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助手席

私はね、
あなたが運転してる車に座ってるのが
すきです。

欲を言えば隣で。
もっと欲を言えば2人きりで。

密室だもの、
意識しないわけがないわ。

あなたの車の助手席。

昔は雨も梅雨の季節も好きじゃなかった。
でも最近はね、
あなたがいる時はね、

空が涙をこぼしますように。
ビショビショになるほど、
世界が潤いますように。
そうしたら
もしかしたら

あなたが車で送ってくれるかもしれない。

そんな事願っているの。
ずるいでしょう。
それほど居心地がいいの、

あなたの車の助手席。

運転席にいるあなたはね、
格好良い。
とても、
とても格好良い。

ハンドルを握ってる手
集中している横顔
そして、
こんなにも近いあなたの身体。

手を伸ばせば触れちゃう。
まったく。
不意にあなたの手に触れないように
どれだけ理性が必要か。

片手で運転して
横目で外を確認して

赤信号で止まると、たまに
甘えるように
ハンドルに顔を埋めて
上目遣いを使ってくる

そんなあなたが、
格好良くて
愛おしくて。

横を向いたらあなたが居ることが
嬉しいんです。

前、エドシーランを熱唱してて高速の出口を逃したね。
覚えている?

泣きながら相談に乗ってもらったことは?
笑いすぎてあなたが窒息しそうになったことは?
一度、昔の友達を道で見つけて、
道路際に車を止めて飛び出していったね。
Googleについて永遠と議論した事もなかった?
私がずっとあなたの隣でアニメを見ていたことは?
音楽を流して二人でノッていたことは?
ふざけて変なジョークしか言わない日もあれば、
すっごく真面目な顔して二人で話し合うときもあったね。

覚えている?

そんな事
忘れてしまっているかもしれない。

でも私は。
私はあなたと、
あなたの車で過ごした時間。

全部、
目の裏に焼き付いている。

今日雨ふらないかな、
って願ってる。

よく覚えてるね。
記憶力がいいんだね。
って褒めてくれるかもしれない。

でもね、違うんだよ、
あなたとの時間だからなんだよ。

忘れないように、
記憶から消えてしまわないようにって、
零れ落ちそうな記憶の砂を抱えて。

お願い、消えないで、
って。

普段は早く家に帰りたいのに。
送ってもらえる事になった時だけはね。

まだつかないで、
もう少しだけ。

このままここに居たい。

そう思ってしまう自分がいるの。

あなたが座る運転席。
その隣が他の人の定位置になる日まで。
あなたの大切な人の居場所になるまで。

たまにでいいから。
雨のときだけでもいいから。

あなたの隣にいたいです。

あなたの車の助手席に。

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