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トリテとレンク(1) 〜トリテと連句とレガシーシステム

レガシーシステムとは

2011年、ボードゲーム界に異端種が現れました。

『Risk Legacy』

1959年に発売されたボードゲーム『リスク(Risk)』をベースにして制作されています。

Risk Legacyにある「Legacy(レガシー)」。
これはなんなのか。
Boardagmegeekにある「Legacy」の説明を引用します。

【引用】
Legacy games are board games whose rules and components change over time based on the outcome of each game played and the choices made by the player(s). They will oftentimes make physical changes to the board game by, for example: marking the cards, placing stickers, destroying components, opening sealed packages, and so on.
The changes made in a Legacy game are designed to be permanent. A Legacy game's full experience is played out in a campaign that can only be played once. To replay the full experience again, the player(s) would need to purchase another copy of the game or, if available, a "recharge pack".
<翻訳>
レガシーゲームはボードゲームであり、プレイした各ゲームの結果とプレーヤーの選択に基づいて、ルールとコンポーネントが時間の経過とともに変化します。例えば、カードに印を付ける、ステッカーを貼る、コンポーネントを破壊する、密封されたパッケージを開けるなど、ボードゲームに物理的な変更を加えます。
レガシーゲームで行われた変更は永続的になるように設計されています。レガシーゲームの完全な体験は、一度しかプレイできないキャンペーンで実行されます。完全なゲームの体験を再度プレイするには、プレーヤーはゲームの別のコピー、または利用可能な場合は「リチャージパック」を購入する必要があります。

ポイントを3点あげると、

1)ゲームごとに、ルールやコンポーネントなどが変化する。
2)前回のゲームの結果が、次回のゲームに反映される。
3)前回以前のゲームを再度プレイすることはない。

ぶっちゃけ要約すると、

繰り返し遊ぶために
繰り返し遊べなくする

です。

2015年に発表された『Pandemic Legacy(パンデミックレガシー)』の爆発的ヒットにより、レガシーシステムを組み込んだゲームが続々販売(以降の5年間で60タイトル以上)されるようになります。


レガシーシステムのルーツ?

レガシーシステムのもととなったゲームを考えてみます。
直近のものをあげると、次の3つです。

i)シミュレーションゲーム(ウォーゲーム)
ii)テーブルトークRPG
iii)トレーディングカードゲーム

『Risk』自体、もとネタがシミュレーションゲームです。

i)シミュレーションにも、複数のゲームをシリーズして連続して遊ぶ「キャンペーンシナリオ」などあります。
その一方、個々のゲームは独立して遊べるように構成しています。
そこにレガシー要素を盛り込んだわけです。

ii)テーブルトークRPGにも、「キャンペーンシナリオ」があります。
そこで使用するプレイヤーごとのキャラクターの情報を引き継ぐことで、

2)前回のゲームの結果が、次回のゲームに反映される。
3)前回以前のゲームを再度プレイすることはない。

のレガシー要素が含まれています。

iii)トレーディングカードゲームは、デッキ構築を踏まえると、

1)ゲームごとに、ルールやコンポーネントなどが変化する。

のレガシー要素があります(まあ、ゲームごとに変えなければならないわけではないですが)。

もちろん、それぞれにレガシー的な要素を更に追加して、完全なレガシーシステムのゲームに仕上げることもできるでしょう。

とはいえ、これらのゲームはそんなに歴史的に深いとは言えません(100年にも満たないので)。


連句はレガシー?

ところが、とんでもない伏兵がいました。
それが「連句」なのです。

連句の前身の呼び名である「俳諧連歌」は、400年以上の歴史があります。
そして、レガシーシステムの要素が含まれています。

前回の記事で、連句について簡単な紹介をしました。

「5・7・5」の上の句と「7・7」の下の句を交互によんで、1つの「5・7・5・7・7」の歌になるようにしていきます。

上の句と下の句、それぞれが1つのゲームとして見ます。
これを複数回繰り返して(例えば、歌仙だとそれぞれ18回繰り返す)1つの「キャンペーン」を完成させます。

では、どうしてレガシーシステムなのかと言うと、

以前の歌と同じことをよんではいけない
(よむことを避ける)

というおおよその決まり事があるのです。
お笑いでいうと天丼(同じネタを繰り返す)が使えません。
特に、「打越」と呼ばれるものがあります。

(1)「5・7・5」
          \
           「7・7」(2)
          /
(3)「5・7・5」

(1)+(2)の組み合わせた歌「5・7・5・7・7」のあとに、(3)の「5・7・5」をよむと(3)+(2)の組み合わせた歌「5・7・5・7・7」になります。
このとき、
・(1)+(2)の組み合わせた歌「5・7・5・7・7」
・(3)+(2)の組み合わせた歌「5・7・5・7・7」

が同じような内容とか事柄になると、打越なのでいけませんねえ、となるのです。
ただし、内容が似通っていても見る角度が違っていたりする(何らかの変化がみられる)と、いいね、となることもあります。

連句のコンポーネントは「言葉」です。
同じカテゴリ(旅行や神仏など)の単語は、できるだけ前回や前々回で使われたら避けるようにしています。

その一方、季節や恋に関わる内容は何句か続けなくてはならない、逆のルールもあります。

厳密ではないのですが、連句を広義の意味でレガシーシステムのゲームとみても良いのではないか、と考えます。


トリテもレガシー?

そうなると、「トリックテイキングゲーム(以下、トリテと略す)」はどうなのか、についても書かなくてはなりません。

なぜ書くのかと言うと、

この記事のタイトルがそうなっている

からですね。
連句と同じように、1つの「トリック」を1つのゲームとしてみれば、複数回のゲームを組み合わせた「キャンペーン」となります。

スタンダードなトリテについて、レガシーシステムの要素それぞれ確認すると、

1)ゲームごとに、ルールやコンポーネントなどが変化する。
…1トリックが終わると、手札は1枚づつ減っているので、変化しています。

2)前回のゲームの結果が、次回のゲームに反映される。
…1トリックで勝利したプレイヤーが、次のトリックのリード権を取るので、反映されています。

3)前回以前のゲームを再度プレイすることはない。
…トリックで使用したカードは再利用しません。

とまあ、

トリテはレガシーシステム

と乱暴ですが言ってしまえるのです。


レガシーシステムのタイプ

とはいうものの、

[1]現代ボードゲームのレガシーシステム
[2]連句のレガシーシステム
[3]トリテのレガシーシステム

は一緒である、と考えるのは大雑把すぎますね。

狭義の意味での「レガシーシステム」は[1]のことである、とします。
これを振動型レガシーシステムと仮に呼びます。

そうしたのは、残り2つの特徴を表すためで、
[2]を増加型レガシーシステム
[3]を減少型レガシーシステム
と仮に呼びます。

[2]の連句は、前回以前の結果がずっと蓄積していくのでストレージ(貯蓄型)レガシーと呼んでもいいかもしれません。

前回の『トリテとレンク(0)』で、トリテと連句の共通点をあげましたが、さらに「レガシーシステム」という共通点もありそうだなと、仮説を立ててみました。

次回について

次回ですが、トリテをはなれまして、連句中心に書きます。
次々回は、逆にトリテ中心と、交互に話題を出してみます。

では。

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