『地球の歩き方 ムー』――エロ小説書き、本を読む#8

 ひょんなことから、ガチガチのR18小説を書き始めてしまったアマチュア小説書き。でもだからこそ、本を読まなくちゃ!
 というわけで、中断していた読書感想記事を再開することにしました。相変わらず無節操な行き当たりばったり読書、よろしければどうかお付き合いのほどを。
 過去の読書感想 →https://zsphere.hatenablog.com/


 事実である可能性が著しく低い情報との付き合い方、というのをどうしても意識せざるを得ない昨今です。
 Twitterを眺めていて、デマや誤情報、はたまた最近はプロパガンダまで、その手の眉唾な話が流れてこない日はないくらいの情勢であります。そんな中で、話題になってると聞いて読んでみた本書であります。

 思うんですけどね。そういう情報環境であればこそ、「事実でなければ意味がない」「本当のことしか知りたくない」となるのは危険だよな、と。むしろ、事実である可能性が著しく低い話も、そうと意識した上で受け入れていく度量というか、柔軟性を持った方が安全じゃないかなと感じるわけです。


 先日TwitterのTLで、「歴史学は事実だけを扱う学問」みたいな主張と、いやいやそんなことないだろ、という主張が流れていきました。
 まぁね、そんなはずはないんですよ。たしかに「ジンギスカンは源義経だ」と1ミリの疑いもなく信じてしまう無軌道では歴史学はやれないわけですけど、しかし一方で、事実だけ追っかけていても歴史は理解できないわけですよね。
 「黄金の国ジパング」というデマをコロンブスが信じたからアメリカ新大陸が発見されたわけですよ。
 魔女という迷信があった結果、魔女狩りという大騒動が歴史上の事件として勃発したし、またジャンヌ・ダルク処刑の原因の一つになったりもした。
 日本の平安~鎌倉時代には百王思想、百王説というのがあったそうです。天皇の支配は第100代で終わりを告げるという終末思想の一つで、これのお陰で当時の政治事情に無視できない影響が出ていたと言います。
 どれも今となっては誤情報、デマであったと振り返ることができる話ではあるわけですが、しかしそれが誤った情報だからといって無視しては、実際に起こった歴史上の出来事が理解できなくなる。

 現在、我々が正しい、事実だと思っている情報の中にも、後世「あれは間違いだったね」と振り返られるものが含まれていない保証なんてどこにもないわけで。
(だってそうでしょ。STAP細胞の初報に触れた時点で、あんなグダグダな内実があったと見抜けた人がどれだけいます? 私は最初にSTAP細胞発見のニュースを聞いた時は素朴に感心してましたね)

 明らかなデマを真顔で正しいと思い込んでしまうのは論外ですが、しかし大抵の情報というのは「100%正しい」と「100%間違い」の中間のどこかに散在しているもので。むしろ「100%正しいことしか知りたくない」と意固地に構えているほど、かえって陰謀論的な「真実」にハマりがちなのも世の常でございます。
 むしろ、適度に怪しい話を嗜んで楽しんでおくくらいの方が、きっと良い感じに力が抜けてデマへの免疫になったりするもので。


 ……さて、前置きが長くなりましたが、そういうわけで本書です。
 月刊ムーといえばトンデモ話の総本山、このコラボと表紙を見て思わず身構えてしまう人もいるかなと思いつつ、実際に中身を読んでみるとなかなか気の利いた構成になっていて面白かったですね。
 「ムー」的なトンデモ話と、そうでない基礎的な情報部分とが一目で判別できるように紙面作りで工夫されていて、まるで色眼鏡をかけたり外したり自在にできるように、世界の遺跡や不思議スポットをムー的視点を通したり通さなかったりしながら複層的に見られるようになっています。
 そういう構成のお陰で、ムー的なトンデモ話に不用意に頭から突っ込むのを避けて、むしろそれらを額縁に入った状態で鑑賞できるようになってるんですね。大変良心的な構成だと思いますw

 それに、わりと意図的に、トンデモ度が高くて素人でもツッコミ入れながら笑えるような説を中心に収録してくれてる感もありました。クフ王ピラミッドは実は核処理施設で、大回廊にナイル川の水を流して玄室の放射性物質を冷却してたんじゃね? みたいな「いやいやいやいやw」みたいな話が各所に散らしてあるので。気楽にツッコミ入れながら読むのが楽しい本だと思います。

 まぁね、なんだかんだで我々もみんな、とんでもないホラ話って大好きじゃないですか。「誤情報はよくない、事実だけを尊重するべきだ」っていう堅いタテマエだけに引きずられて、結果としてホラ話が本当は好きな自分の本性がこじれた形で表面化した方がかえって面倒くさいことになるもので。適度にホラ話を安全な形で摂取するのは大事なんじゃないかな、と思うわけです。
 私はホラ話大好きですからね。好きな漫画を聞かれたら必ず『宗像教授伝奇考』を挙げるくらいそういうの大好きなのでw 本書は非常に楽しい読書でありました。

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