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企業研修市場分析。注目企業4社と今後の市場について勝手に考察

みなさんこんにちは、林です。

今回は「法人の社員研修業界」についてとりあげます。

・業界の規模
・業界の構造/分類
・業界におとずれている変化
・代表的な企業の紹介
・(勝手に考察)

こんな構成です。

僕が主催しているビジネスモデル勉強会で取り上げたテーマをサマリしたnoteになっています。

いつもの特定の企業の分析記事とは異なる仕立てですが、みなさんの参考になればと思います。

それではいってみましょう!

研修業界の規模

矢野経済研究所の発表によれば研修業界の市場規模はおよそ5000億で、2011年から微増を続けています。

2020年はコロナの影響で対面の研修が実施できず、短期的に減少しています。

矢野経済研究所:企業向け研修サービス市場に関する調査を参考に筆者が作成。

この「5000億」の中には資格取得系や英語を中心とした語学関連も含まれているようで、それらを除外すると約4000億程度。
※そうすると研修業界大手のインソース社発表の業界規模とも整合します。

この業界の買い手である顧客は、多くが従業員1000人を超える大企業や官公庁のようです。大手=研修がしっかりしてる、というイメージが一般的かと思いますがそのとおりのようです。
参考:日経テレコン「企業研修・社会人向け教育の業界概要」

研修業界の構造(分類)

ひとくちに「研修」といっても、コンプライアンス研修から、ロジカルシンキング研修、マネジメント研修など、テーマは多岐にわたります。

ここでは、研修業界にどんな企業が存在するのか、
をざっくりと俯瞰して把握できるように、「どんなことを教えている会社なのか」という観点で企業を分類してみます。

一般的に「研修会社」とイメージされていない企業も含まれるかもしれませんが、このnoteでは

研修=企業に対して現在・未来の業務に必要な知識やスキルをレクチャーすること

と広く捉えて分類しました。

▼分類図

まずは横軸に「単なる知識系なのか、その活用の仕方なのか」を、そして縦軸に「事業系なのか、マネージメント系なのか」をかけあわせてマトリクスで整理してみました。

このように整理すると、資格・語学を除く場合、

1.ビジネススクール勢(≒コンサル出身者が運営する会社)
2.人材ソリューション企業
3.研修会社

の3つのグループが存在しそうだなと感じました。

いわゆる一般的な研修会社は、色々な役職のレイヤーに応じて研修コースを用意しているのでカバー範囲が上記のマトリクスで整理すると全方位的になります。

が、「その研修会社でないと有していない希少性の高いノウハウ」のようなものはあまりない。かつ、もと戦略系のコンサル、あるいは経営経験者という、「誰に習えるか」の点で突き抜けた存在もそこまで多くないため、その点を上記の1,2がうめているのかな、という印象です。

業界におとずれている変化

1.オンライン化

他の業界にもいえることですが、コロナウィルスの脅威はこの業界にも大きな影響を与えました。
事実、冒頭の市場規模の中でもふれましたが、2020年は市場規模縮小となっており、今まで主流であった「対面×集合」のスタイルをオンライン化させる必要性に迫られています。
(個人的にコロナが今よりも落ち着いたら意外と大手の研修は対面に戻るものもあると思うので全部が全部オンラインってわけではないと思いますが)

2.オンデマンド動画化

先程のマトリクスの整理でいうと、左側半分は「教え手を選ばない」ものであり、単なる「知識」であるためインプットの効率・効果の観点からオンデマンドの動画に置き換わっていくと想定されます。
事実toCの資格領域ではKIYOラーニング社のようなオンデマンド動画化が進んでいますし、そもそも何年も前から大学受験領域では東進、スタディサプリのような動画学習が当たり前です。

すでに各社の対応が進んでいる領域ではありますが、視聴後の測定・管理などのLMS(LearningManagementSystem)も含めた進化が今後も求められると想定します。

3.DX人材育成強化

DXという言葉が誕生する前から、こうした高度IT人材は日本に不足しています。が、いよいよまずいぞと、研修会社の主要顧客である大手も本腰を入れ始めました。それにあわせて各種研修企業もDX人材育成系のカリキュラム強化が想定されます。

が、研修大手インソース社の発表では、DX研修による市場の拡大は約100億円程度と限定的に見ており、そこまで大きなインパクトではないかもしれません。
※そもそも昔からこうした人材育成コンテンツがあった場合単に、「DX人材」という呼び名に変わっただけの可能性もありますもんね。

研修業界上場企業をいくつかご紹介

先程挙げた業界の変化に対してどのように対応しているのかにも触れつつ、いくつかの企業をご紹介します。

①インソース

いわゆる大手企業、官公庁に向けての研修を主な生業にしている「研修企業」の1つ。設立は2002年。2016年に上場しています。

▽売上/利益推移

直近はコロナ影響で打撃を受けていますが、それまでは売上が昨対で25%前後で成長。売上50億を超えて営業利益も20%超え。

▽上場後堅調な市場からの評価の伸び

売上成長、市場の評価ともに堅調な会社です。

・研修の半数近くがすでにオンライン対応
・自社開発の動画コンテンツ+LMSを提供

と市場の変化に対応しています。


②リンクアンドモチベーション

”企業の「エンプロイーエンゲージメント」向上をワンストップで支援”を掲げ、大手やベンチャー企業を対象に、「コンサルティング」「トレーニングパッケージ」を提供。

前述のマトリクスの整理でいうと「マネジメント」領域の研修を担う会社です。

役所広司さんをCMに起用した組織サーベイシステムの「モチベーションクラウド」を提供。設立は2000年。2007年に上場。

▽売上
会社全体としての売上は400億弱ありますが、いわゆる組織に関わる研修事業以外にも色々な事業を手掛けており、「研修」に関わる売上は下記の「コンサルティング」であり、50-60億程度です。

※2020年12月期決算説明資料より

▽時価総額推移

オンライン研修への対応は済み。
自社のコンテンツを動画化するなどの取り組みは無いようです。

③識学

リンクアンドモチベーション社と同じく、マネジメント領域の研修を提供する企業。

設立はH27年ながらも、その後4年後には上場。
人が事象を認識し行動に至るまでの思考の動きを独自のメソッドで体系化させ、企業の経営層を主な対象としています。

同社の商品は1対1の全10回で100万円を超える価格でありながら、顧客の過半数はベンチャー企業であるという点です。

また、同社発表によると、年間500社増加している顧客のうち70%は口コミ経由とのこと。

▽売上/利益推移

売上は25億。研修に関わる企業でありはがら、コロナ禍でも高い成長を示しました。
いわゆる一般的な企業の集合研修よりも、企業のトップ層に対しての少人数性の研修の割合が高いため影響が低かった、ということでしょうか。

▽市場からの評価はこれからか

現状の時価総額は112億とのことで、そこまで高いとはいえません。これまでの成長率をキープできれば今後評価のあり方もかわる、ということでしょうか。

公式サービスサイトからは、オンライン研修の有無は確認できませんでしたが、同社が提供している「識学クラウド」の中でオンデマンドで研修内容の復習が可能になっているようです。


④BBT

みなさんおなじみ、元マッキンゼー日本支社長の大前研一さんが設立されたBBT。

設立は1998年。2005年に上場。
もともとはtoC向けに展開していたBBTですが、決算書を見る限り売上の半数近くをtoBの研修が占めるにいたっているようです。

上記資料から読み解くと、上位20社の年間発注単価は5000万を超えています。


まだまだこれ以外にも注目に値する企業はたくさんあるでしょうが一旦このあたりで。

勝手に考察。今後の研修市場について

最後に思考のトレーニングとして、今後の研修市場の未来について

・ベンチャー起業において研修市場は浸透するか?
・もし浸透するのであればどうすればいいのか?

という問いを立てて考察してみたいと思います。

前述の通り、研修市場の顧客のほどんどは大企業や官公庁でした。
が、社員の教育に対しての重要性は大手もベンチャーもかわらないはず。
ということで上記の問いを立てています。

━━━━▼ここからは有料パートとさせていただきます━━━━━━

ここまでおつきあいいただきありがとうございました。
上記の問いに対する考察部分については有料とさせていただきます。

有料パートではこのnoteに登場した図解のPPTスライドデータのダウンロードも可能です。

▼スライドデータ(PPT)

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今までの有料記事も読み放題になりますので、定期的に企業分析やビジネスモデル分析をされる方にはこちらがおすすめです。

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