見出し画像

2020年名古屋場所(7月場所)展望

こんにちは。

今年は名古屋場所ではなく東京場所ですが、要は7月場所、6日目が終わって色々良い要素があるので解説していこうと思います。


鶴竜まさかの休場

鶴竜が一日目に遠藤に敗北を喫した際肘をケガしてしまい、休場になりました。

個人的に、この休場は、いわゆる横綱に許される特権である「調子が悪いから休む」という類のものではなく、ガチのケガだと思います。
元々ひじの靭帯を痛めていたらしいんで、あれだけ派手にこければまあ痛めるでしょう。


入幕勢の躍進

今場所、新入幕・再入幕となったのは

琴勝峰
若隆景
琴恵光
照ノ富士
琴勇輝

の五人です。このうち琴勝峰のみ新入幕。先場所では琴ノ若が新入幕を果たしており、佐渡ヶ嶽勢の調子の良さが目立ちます。

まず真っ先に目が行くのは照ノ富士ではないでしょうか。関脇で感動的な優勝を果たし、大関昇進。何度も白鵬を破っていたこと、横綱の日馬富士が同部屋であること、その巨体、横綱間違いなしと思われていましたが、取り口から危惧されていた通り大怪我をしてしまい、なんと序二段まで転落してしまいました。
大関から序二段に落ち、再び幕内に来たその精神力は脱帽という他ありません。

そんな照ノ富士は5日目までで4勝1敗。
5日目には同じく元大関の高安に負けてしまいましたが、あれは高安が良すぎたので、まあ仕方ないでしょう。

そして琴勝峰。高校相撲の時から名をはせていた人です。
体は小さいんですが、ひっじょーーーに良い相撲を取る力士で、今後三役ぐらいはすぐ行くと個人的に見ている力士です。
見立て通り5連勝しました。

そして今日6日目、この照ノ富士と琴勝峰が激突
照ノ富士が得意の右四つ左上手に持っていき完勝。琴勝峰の今後の課題が明らかになる相撲でした。

個人的な指標として、「小さいのに幕内までくる力士はとんでもなく出世する」というジンクスがあります。
体が小さいのに幕内にこれたということは、フィジカルに頼らない確かなテクニックがある証でもあり、そのあと体が大きくなることはよくあるので、非常に期待できるのです。
白鵬、朝青龍、鶴竜、貴乃花、千代の富士など、出世時は小さく、その後どんどん大きくなっていった名力士は大勢います。

そういった意味で琴勝峰、それから再入幕の若隆景、本日大関貴景勝を破った霧馬山あたりは非常に期待できると思います。


貴景勝はきつい

さてそんな霧馬山に負けてしまった貴景勝ですが、ちょっと厳しそうです。

調子が悪い~とおっしゃっている方も多いんですが、自分的にはちょっと違う風に考えています。

というのは、むしろ今までが運が良すぎただけで、貴景勝の実力はこんなもんだと思うのです。

貴景勝は、弱点が明確な力士です。
攻め方は押しと引きのみで、組まれたら絶望的です。
誇張抜きで、クンジョニ(組んだら序二段レベル)だと思います。

彼が出世する前だったらそれでもいけたかもしれませんが、大関となった現在、当然みんな貴景勝対策をしてきます。
貴景勝の有利な体勢にならない場面も増えてくるはずです。
そうなったとき、貴景勝はどうしようもないのです。

正直言って、貴景勝が大関に上がった時、僕は非常に驚きました。
これほど弱点がはっきりしているのに大関とは、と。

さらに彼は押し相撲ですが、腕が極めて短いため突っ張りも不得手です。
突っ張りは、相手を押し出すだけでなく、四つ相撲を取ろうと近づいてくる相手を遠ざける意味合いもあるので、クンジョニ力士にとって突っ張りができないのは致命的です。
元祖クンジョニの千代大海があれだけ長く活躍できたのも、突っ張りが上手かったからです。

こういうタイプの力士が安定して勝つのは非常に難しい。
なぜなら、立ち合いで勝たなければ終わりだからです。

押し相撲は、相手にまわしを取らせず、かつ自分が下に入る必要があります。
そのため、立ち合いが非常に重要です。立ち合いで相手より早く相手の下に入る必要があるのです。
しかし、立ち合いが上手くいかないと、途端に大きく不利になってしまいます。立ち合いでほぼほぼ決まると言ってよいでしょう。

さて、結構ボロクソに言ってしまいましたが、貴景勝は今回カド番
個人的には、勝ち越しはまあできるんじゃないかなとは思います。
しかし、優勝争いを脅かす存在にはなれないでしょう。

上位陣との相性を考えてみますと、
・白鵬…貴景勝が最も苦手なタイプ。まず無理
・朝乃山…こちらも苦手なタイプ。立ち合いで先手を取り、そのまま攻め切るしかない。まわし取られたら終了。
・御嶽海…まだ可能性あり。いつも通り取ればいける。
・正代…正代は立ち合いが苦手なので、攻めやすい。叩きに落ちないようにすべし。

こんなところでしょうか。
正直白鵬に勝つのは絶望的なので、御嶽海・正代戦をきちんと落とさないことが非常に重要です。
あと4勝、なんとかカド番を脱出してほしいものです。もう最近大関陥落ばかりで見てて悲しくなってくるよ…


5月場所がない分、実力者やベテランが力を出す

6日目現在、成績上位者は以下の通りです。

全勝
白鵬、朝乃山、御嶽海
1敗
正代、玉鷲、妙義龍、琴勝峰、照ノ富士

全勝している三人は結果を残し続けている実力者
1敗力士も、1月場所準優勝の正代、優勝経験者の玉鷲、照ノ富士、ベテラン妙義龍と、結果を残したことのある人たちが並び、かつての徳勝龍のようなラッキーパンチが少ないように見受けられます。

また、大関から陥落した力士が4人いまして、照ノ富士は1敗、残りの栃ノ心、琴奨菊、高安はいずれも2敗と好調です。
特に、個人的にですが高安は非常に調子が良いように思います。

この理由として、5月場所、および直近の巡業がなくなったことがあると思います。
年間6場所ある本場所、その間に行われる巡業、総合すると力士の負担はかなりのものです。
体を休める暇もありませんし、けがも治りません。休場すると大幅に番付が下がるので、休むこともできません。

ベテランともなると、体の回復が遅くなり、ケガも増えます。
5月場所と巡業がなくなったことで、十分な回復ができたのではないでしょうか。

体が万全だと、そこはやはり真の実力と、熟練の技術がものを言います。
白鵬がここ数年で一番と言えるほど好調なのも、十分に体が回復しているからではないでしょうか。


白鵬がやばい

そう、今場所の白鵬はやばすぎです。ここ数年で一番です。

以前、白鵬を称えまくる記事を出したことがあります。

その中で、白鵬の立ち合いのパターンを以下の5つに分類しました。

①超人的な早さで立って相手には上手を取らせず、自分は左上手右四つになる
②左から張って右差し左上手
③右から張って左差し右上手
④かちあげ
⑤ぶちかまし

①が理想ですが、読まれますし、超人的なスピードが必要なので、②もやるようになり、さらにそこから③、④、⑤と増え、現在相手は白鵬の立ち合いを読むのがほぼ不可能な状況になっています。
普通力士の立ち合いは1パターン、あっても2パターンなので、これは白鵬の大きな武器です。

しかし、今場所の白鵬は、張り差しやかちあげを封印し、全て①の立ち合いをしているんです。
前述のように十分体が回復できたからか、超人的なスピードが戻ってきています。

立ち合いだけでなく、今場所の白鵬はスピードが異常です。
幕内で最も速いですね。

取り口も、押し相撲で圧勝したり

四つ相撲で瞬殺したり

注目すべきは、押し相撲で勝った相手の遠藤・宝富士は四つ相撲を得意とする力士、四つ相撲で勝った相手の豊山・阿武咲は押し相撲を得意とする力士なんです。
つまり、相手の得意な形を全く取らせずに勝っている、それができるのは超人的なスピードがあるからです。

正直今場所の白鵬が負けるビジョンが見えません。
僕の今場所の優勝予想は白鵬とさせてください。


朝乃山は想像以上

今場所が新大関である朝乃山。

一般的に、新大関の場所というのは不甲斐ない結果になることが多いです。
大関昇進前は2桁勝利が求められますが、大関に上がってしまえば地位の維持のためには勝ち越しで十分ですし、何より新大関はイベントが目白押しだからです。

しかし、5月場所が中止、巡業もなくなり、イベントを消化しきったのは幸運でした。
十分休めた朝乃山は実力通り、どころか春場所より明らかにパワーアップしていると思います。

四つ相撲のため取り口が安定しているのが良いですね。
先日霧馬山戦は危なかったですが、あれはむしろ霧馬山をほめるべき案件で、むしろ巻き替えの隙を逃さず外四つのまま速攻で攻めたのはすごかったです。非常に良い取組でしたね。

朝乃山にとって壁となる力士は、もはや白鵬しか存在しないでしょう。
朝乃山は白鵬に勝利したことがありません。取り口が同じ右四つなので、白鵬から学ぶことは相当多いはずです。
相当熱心に白鵬の元に通って学んでいるみたいなので、今後もぜひ続けてほしいものです。

白鵬サイドも、得意な右四つではなく、あえて右からの張り差しで左四つに組み止めるなど、かなり朝乃山を警戒しています。
今場所は朝乃山がどう白鵬に向かうのか、張り差し封印中の白鵬がどう対策するのか、目が離せません。
この二人は千秋楽で当たると思うので、そこまで二人が優勝争いに絡むことを期待しましょう。



まとめ

というわけで、今場所は

・ベテラン勢に期待大
・入幕した琴勝峰、照ノ富士いい感じ
・貴景勝なかなか厳しい
・実力者が順当に強い
・白鵬超絶好調、優勝予想は白鵬
・朝乃山期待大

です。

あと御嶽海は早く大関になってほしいです。
貴景勝より強いでしょ。





いただいたサポートは、大学院の研究生活に必要な経費に充てさせていただきます。