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群馬サファリパークにインタビュー|飼育員を辞めようと思ったこともあった...?

群馬県富岡市岡本1番地にある群馬サファリパーク。
1000頭羽を超える動物を飼育しているこのサファリパークで、飼育員歴20年を迎える”畑中さん”にインタビュー取材をさせて頂きました。
今回の記事では、担当動物との切ない別れやほっこりエピソードなど、普段は聞くことのできないお話をたくさんご紹介します!

インタビュー開始

ー本日はどうぞよろしくお願いします。まず、畑中さんの業務内容についてお伺いしてもよろしいですか?

畑中さん:スマトラゾウとマレーバクの2種類を担当しています。ゾウはオスのアスワタマとメスのイダで、バクのお父さんヒカルとお母さんのワカバ、娘のコモレの3頭ですね。

ー始業から終業までのタイムスケジュールはどのようになっていますか?

畑中さん:朝一は獣舎にいる動物たちの健康チェックをし、前日にあげた餌を食べているか一通り見て周り、獣舎から展示場の方に動物たちを連れて行ったりします。動物たちが展示場に出た後は獣舎の掃除を11時くらいまで行ってますね。

ーありがとうございます。掃除が終わったあとは何をされているのですか?

畑中さん:日中は車で入ってきたお客様と動物たちにトラブルがないか安全確保をしたり、動物たちに餌をあげたり。例えばゾウなら干し草をあげています。ゾウやバクはあまりないですが、もしケガをしてしまった場合には治療をしたり、要請があれば他の動物のところに応援に行くこともありますね。

この道20年でも不安はある

ーちなみに畑中さんは飼育員をされてから何年目になりますか?

畑中さん:ちょうど20年経ちますね。

ーということはもうベテランの領域ですね...!!20年ともなるとあまり不安に思うこともなくなってくるのではないですか?

畑中さん:色んなことに慣れてきてはいますが、ケガ一つとっても色んなパターンがあるわけで。20年やってますけど、新しい発見や経験はまだまだありますね。例えば、餌を食べてくれないときの対処法も色々とありますが、今までと同じ方法で餌をあげているのに食べてくれなかったりするのでまだまだ驚くことばかりです。

ー日々勉強というわけですね。最近も何か予想と違った出来事はありましたか?

畑中さん:一年前くらいにバクが新しい獣舎へ移動したんですけど、動物ってそういう環境の変化があると体調が悪くなったり餌を食べなくなったりするんですね。ただ、うちで飼っているバクはあまり気にしないのんびり屋さんな性格みたいで、引越ししたその日から全然気にする様子もなかったんです。新しい場所なのに普通に落ち着いて生活していたので、良い意味で予想と違うエピソードでした。

マレーバク①

※新しい獣舎でハイチーズ。


ーのんびり屋さんな性格の子が多いんですね。ペットと飼い主が似るという言葉を良く聞きますが、実は畑中さんと担当している子たちも似ていたりするんですかね?

畑中さん:どうなんでしょう(笑)私もどちらかというとのんびりしていると思うので、たまたまかもしれないですけど、似ているところはあるかもしれないです(笑)

ー徐々に似てきたのかもしれないですね(笑)

好きを仕事にするのも楽しいことばかりではない

ー20年間飼育員という仕事を続けていると思いますが、好きを仕事にして、しかもそれをずっと続けてられている理由はどこにあるのでしょうか。

畑中さん:単純に動物が好きで、それに関わることができているのが一番ですね。実はサファリパークを辞めていってしまう人たちもいて、自分も同じことを考えたことがないわけではないんです。辞めていく子を見ていると自分も色々と思うところがありますから。

ーそれは心にくるものがありますね。

畑中さん:はい。ただ、じゃあ他に何の仕事をしようかと考えても、これ以上にやりたいなと思えることは中々ないんですよね。好きなことを仕事にできる人って多くはないと思うので、自分のやりたいことをやって仕事にできているっていうのは幸せなことなのかなと思ってます。

ー誰もが好きを仕事にできるわけではないですからね。ただ辞めようと思ったことがあるのは少し意外でした。

畑中さん:同期が何人かいたんですけど、人数が少しずつ減っていったときに不安になったり取り残されたりする気持ちになることもありました。給料面も他の職種と比較すれば決して高いわけではないので、将来を考えるともう少し条件のいいところに行った方がいいのでは?と思ったこともありましたね。

ー好きな仕事といっても、常に幸せなことばかりとはいきませんよね。動物たちのお世話ではきついと感じることはなかったのですか?

畑中さん:それは最初の方だけですね。他の仕事と比べれば肉体労働も多いんですけど、慣れてしまえば体力的に辛いとかはないです。夏に外で作業するときは流石に疲れますけどね(笑)

動物の担当を離れるときは寂しさが募る

ー畑中さんがバクやスマトラゾウを担当されるようになったきっかけはあるのですか?

畑中さん:基本的には会社の方から人事異動があって「この動物を担当してくれ」という感じで決まります。なので私もずっとバクやゾウを担当しているわけではないんです。

ー20年同じ動物を担当しているというよりは、色んな動物を担当していくのですね。今まではどのような種を担当されていたのですか?

畑中さん:最初はふれあい出来る、ウマとかウサギとかそういう動物たちを担当していて、その後にアジア・アメリカゾーンというラクダやニホンジカ、バイソン、エルクなどがいるゾーンを担当してました。その後はアフリカゾーンのサイやキリン、シマウマで、今に至るという感じですね。

ー色々な動物たちを担当されてきたんですね。担当を離れることになるときには悲しい面もあるのではないですか?

畑中さん:そうですね。やっぱり実際に担当して世話をしているとその動物の魅力が分かってきて、やる前はどちらかというと興味が他より薄い動物もいると思うんですけど、実際に担当してみるとそれぞれの個体の性格が分かってきたり愛着が湧いてきたりする面もあるので、やっぱり寂しい気持ちはありますね。

ー担当動物が変わるときは特にモチベーション維持が難しそうですね。

畑中さん:そうですね。同じ草食動物でも種類が違うと色々と対応が変わってきますし、個体差もあるので、やってみるまで分からないという意味で緊張することもありますね。

ー動物が相手だからこそ、より繊細にならなければいけないんですね。ちなみに就職前から今のゾウやバクたちの担当を希望していたんですか?

畑中さん:基本的に動物は大体好きですけど、就職するときはトラやライオンが好きでした。色んな動物を担当していく中で今はゾウが特に好きになりましたけど、その前は特に好きというわけではなかったです。

ーどういった理由でトラやライオンから好きの対象がゾウに移ってきたんですか?

畑中さん:ゾウって本当に頭が良くて、担当者のことも識別してくれるんです。ちゃんと信頼関係を結べると私の言うことを聞いてくれますし、逆に良い関係ができていないと言うことを聞いてくれない。ゾウは群れの動物なので、信頼関係を築いて少しずつ群れの仲間になっていくところにやりがいを感じるからですね。

ー群れの一員になれるとさらに愛着が湧きそうです。ゾウの群れの一員になるまでに苦労された点はありましたか?

畑中さん:ゾウが今何を考えているのかという、気持ちを分かるようになるまでが難しかったですね。慣れてくると表情や機嫌の良さが何となく分かってきたりするんですけど、最初のうちはそれが大変でした。

スマトラゾウ①

※穏やかな目をしてますね。


ー慣れてくると表情や気持ちが分かるようになるものなんですね。

畑中さん:分かるようになりますね。特に目が分かりやすいんですけど、機嫌が良くないと目を見開いて多少攻撃的になりやすいこともあります。体も大きい動物なので気をつけて作業しないと危ない面もあるので、そういう様子を注意して見ながら作業してますね。

コモレももうすぐ1歳に

ー動物たちのお世話をしている中で嬉しかったエピソードがあればお伺いしたいのですが。

畑中さん:バクのコモレが生まれたのがちょうど去年の10月なんですけど、コモレの誕生が凄く嬉しかったですね。その子が順調に育ってきてもうすぐ1歳になるんですけど、その前に生まれた子は10ヶ月くらいで亡くなってしまったんです。だからこそ、今回育っている子が無事に1歳を迎えられそうなことが本当に嬉しいですね。

ー自分の担当した子が子どもを産んで育っていくのは純粋に嬉しいですね。

畑中さん:我が子のような気持ちというか、担当動物が出産して何事もなく子供が育っていると本当に嬉しいですね。

ー想像しただけで嬉しい気持ちになりますね。もしよければスマトラゾウの方でも何かエピソードをお伺いしてもよろしいですか?

畑中さん:はい、分かりました。メスのイダちゃんが結構食いしん坊なんですけど、餌をあげるときも本当に餌しか見てない感じなんです。トレーニングの一環で餌をあげるときも、犬でいう待てをしてもらってから食べるんですけど、待っている様子が犬でいうとよだれをたらしながら待っているような感じなのがすごく可愛いらしいですね。

ー表情も分かりやすいからこそなおさら可愛くなりますね。そのような様子は来園されたお客様も見ることができるんですか?

畑中さん:見られるタイミングもありますね。チャンスとしては少ないですけど、展示場でちょっとしたトレーニングをしたり、餌をあげたりしているときに、さっき言った待てをしているので、タイミングが合えばその様子は見られるかと思います。

日本では群馬サファリパークだけ

ー来園されたお客様に「ぜひここを見て欲しい」というようなポイントはありますか?

畑中さん:バクの方は、子どもと父親、母親の3頭を同時に展示しているんですね。3頭を同時に展示っていうのは珍しいことで、大体はお母さんと子どもだけで、お父さんは別で展示してるんです。

ーそれはどうしてですか?

畑中さん:バクっていうのは群れではなくて単独で生活する動物なので、野生でも1頭ずつ暮らしてるんです。子どもは流石にお母さんと一緒にいますけど、繁殖の時期だけメスとオスが一緒になるんですよね。

ーだから3頭同時に展示しているのが珍しいってことなんですね。

畑中さん:そうなんです。お父さんのヒカルの性格が大人しいので、一緒にできそうだなということで一緒にしてみたら特に問題がなかったんですよね。たまに子どもがちょっかいを出してお父さんが軽く追っかけ回したりとかはありますけど(笑)、本気で攻撃するようなことは全然なくて。

ー優しくて家族愛の強いお父さんなんですね。

畑中さん:はい。親子3頭での展示っていうのは、詳しく調べたことはないですけど、他の動物園ではほぼやっていないことなんです。なので、それは珍しい展示だと思うので、ぜひ見て欲しいなと思います。

マレーバク②

※家族3頭で水浴び中。


ーゾウの方はいかがですか?

畑中さん:ゾウはスマトラゾウっていう種類なんですけど、スマトラゾウは日本でも群馬サファリパークにしかいないんですね。ゾウの中では小柄な方の種類なのでその辺りも見て頂きたいですね。

ー日本唯一なんですね...!ゾウっていま日本全体で減ってきてると思うんですけど、出産適齢期はもう終わってしまっているんですか?

畑中さん:これからですね。これから産んでくれるかなっていうのを期待してます。

ー環境に気を遣ってこれから出産して、貴重な種を見られるようにしたいですね。では、最後に読者の方にメッセージがあればお願いします。

畑中さん:動物園で動物をみるときに色々な見方があると思うんですけど、動物によって性格の違いもあったりすると思うので、そういう違いを見てもらえると面白いのかなと思います。

運営より

今回は飼育員歴20年の畑中さんに、飼育員を辞めようか考えたこともあるという意外なお話しや、動物たちのほっこりするエピソードなどについてお伺いしました。
飼育員さんの想いや動物たちのエピソードを知り、これまでとは違った視点でも群馬サファリパークを楽しめるようになったので、次に来園するときが楽しみです。
TwitterやInstagramでも動物たちの様子を見守っていきたいと思います。

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