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塩田武士さんのデルタの羊

デルタの羊は四国にアニメ制作会社が無いのでフィクションです。ってWebを調べに行くぐらい真に迫っている本でした。

やはり塩田武士さんの本は面白い。ネタバレになるので読んでいない人はここで閉じて頂いて書籍を読んでもらえると良いぁ

では、過去にnoteで読んでもらった有川浩さんの本について書いたもののデジャブにも思えた「デルタの羊」、重層的なので紹介します。

とはいえ、そのまましても面白くないのでまずは業界の概観から

アニメ制作会社数

始めに題材のアニメ産業を中心に見ていきます。

一般社団法人日本動画協会作った「アニメ産業レポート2019」一般社団法人日本動画協会によると、

日本国内のアニメ制作会社は東京都に542件、以下、埼玉21件、大阪府12件、神奈川11件・・で合計642件、会社があります。

って一極集中もここに極まりってぐらい東京に固まっています。

それも東映の有った杉並区とその沿線沿いの練馬区に各々100社以上立地しています。

四国地方はゼロなのに…
これでフィクションだと分かります。

特許事務所総数

ちなみに我が日本の弁理士事務所数は2020年9月末で主たる事務所数を合計した5066事務所であると弁理士会は言っています。一人事務所は3554人です。鳴り物入りで導入したのは遠い昔、特許業務法人は現在310法人でした。

肌感覚に比べて、なんか多すぎ、なので他に当たると

事務所数は事務所トップの頭数、つまり経営者数でみればよいのであれば主たる事務所数で行くと特許事務所経営が2723人で特許事務所共同経営616人います。

特許業務法人経営782人、弁護士法人経営68人でこれらを合計すると全て4189人になりました。

ですが、自分で弁理士会費用を支払う1人事務所の中には代理していない、「なんちゃって事務所」も多いので割引いて考える必要があります。

つまり会社からはお金出して貰えないので仕方無しに自費。名義貸しにもならない自宅を事務所に偽装したなんちゃって会社の出来上がりです。

1人事務所の1/3ぐらいはもしかすると営業していない、開店休業という事かもしれないです。そこで1000人は「なんちゃって事務所」にえいやーで決めてしまうと3000事務所ぐらい。これでもアニメ制作会社の5倍ぐらいの弁理士事務所数ですね。

あと、久しぶりに統計みたら弁理士の平均年齢が50歳を超えていて草

夢の無い業界に若い新規参入は望めないということか?!

あれ、何の話?になっているので強制的に元に戻ります。

アニメの知財権

アニメの知財権は著作権が保護しているのですが権利者が錯綜すると大変です。

わをかけて面倒くさいのが著作者人格権で改変に同意が要ること。探して同意が必要になります。

権利関係がキッチリしないと2次利用、3次利用するメディアミックスするときに遡れず会えずにモメます。

フリーハンドまたは、単独との交渉が出来ないため問題が発生するためです。そもそも誰が権利者なのか分からない古いアニメとか沢山有りすぎです。

絵コンテにも原画にも、下手したら動画にも著作権の束が権利活用を邪魔します。

実際、狭義のアニメの市場規模は2015年に1700億円だが、

これに対して、METIの有る資料では1.24兆円の広義の国内アニメ産業でした。

関連する事業の大きさが分かります。これらを阻害する著作権法は誰を守っているのでしようね。イランやろ。

なお、別の資料では2015年の広義のアニメ産業の市場規模は1.83兆円です。のでどこまでをアニメ産業として認めるかによっても、定義で規模は変わります。

更に脱線してしまいますが、勢いのある鬼滅の刃の映画は公開1ヶ月で223億円を稼ぎ出しました。こちらは広義のアニメになりますが、狭義のアニメ1700億円の一割強の割合です。当たるとデカイですね。

さて、この資料では最新の2018年は2.18兆円ですので順調に規模は延びています

出典は「アニメ産業レポート2019」一般社団法人日本動画協会です。

本の中では景気の良いアニメ産業として海外を挙げていたので探すと、

ちなみにこの中にある映画アニメ、アメリカ製アニメーションはピクサー/ディズニーが5割、2割のソニーピクチャーズ、イルミネーションの総額16.4億ドルでした。これは映画だけです。

飛ぶ鳥の中国も変調をきたすようで、

中国市場の表現規制の実施は2019年4月からだった。その半年前には買い控えにより減速する事がこの書籍の裏を流れる話なので、深いですね。

デルタの羊の重層感

やっと、この書籍話を重層的にみせていきます。

って、書籍は途中まで話が複雑すぎて分からなくなりましたので、年の新しいもの、上流を上に表を作りました。

この塩田武士さんの「デルタの羊」という書籍は、

アニメ業界の現状を暴き出して、最後に業界の活路、バラ色?の未来をみせます。

元々「アルカディアの翼」というアニメの映像化に関する紆余曲折を

その下層のアルカディアの悲劇というノンフィクションという形でアニメ化するのが、

書籍で作りかけ挫折したトータル・レポートという映画です。

その中国を含めた再度映画化の動きを「デルタの羊」という本が描き出します。

絵に合わせると四層は有りすぎでこんがらがりました。

愛媛を舞台にした物語ですが、トータルレポートというアニメを作る東京からはUターンの人もいればIターン起業の人も居て、悩み中の私には少し羨ましいです。

なんせ愛媛にある大街道の通り、その書き込みが以前住んだこともあり懐かしい限り。

実在の事件

なお、マルドゥック・スクランブルでも文庫が出て盛り上げているのでネタ元という話は間違い無さそうです。

冲方丁さんの挫折したキャラクターデザインを主役が膝を抱える姿で示したアニメが今も見ることが出来ます。

5年後に映画を公開した姿もDVDでみることもYouTubeで先行?予告映像も見れます。

ぜひ、「デルタの羊」を映画化する際には

その状況をハンディカメラで映してほしいですね。人気作家さんなのでもうすぐ動いているかもしれないですが。

少なくとも、制作委員会方式ではないことはディスっているのでお願いします。

<まとめ>

主役の一人、渡瀬智哉が一途に研究する発明者のようですが一人の熱い思いがこの物語を動かすのは、

なんとも格好いいですよね。

上に挙げたアニメ制作会社624社にもいるのでしょうね。

それを具現化する天才SEが聖士 どうも聖闘士星矢?を想起する名前です。

でも勤め人の私は、やりがい搾取されている?フォロワーにどうしても感情移入してしまいます。

先に上げた会社や事務所に勤め日々真面目に働くなかでの気付き、

ひたすら線を引くなかで二年間の後でスッと思った線を引けるようになった感覚は、

特許請求の範囲を決めるのに似ていました。

遊び心いっぱいある面白い本です。伝えきれないので是非ご購入くださいね。

って同郷なだけで全く知らないんですけどね。

2021年追記:ヱヴァンゲリヲン映画作成のプロフェッショナルの流儀をみて

絵コンテ無しでアニメを作るという新しい制作手法があり得ねー、事実二転三転してるしAパートを捨てるとか、決着を付けるための産みの苦しみが画面からも読み取れました。

「やっぱり頭の中で作ると・・・

そのひとの外がないんだよね」
という言葉が、人を率いてモノを創る仕事として、仕事を任せる流儀にみえました。そのためにモーションキャプチャーを付けて何日もアングルを探しているなんて、贅沢過ぎるアニメーション制作でしたね。

戸惑われる姿 戸惑いの渦に巻き込まれる姿で部下が成長する
と言いつつ、出来には満足していない いろいろやんなきゃなぁ 
と土壇場で使徒襲来
 

「肥大化したエゴに対するアンチテーゼ」という深いのか訳の分からない言葉が煙に巻く。

いったんは人に任せる

でも、結局そうならない、全部塗りつぶしていく
本当に作品が好きで、命を削り、より良くするために過去のサンクコストを躊躇なく捨て去る。
クリエイターのひとつの姿を見ました。


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