GOALで3点獲得していました。
【後手4手目:c- 5点獲得(3vs12)】
c→i→b→c→e→h→c→e→g→GOALで5点獲得
……って、わかるかーーーーーーーっwww!!!
途中で石13個や石15個の盤面1周以上するマンカラもあって、わけがわかりません。
そして、まだ後手には手番ボーナスがあります。
【後手4手目ボーナス:a 3点獲得(3vs15)】
(過程を省略して手番終了図)
a→h→j→d→k→j→GOALで3点獲得。
がっつりと後手が引き離しています。
【先手5手目:g 相手にボーナス手番(3vs15)】
またもや。
i→b→g→bで空の穴に。
GOALに残っている石はこのまま持ち越しになります。
その後の手番でGOALで終了すれば、残っている石を獲得できます。
【後手5手目:f- 相手にボーナス手番(3vs15)】
(過程を省略して手番終了図)
f→e→k→c→f→j→bで空の穴に。
GOALには石が5個あり、非常に美味しい状況。
後手はボーナス手番があるので十分フォローできます。
【後手5手目ボーナス:e 6点獲得(3vs21)】
(過程を省略して手番終了図)
e→g→GOALでウマウマの6点獲得。
他の手としては、d→j→GOALもあります。
大きく引き離された先手は、ボーナス手番も活かして大逆転を狙わないと。
【先手6手目:i- 2点獲得(5vs21)】
(過程を省略して手番終了図)
i→h→j→g→e→c→GOALで2点獲得。
先手のボーナス手番でどうなるのか。
【先手6手目ボーナス:a 相手にボーナス手番(5vs21)】
(過程を省略して手番終了図)
a→d→g→e→c→a→k→d→b→h→c→a→k→i→cで空の穴に。
GOALに石5個をごっそり残しました。
あーあ。
他の手を検討してみましたが、全てGOALで終了できず万事休すでございます(ちなみに、一番GOALに石が残る手はa)。
このアシストで、後手はGOALにあと石を2個増やして終了すれば勝利です。
【後手6手目:f 7点獲得(5vs28) 後手の勝利】
f→b→d→g→GOALでぴったり合計28点でFINISH。
有終の美をノーカットでお届けしました。
締めとおまけ
ということで『Progressive Mancala(プログレッシブ・マンカラ)』を紹介しました。
おまけということで、おあずけしていた後手1手目の補足です。
後手1手目はcでしたが、他の手はどうなのか。
(先手1手目はkに対し、)すべての手を検討して簡単に概要を書くと、
a:相手にボーナス手番 GOALに石3個残し
b:4点獲得
c:(紹介済みなので省略)
d:相手にボーナス手番 GOALに石5個残し
e:相手にボーナス手番 GOALに石はなし
f:(空なので省略)
g:3点獲得
h:5点獲得
i:相手にボーナス手番 GOALに石7個残し
j:5点獲得
k:(空なので省略)
ということで、h、jが一番得点が獲得できて、最も悪手と思われるのがiでしょう。
次回ですが、『プログレッシブ・マンカラ』を考案する元になったゲームを紹介しつつ、その要素を別のゲームに取り入れてみたいと思います。
では。