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超動くマンカラ(1)~マンカラ・カラハの考案者

日本にマンカラが普及中

日本でのマンカラ普及は、ここ10年間で徐々に浸透しています。
大きく2つの出来事がありました。

1つは日本レクリエーション協会が2010年8月に、マンカラの用具の提供も含めた普及活動をはじめたこと。

もう1つは、Nintendo SWITCHの『世界のアソビ大全51』に、マンカラが収録されたこと。

単にマンカラが入っているだけ、ではなくて2020年7月に任天堂がアップした人気ランキングの記事があります。

◎多く遊ばれているゲームTOP3 (全世界累計プレイ回数TOP3)
第2位

◎(遊んだ)プレイヤーが多いゲームTOP3
第2位

◎世界の人とあそぶ(オンライン)で多く遊ばれているゲームTOP3
第2位

……って、2位ばかりじゃないか、と言いたいのですが51種類ある中での2位なので、馬鹿にはできません。

マンカラ・カラハ

さて、マンカラですが、実はそのような名前のボードゲームはありません
どちらかというと、ジャンル名とみたほうがよいと思います。

日本レクレーション協会が、幻冬舎より販売しているのが『マンカラ・カラハ』。

遊び方のルールは4つ書かれていますが、そのうちの1つが「カラハ(Kalah)」です。
さらにいえば、『世界のアソビ大全51』のマンカラも、ルールはカラハです。
つまり、細かいことを言えば、日本に普及しているマンカラはカラハだといっても言い過ぎではないです。

では、このカラハ。
いつ頃からどこで遊ばれているのか、知っていますでしょうか。
日本レクレーション協会は、その点についての説明をしていません。

Wikipediaの「マンカラ」には、「カラハ(Kalah)」の項目があります。
冒頭では、

【引用】
ウィキペディア英語版でカラハとして紹介されているゲームである。

とあります。
そして「カラハ」をクリックすると、英語版Wikipediaの「Kalah」に飛びます。

「カラハ(Kalah)」は、

1940年に、
アメリカの実業家William Julias Champion Jr.
(ウィリアム・ジュリアス・チャンピオン・ジュニア)

が、ルールを考案した

ことがわかります。
2022年現在、カラハ誕生から80年そこそこしか経過していません。

世界最古かつ最新の伝統的ボードゲーム

といってもいいでしょう。
バックギャモン並に古く、ドミノよりも新しい。
とんでもなく振り幅がある、マンカラです。

チャンピオンはやります

カラハの考案者であるチャンピオンさん。
彼の情報も、英語版Wikipediaにしっかり項目があります。

また、『Mancala World』にも、チャンピオンさんの項目があります。

チャンピオンさんがマンカラを知ったのは、1910年頃のようです。
おそらく、歴史研究家であるStewart Culin(スチュワート・コリン)さんが執筆した論文を読んでいたのではないかと思います。

チャンピオンさんはカラハのルールの考案だけでなく、実際に用具を製造して販売し、長年に渡って普及活動をしていました。
1951年11月に「Game Counter」で特許出願しており、1955年10月に登録(番号:US2720362A)されました(1972年に効力が切れています)。

まさに、チャンピオンさんがいなかったら、ここまで日本にマンカラが広まることはなかったかも知れません。
チャンピオンさんいい人ね……で終わりたいところなのですが、裏があります。

チャンピオンはやりすぎます

『Mancala World』には、チャンピオンさんの項目がもう1つあります。
先にお見せしたリンクは、ほぼWikipediaの内容に準じています。
そしてもう1つのリンクは、チャンピオンさんについて批評的見解で書いた記事です。

チャンピオンさんの考案したカラハは、実は東南アジア(マレーシアなど)で遊ばれているマンカラの1つ「コンカク(Congkak)」と非常によく似ています。
コンカクのルールを簡素化したバリアントとも言えるくらいに、よく似ているので、コンカクを模倣しているのではないかと思われます。
この件、チャンピオンさんはノーコメントです(まあ、そうだろうな)。

カラハがどれくらいコンカクとルールが似ているのかは、後述の「CongkakとKalah」で書きます。

また、カラハを多く販売するために宣伝をするのですが、どうも誇張した情報を流してしまうのです。
1920年代に、「ウル王朝のゲーム」と呼ばれるゲーム盤と駒、サイコロなどが発掘されました。

バックギャモンの祖先とも言われていますが、これをチャンピオンは

「7千年前から、カラハ(マンカラ)として遊んでいた」

と謳って宣伝材料にしていました。
うん……まあ……外側のマスの数は(離れているけれども4つと2つあるから)6個ずつあるから、マンカラでも遊べなくはないか……な?

さらに、紀元前500年頃に作られたといわれる「ボードゲームをしているAjax(アヤックス)とAchilles(アキレス)」が描かれた壺があります。

予想通り、これを

「2人の英雄が遊んでいるゲームはマンカラである」

と謳って宣伝材料にしていました。
実際そうなのかどうかは不明です。
しかし、この情報は結構広範囲に多くの人々に伝わってしまいました。
イギリスにある「Oware Society」でも、History(歴史)の記事にこの情報を掲載しています。

とまあ、いろいろお騒がせのチャンピオンさんです。
しかし、ここまで話題を提供している人もなかなかいません。
面白い人です。

「カラハ」をなぜ広めようとしたのか?

チャンピオンさんは、ついつい誇大広告なキャンペーンをしてまで、なぜ「カラハ」を広めようとしてたのでしょう。
チャンピオンさんは、「カラハ」には教育的な面となにか他の利点の面があると考えていました。

後々になって、2000年に入り、アメリカでSTEM教育が生まれました。
STEM教育の名称は、S…Science(科学)T…Technology(技術)E…Engineering(工学)M…Mathematics(数学)の頭文字を並べています。
※ここにA…Art(芸術)を含めたSTEAM教育もあります。
マンカラは特にM(数学)に親和性があるので、取り入れやすいでしょう。
日本レクリエーション協会がマンカラを導入した一因かもしれません。


CongkakとKalah

チャンピオンさんが考案したカラハのもととなったコンカク(Congkak)。
どのくらい似ているのか。

『伝統ゲーム大事典』の78ページに、Kongkak(この本では「チョンカ」とよんでいます)のルールが説明されています。
この本のチョンカとカラハと比較して、異なる点は、

(1)盤面とゲーム開始時の状態:
カラハの盤面は2列×6個の穴の配列で、ゲーム開始時はすべての穴に豆を4個ずつ入れます(計48個)。
チョンカの盤面は2列×7個の穴の配列で、ゲーム開始時はすべての穴に豆を7個ずつ入れます(計98個)。

(2)1手番での豆の豆まきの回数:
カラハは、1手番に1回の豆まきで終了(特別に得られる豆まきの追加は除く)。
チョンカは、豆をまき終わった穴に、1個以上豆があるならば、その穴からまた豆まきを行い、豆のない穴にまき終わるまで続けます。

「カラハ」のようなまき方をシングルラップ、「チョンカ」のようなまき方をマルチプルラップなどと呼んだりします。

の2点です。
「カラハ」の盤面でも、1つの穴を6個くらいにして、「チョンカ」のような豆まきをすれば、より「チョンカ」の雰囲気で遊ぶことができます。

締め

カラハの考案者から、色々なことを書いてみました。

次回は、また別角度のマンカラ話を。

では。


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