ゼンチ!!!!!
七七志信は、同学年と比べ小さい体をさらに縮こまらせた。
派手なアクセサリーやらピアスやらを十二分に着けた外星人3人に周囲を固められていたからである。
ギラギラと輝き蛾を吸い寄せる蛍光灯がランドセルを照らし、スピーカーからの重低音が腹に響く中、頭上では知らない言葉が交わされている。時折触手で出来た男がずろずろと体に手を這わすので、鳥肌が止まらない。
虎に似た容姿の女が口元をぐにゃりと歪める。志信は恐怖でどうにかなりそうであった。
どうしてこんなことになったんだっけ、と思考を飛ばす。いつも通り塾で数時間勉強し、きらぼしヶ丘へ帰る航行バスに乗り込んだはずなのに、自習に熱が入り乗り過ごしてこんな場末のスラム街で降ろされてしまったのだ。しばらく右往左往していたら、突如現れた外星人達にこのボロボロのガレージに連れてこられてしまった。針は22時を示している。小学生1人を下ろす時間ではない。運転手に苦情を入れたいがあいにく携帯の充電も切れている。万事休す。
「で、どうすんだ」
唐突に低い声が響く。ガレージの隅に綿が飛び出たソファーが置かれ、その上に1人、長髪の男が微動だにせず座りこんでいた。
「そのガキのことだよ」
「あ〜、迷子だろうな。見ろよこの名札。アマノミヤ学園のガキだ」
「あらホント! ちんちくりんだけどエリートの卵ってワケね」
トカゲ顔の男が嬉々として言う。素性も何もかも知られているらしい。このまま誘拐されてしまうのだろうか? 唇を噛み締め、震える体を抑えながら3人を睨みつける。外星人の見た目は怖い。普段地球人としか接していないのだ。自然と見慣れた容姿へと目が滑る。
長髪の間の鋭い眼光。ハッと、その輝きに見覚えがあることに気づく。先週試験帰りに、駅前で確かにそれを見た!
「あ、あなたたちのダンスを見たんです!! 踊ってましたよね!?」
苦し紛れにそう叫んだ。
【続く】
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