【殿堂入り】あなたは「エムスリー」のビジネスモデルを知ってますか?
noteでのビジネスモデル分析シリーズを始めてから主に新規でIPOした企業を対象に投稿してきましたが、今回はいわゆる「レジェンドシリーズ」。
とっくの昔に上場した企業だけども世間一般では知らない人もいる。名前は聞いたことあるけど今更人にはきけない、という有名企業のビジネスモデル分析です。対象は医療ITの「エムスリー」。レジェンドシリーズの一発目にふさわしい題材だと思います。それではいってみましょう。
エムスリーって何をやってる会社?
設立は2000年。国内医療ITで圧倒的NO1の企業です。
2019年11月時点で時価総額は約2兆。サイバーエージェントが4000億といえばそのすごさが何となくイメージできるのではないでしょうか。
売上は1000億円の大台。
数多くの事業を手掛けていますが、日本国内にいる30万人の医師のうち29万人(!)が登録している医療情報ポータル「m3.com」を運営している会社です。
-超略沿革
2000年 創業。「MR君」提供開始
2002年 m3.comの前身である「WebMD Japan」の運営引継ぎ
2004年 医師向け求人サービス「m3.com CAREER」開始
<ここで上場>
どんな人が経営?
元マッキンゼーのパートナー(役員)で、医療業界では伝説的なコンサルタントの谷村氏が創業。当時クライアントであった企業にMR君のビジネスを提案し、「一緒にやろう」と言われて創業した流れのようです。
※マッキンゼーの伝説レベルの人がつくったサービス名が「MR君」っていうのがまた茶目っ気があって素晴らしいです。
エムスリーのビジネスモデルとは?
同社の売上げシェアの高い事業のみ抽出して記載します。
特徴1:m3.comは日本国内医師ほぼ100%が利用する情報メディア
なんといってもエムスリー社のすごさは国内の医師の90%以上が登録する「m3.com」というメディア。ここで獲得したユーザー(医師)にリーチができることを強みに、製薬会社がマーケティング・営業の場として利用したり(MR君)、そこに集まる医師に対して病院の求人情報を掲載することでマネタイズをしています。
登録制のサイトなので中をみることは叶いませんでしたが、過去の決算資料を見る限り
・医療ニュース
・会員掲示板
・文献検索
などのコンテンツが用意されているようです。
特徴2:閲覧者は医者だけなのに月間数千万PV。しかもすごい粘着性
今は公開していませんが、2006年までは同社は決算書のなかでメディアの各種KPIを公開していました。
そこには驚愕の数値が掲載されています。
引用元:平成19年3月期 中間決算発表資料
<2006年時点>
前提として全登録医師がアクティブ(休眠でない)状態で算出しています。
すごいですよね。
1医師あたり平均で月10回近くログインですから。20日働いてるとしたら2日に一回はログインしてるってことです。
しかもさらに信じられないのは、1回ログインしたら平均で20ページ以上閲覧しているという点。
私も過去Webコンサルタントとして色々なメディアをみてきましたが、1ログインあたりのPVなんて4,5ページいけば御の字という感覚です。これはすごい。
特徴3:粘着性を生む高付加価値コンテンツ事態をマネタイズのポイントにしている(天才的)
実際のメディアを見ていないのでこれは私の想像ですが、上記の圧倒的な高頻度ログイン+他ページ閲覧を生んでいるキラーコンテンツは
・製薬会社からの薬剤に関する情報(MR君)
・病院の求人情報
なのではないかと思います。医師は役職柄各種薬剤に関して最新の知識を知っておく必要があります。こちらのページに記載がありましたが、2018年には新しい薬が104個誕生したようです。つまり3日に一度は新しい薬が誕生しているってこと。いやでもログイン頻度があがりそうです。
また求人情報もみずものですから日々内容が変わります。これも高頻度ログインを生む源泉になりそう。しかも単価が2000万を超える人材ですから、掲載単価も高そう。
とにかく『収益化ポイントなのにコンテンツ価値が高く、粘着性の高さを生んでいる』点があまりに秀逸です。
売上・利益の実績
同社決算書によると2019年、売上は1000億を超え、営業利益率も25%超となんともすばらしい数値だと思います。時価総額は2兆。PERも100倍近くついてますから、市場の同社に対しての成長の期待値が高いことが伺えます。
今後の伸びしろについて
今後の同社の成長を想像する上で、
下記3つの観点で整理をするとわかりやすいのかなと思います。
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