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いつかの約束~ミルクティーカラーに染めた彼女~
カラーリングしたー
短い本文に添付された写真の彼女は、見たことないほどハイトーンだった。
どした?なんで?もうすぐ復帰じゃなかったん?
彼女はあと数か月で職場復帰を控えた育休中であった。
うん!そうだよ!でもさ、高校ん時卒業したらミルクティにするって言ってたでしょ。
ずっとチャンスをのがしてたじゃん?
どうしても今までそれが心残りで!
今しかないって思い切って染めたー!
***
彼女と私は女子高生時代、共に男子バスケ部のマネージャーをしていた。一年中体育館の隅っこで、つまることもつまらないことも共有した。
華の女子高生だった2000年代前半。テレビに映る憧れの歌手やタレントさんの髪はみんな鮮やかな色を帯びていた。
安室ちゃんの栗色のロングヘアは全女子の憧れだった。
優香さんの淡い茶色のウエーブヘアは男子の視線を釘付けにした。
金髪は金髪でも質が違うんじゃいと、あゆ派対くぅちゃん派のギャル達は揉めていた。
ベッカム由来のソフトモヒカンを夏休みだけ染める男子が多発した。
体育館で隅っこぐらししていた目立たないマネージャーだって憧れはおなじだ。この陰日向の高校時代を終えたら、絶対に県外の大学に出ててやろう。何色に染めようか!が定例の議題になっていた。
私はYUKIちゃんの赤髪に憧れたし、彼女はCHARAのミルクティーみたいな明るい髪に憧れた。
絶対染めようね!お互いに写メで見せ合いっこしよ!
確かにあの頃そう言い合っていた。
卒業し、互いに別々の場所で大学生となった。実習の多い彼女とは年に数回しか会えなくなった。医療系で派手なカラーリングを禁止されていた彼女。ついぞミルクティーカラーにならず社会人になった。
そもそも我々が大学生になるころ、髪色は徐々にダークカラーが主流になっていった。
オレンジデイズの柴崎コウちゃんだって、ごくせんの仲間由紀恵さんだって、美女か野獣の松嶋菜々子さんだって、黒髪や落ち着いた茶色だった。歌姫だってそうだ。宇多田ヒカルさんや、元ちとせさん、椎名林檎さん。当時はみんな黒髪だった。
モテたい!コンサバティブにいきたい!
自然と赤髪への憧れを忘れた。
***
彼女からの連絡をきっかけに、久しぶりにくだることもくだらないことも話した。気持ちは、あの日の体育館の隅っこにいた。彼女はミルクティーカラーを忘れていなかった。それどころか育休復帰するまでのわずかな時間に、置いてきた約束をかなえた。
さすがだな。私は彼女のこういうところが大好きだったんだ。
やると宣言したら絶対にやりきるパワー。一緒にやろうと言えば全部彼女が巻き込んでくれた。おかげで大変なこともあったけれど、それも全部笑いごとにできる明るさがあった。
ヘアカラーをきっかけに友人への大切な気持ちを取り戻した。
私も赤髪への憧れを取り戻しにいこうかな。
問答無用に白髪染めがさしせまる、その日までに。
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