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学問は必ずしも発見された時系列順に学ぶ必要はない

こんにちは。風邪ひいているので文が雑ですが許してください。

僕はずっと疑問に思っていることがあります。
理工学の勉強では、大概理論などを発見された順に習います。

しかし、本当にその必要があるのか?と思うんです。
今日は具体例を混ぜてそれについて書いていきます。

まず、歴史通り学ぶと、現在は使われていない理論(エーテルのような否定された理論ではなく、単純に必要なくなった理論)を学ぶ必要があります。


例①有機化学の構造決定

大学受験において、有機化学の構造決定は結構ポピュラーです。

ある未知物質があって、そこに混ぜたり反応させたりしてどんな物質か当てるというものです。
こんな感じです。

キャプチdddャ

しかし、今ではこんな風に構造決定をすることは100%ありません。
昔はこうやって特定してたんでしょうが、今では、NMR、MS、IRのスペクトル結果、および元素分析で出します。

まあ確かに歴史通りに勉強すれば、大学受験の構造決定のほうを先に学ぶべきなのかもしれませんが、もう完全に使われていない化石の技術を教える必要あるのか…?と思わざるを得ません。
普通に現行の構造決定法を先に教えて、こういう古い技術はコラムレベルでいいんじゃないかな。


歴史通り学ぶのは実は難しい

というのも、歴史通り学ぶと、構造決定のような今では全く必要のないことを学ばなければならないという弊害以外にも、大変分かりにくいという弊害があります。

理論が発見された際、そのものに対しては何もわかっていない状態から生み出されたわけです。その状態を0とすると、0→1(発見された)→10(発展し、現在)という風に推移していきます。
この1→10の過程で、付随する様々な情報が見つかっているわけです。教わる人にとって、0→1の過程を経る際、この先人たちの1→10の過程で見つかった付随する様々な情報を足した方が分かりやすいんじゃない?ということです。

例②エントロピー

エントロピーってあるじゃないですか。
あれの元は、自発的変化の方向性を状態量として定義できないかという発想から来ています。
そして、dS=dQ/Tとして定義されるわけですが、いまいちピンとこないですよね。

そして熱力学よりはるかに後に生まれた統計力学で、以下の関係式が分かります。

画像2

これがあると、エントロピーとは乱雑さに関する状態量であるということが明確にわかります。

もう、熱力学でエントロピーを学ぶ際に、統計力学のこの式も一緒に覚えてしまっていいと思うんですよね。
そのほうがイメージつかめるじゃないですか。


当時革命的だったことは、必ずしも現在において革命的ではない

学問においていくつかブレイクスルーは存在します。
歴史順に学ぶと、そのブレイクスルーがどういう意味を持つのかが分かりやすいというメリットがあります。

例えば、普通古典力学を高校で学び、そのあと古典力学の理論が一切通用しないミクロ世界における量子力学を勉強しますが、これは量子力学が如何に革新的であったかを学ぶには大変重要だと思います。

しかし、カリキュラムの都合や、単純な理論の使えなさなどで、ブレイクスルー前の古い理論がとても古臭く見えたり、ブレイクスルー後の理論が現代的感覚だと当たり前すぎて感動しない場合もあります。


例③オブジェクト指向

プログラミング言語のうち、いくつかのものはオブジェクト指向と呼ばれる形態を持ちます。
オブジェクト指向というのは、システムを「処理の流れではなく、オブジェクト同士の相互作用」と捉えるやり方です。

これも昔はなかったもので、当時はシステムは「処理の流れ」で考えるのが一般的でした。「処理」と「データ」を完全に分離していたのです。
しかし実際にシステムを作ると、処理とデータは結び付いていて、オブジェクト指向のほうが都合がいいことが分かり、C++の爆発的普及を契機として広がっていきます。

大学でオブジェクト指向を習う際、システムを処理の流れで捉える考え方について丁寧に説明した後、「なんとシステムを処理の流れではなくオブジェクト同士の相互作用で捉えるんです!」というように習うんですが、現在広く用いられているプログラミング言語、例えばPython, Ruby, Java, C++, JavaScript, C#, 全部オブジェクト指向です。
誤解を恐れず言えば、オブジェクト指向以前に生まれたプログラミング言語はほとんど今は使わないんです。なのでシステムを処理の流れで捉える考え方そのものが古臭く、オブジェクト指向が現代的感覚だと当たり前といっていいです。

もうこれも、オブジェクト指向前のプログラミング言語なんてほんとさらっとだけ教えて、以降はオブジェクト指向をある程度前提として教えちゃっていいと思うんですよね。確かに今の教授とかにとってはオブジェクト指向は革命だったと思いますが、今からすれば当然といえるんです。








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