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EVとガソリン車 CO2排出量比較

電気自動車EVのCO2排出量がガソリンエンジン車やハイブリッド自動車よりも多いと聞いて調べました。国の会議でも業界団体が発表していますので信憑性もありそうです。

2050年カーボンニュートラルに向けた 課題と取組み ー「グリーン成長戦略」に対する考え方と要望ー 2021年4月28日 一般社団法人 日本自動車工業会(以下、自工会)の発表です。

出典:JAMA資料より/004_04_00.pdf

電気自動車EVとガソリン車のCO2消費

前提として車両の製造からそこそこ走った生涯走行距離までをCO2換算してガソリンエンジンと電気自動車EVで比較しています。

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上の図をどのように説明されたのか分からないため、言葉を補足します。すべてCO2換算してグラフにしています。まずは略語から

赤いTTW はTank to wheelで車両走行時の燃料消費をCO2換算しています。良く燃費が良い、悪いと言いますが生涯に走る走行距離によります。エンジンの性能や走る道の状況、渋滞にも左右されます。電気自動車EVはゼロですのでアピールしています。

薄いオレンジのWTW は燃料製造時にかかるCO2です。well to tankの略です。石油を精製しガソリンをガソリンスタンドまで輸送するためのCO2消費など、車の給油口までにかかるCO2になります。ハイブリッド自動車がガソリンエンジン自動車に比べて小さいのはブレーキ時にエネルギー回収する回生ブレーキやそもそも燃費が良いのでガソリンを使わない文脈です。電気自動車EVが破線なのは太陽電池を用いた再生エネルギーなのか、ミックスされた市井の電力を使うからで大きく変わるからです。

青い車両製造にかかるCO2です。電池の製造に電力を使うことで大量のCO2を排出するため電気自動車EVがガソリンエンジン自動車の倍近くCO2を使っています。もちろん高圧バッテリーの代わりにガソリンエンジン自動車はエンジンブロックなどの材料を鋳型に流し込むため高温にするためCO2消費します。でも高圧バッテリーの製造のCO2消費はボルトワーゲンになると言って叩かれたあのフォルクスワーゲンの発表なのである程度正しいと思います。数値改竄で痛い目に遇っているので。

日本国内でもガソリンエンジン自動車がCO2排出が一概に多いわけではないと広報活動を始め出しています。

上の図を見ると分かるように余り走らないユーザーならガソリンエンジン自動車の方が皆さんのイメージとは逆にCO2を排出します!悪者にしないでというロビー活動です。

自動車業界の立場からの説明

自動車会議所ニュース 2021年3月15日(第931号)より

自動車分野でカーボンニュートラルを目指すということは、「車の使用段階(Tank to Wheel)」が着目され、とにかく電気自動車を進めれば良いという議論になりがちだが、そこだけやれば良いということではない。燃料の「ライフサイクルCO2」(モノが生まれてから消費、廃棄されるまでの一連の流れのなかで排出されるCO2を全て含めたもの)の排出量について、燃料部門においてどうやってカーボンニュートラルにしていくかを考えないといけない。 また、製品のライフサイクル全体でも、原材料取得から製品製造、リサイクル・廃棄に至るまでを見ないといけない。例えば電池の製造に電力を使うことで大量のCO2を排出すれば、自動車の電動化をやっても、ライフサイクル全体でみると、結果的にCO2が増えるということも起こり得るが、そのようなことが生じると電動化を進める意味がなくなってしまうので、エネルギーの脱炭素化とパッケージでやっていく必要がある。 電気自動車(EV)普及には、現時点では、資源/材料から車両、充電インフラなど上流から下流まで様々な課題が存在する。その中で、ボトルネックとなるのが「電池」であると考えている。電池のみでBEV(バッテリーEV)のコストの約3割を占め、電池の性能が走行距離等の車体性能に直結する。電池・素材の大規模投資支援や鉱物の安定的かつ安価な確保も重要になってくる。資源の確保だけでなく、リサイクルの社会システムを構築する…

ここでも言っているのは電池製造時のCO2排出です。LIBの焼結工程には多くの電力が必要なのでここでCO2排出されることを示しています。つまり電気自動車EVに使用する電気を発電するのにも、また電池を含めEVを製造するのにも、CO2を排出すると言っています。

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「EVのCO2排出量がHEVより多い」という内容だった。現状では、EVは「脱炭素」に効果がないと言っていることになる。これは、蓄電池メーカーや研究者、EVメーカーにとって「不都合な真実」である。環境に良いと言われているEVだが、実はCO2削減に効果が無いことだ。

出典:「EVよりハイブリッドのほうがエコ」説を検証する2021.4.2(金)中田 行彦

この記事ではまた、地域によって、国内でもCO2排出は異なり何処を走るのか、そもそも何処で作るかで効率が異なることを説明しています。

CO2排出量は異なる。光発電が進む九州電力では344g/kWhと少なく、突出して多いのは沖縄電力の810g/kWhである。東京電力の場合は457g/kWhとなり、平均に近いこの値を試算に用いた。

先ほどの高圧バッテリー製造にかかる電力消費も書かれていました。

正極/負極材料の活物質の製造工程で摂氏1000度以上の焼成工程があることが原因である。この焼成炉は電気で加熱され、CO2排出量増加の約半分が電気を用いることからきている。

このデータの元ネタ

VWは、量産型EVのID.3を、2019年11月4日から生産している。その前に、EVに関するデータを何回か公開した。EVとディーゼル車を、ゴルフの同じモデルで比較して、車両の製造時にEVはディーゼル車の約2倍のCO2を排出しているという。VWが公表したデータからは、ライフサイクルCO2排出量は、ドイツ国内を走行すれば、EVとディーゼル車は殆ど同じである。また、米国でも同様であり、中国ではディーゼル車のほうがCO2を排出しない。そして、車両製造段階で発生するCO2の43.3%がLIBの製造時に発生するという。

こなれていないプロトタイプの製造なので習熟すればもう少しCO2排出量も削減されると思います。

調べているとこういう記事も

This will lead to 62–91% more greenhouse gas emissions from materials made in China than those in the United States in order to produce LiB cells of the same capacity.
同じ容量のLiBセルを生産するためには、中国製の材料からの温室効果ガス排出量が米国製よりも62~91%多くなることになる。
現状でのLCAの排出データであり、今後大きく変わってきます。バッテリー生産時の技術革新や再エネへの移行によりEVのCO2排出量は今後減っていく見込みです。

技術開発力や電力製造時にかかるCO2の差は大きいようです。

まとめ

CO2排出削減を各社が血眼でやっているというのは、海外で新たな規制が始まる気運があるからです。

第4回 カーボンニュートラルに向けた 自動車政策検討会には他の業界団体も説明しています。

輸送に関する団体はそもそも車はCO2の2割弱しか占めていないことを説明しています。

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更に運輸部門のトラック全体でも先ほどの2割の36.6%です。俺らのせいではないとの心の声が聞こえますねぇ。

出典:カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会 トラック運送業界における認識と課題

他の業界団体だと

2021年4月28日 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会には販売台数を見せています。

燃料別登録乗用車新車販売台数推移

(自販連調べ)(自検協調べ)

HEVの占有率で14%

EV 0.19%

FC 0.01%

靴を履いていない未開の地に靴を売りに来た寓話のようですが

99%も販売先が有るとみる楽観論か

1%の人にも認められないという悲観論か

いずれにしても電動化はまだまだです。


渋滞で走っては止まりを繰り返す市街地と高速道路では燃費が異なるのはドライバーなら当然です。海外で運転された人も舗装されていない、不十分な道路とアウトバーンで燃費が変わることも。これをCO2排出に換算したら、そりゃ同じ結果でしょう。
そもそも在宅勤務で車自体が動かなくなるので走行距離から減るので優位なのはガソリンエンジン自動車という不都合な話になります。


また、裏側から見るとというか、前提としている電力製造時にかかるCO2に左右されます。火力発電の燃料など現状のCO2を是としています。

エネルギーミックスを再生エネルギー優先にしてくれれば、電力をバカバカ使ってもCO2排出にはなりません。まあ、太陽電池の製造時のCO2排出量もたいがい多いですけど。

一昔前から現在まで、テスラ・モーターズがクレジットでOEMメーカーから稼いでいましたが、今またCO2で同じような稼ぎが産まれようとしています。このクレジットとは欧州ではカーボンプライシング(炭素排出権)の排出枠販売であり、電気自動車EVを唯一に近く専業するために他社に販売して大きな利益を上げていました。


電気自動車EVよりもガソリンエンジン自動車の方がCO2排出削減に貢献するとか、どんな話かと思いますがそこそこ妥当性もあって不都合な真実かもしれません。


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