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ハンガー売りのセールス

ハンガーにお困りではないですか?

先日、マッチ売りの少女ならぬハンガー売りのセールスに出会った。

勤務先の電話交換室から、「ハンガーのセールスが入ってるのですが対応お願いできますか?」と電話が回ってきた。

ん?ハンガーのセールス?
ハンガーとは洋服をかけるあのハンガーのことだろうか。

何かの聞き間違いかと思い、とりあえず電話を受けてみた。

「ハンガーを取り扱う卸業○○のものです。御社ではハンガーにお困りではないでしょうか?」

うん、やっぱりハンガーだった。

なぜハンガー屋さんから営業の電話が入っているのだろうか。

私の職場はアパレル関係でもなければ
制服へ着替えが必要な業種でもない。

特に困っていません。と切ることもできたのだけど、気になって聞いてみた。

なぜ、当社にハンガーのご提案を?
何か需要がありそうでしたか?


………え!?


…え?じゃないよ!
びっくりしてるのはこっちの方だよ!
むしろ何か策があっていて欲しかった!

驚かせてしまった事を詫びてお断りしようとしたところ、先方が口を開いた。

ハンガーを必要としない方はいないかと思いまして。


………え!!

今度はこちらが声を出しそうになった。
我慢した。えらい。

闇雲に手当たり次第掛けているのかと思ったら、
そこまでの誇りと自信を持ってハンガーの営業をしているとは。恐れ入った。

確かに、ハンガーがないと凄く困る。

出勤時に着てきたコートは畳むことになる。
いざという時の置きジャケットはできない。
お弁当の汁がこぼれたランチクロスを洗っても乾かすことができない。


なぜこんなに具体的にハンガーがなくて困るエピソードが出るかといえば、会社のロッカーのハンガーはもう3ヶ月折れて壊れたままだからだ。

ハンガー売りのセールスの言葉が脳内で繰り返される。
「ハンガーを必要としない方はいないかと思いまして。」

確かに私はハンガーを必要としている。

しかし、当社はロッカーのハンガーなどの備品は各自持ち込み品なのだ。私も、壊れてすぐに代わりのものを持ってくれば3ヶ月も拗らせることはなかった。だけど、帰りに明日こそはって思っても、毎日忘れるんだいっ!!!


個人で持ち込むことになっているので会社としてハンガーを購入することはないとお伝えした。

そんなことってあるんですね!

明るく素直に驚いたように言われて、私だってそう思うよっ!!!と言いそうになったけど、ここは会社だ。大人なので我慢した。えらい。


会社で買うことはないですが…ただ私のロッカーのハンガーはもう3ヶ月壊れたままで、今とてもハンガーに困っています。と小声で伝えた。


吹き出していた。

おい、笑うな!
ハンガーで困ってる人を笑うのか!!
ハンガーで困ってる人の味方じゃなかったのか!!!


吹き出しながらも、個人向けに販売している楽天ショップを教えてくれた。わざわざ、一本からはないですけど…と注釈をいれて。わかってらい!そんくらい!

ハンガー売りのセールスに出会ったおかげで、私は3ヶ月ぶりに、無事ハンガーに服を掛けることが出来そうだ。


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