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歯医者嫌い

わたしは歯医者が嫌いだ

嫌いというより恐怖症にちかいのかも知れない。
小さい時、家のむかいが歯医者さんだった。

特に痛かった記憶もなかったがとにかく怖かった事を覚えている


次の診察日がとにかく怖かった


それから月日は流れ大人になった。

多少歯が痛くても我慢できる忍耐力はそなえていた。

だから明らかに歯に異常があっても歯医者にはいかなかった。
歯がかけて食べ物がはさまりやすくなっても、冷たいものがしみても
歯医者にはいかなかった。

忍耐でなんとかなると信じ続けた。
歯医者嫌いのおかげで、わたしは我慢強くなれたのだ。


■歯医者の何が嫌なのか


歯医者嫌いではない人や
何か異変があったらすぐ病院にいくタイプの人には理解されにくいので
歯医者嫌いのメカニズムを説明しておきたい。


麻酔をうってもらったら痛くないのは知っているし
医学の進歩で麻酔すらそれほど痛くはない。

歯医者の独特の臭いも
足を踏み入れなければ嗅ぐこともないので怖くはない。


何が怖いのか、、。




勇気をふりしぼって歯医者にいって歯を見せた時の

「うわ、なんでこんなにほっといたんですか?」とか

「うわ、これはひどい」という第一声

歯医者嫌いは虫歯があっても歯医者にいけない。
だから虫歯が普通の人よりひどい自覚がある。


これを言われるのが一番怖いのだ。
心がポキンと折れる音が聞こえる。

願わくば、ほんとうに何も言わずに治療を開始してほしい。
そう約束してほしい。

歯医者嫌いの歯は見ただけでわかるはずだ。
「この人歯医者嫌いやのに、勇気出して来たんやな」と
察してほしい。その思いを汲んでほしい。



人によってはマジであのドリルの音や臭いが怖いという人もいるだろうし
麻酔の注射でさえ痛いと思う歯医者嫌いもいるだろうが
こういうタイプの歯医者嫌いが多いと思う。


●歯医者に行くのに必要なのは勇気ではなくキッカケ


20歳くらいだったか
ある朝とんでもなく歯が痛くて目が覚めた。
そして直感した。

「これはほっといても治らん!」と


こうなってしまえば歯医者が嫌いだの、怖いだの言ってる場合ではない。


当時住んでいたマンションの近くにある歯医者にかけこんだ。
もう歯を見られてヒドい事を言われても構わない。
歯の痛みにくらべれば、そんなチッポケな心の痛みは無に等しい。


治療がはじまって、すぐさまわたしは麻酔をうたれた。


虫歯は下の奥歯だ。
しばらくすると下顎がぼんやりとしてきた。
今まで感じたことがない感覚。

わたしは下顎が麻痺していくのを感じながら
ようやく虫歯が治るという期待感と
麻酔に対する安心感を抱いていた。


治療がはじまる。


歯の神経を抜くと言われた。
よくわからんが、好きにしてくれと思った。


キーンという鋭い音ともに治療が開始された。


なるほど麻酔をしているおかげであまり痛くない。

、、、、あれ、少し痛い。気のせいか。
いや、少し痛い。


麻酔にたいする安心感が薄れていくのを感じながら
治療は進んでいく。


そして次の瞬間


わたしの奥歯に激痛がはしった。

五寸釘をうちこまれたような痛み。


確実に私は飛び上がった。

だがしかし医者さんは冷静に治療を続けた。

麻酔したのに痛かった。
しかも人生1の激痛(いたみ)


歯に詰め物をされて、その日の治療は終わった。


あまりに痛かったので、当時のバイト先で
麻酔したのにめちゃくちゃ痛かった事や
五寸釘を打ち込まれた話をしたら
「ヤブ医者なんじゃね?麻酔されたら普通は痛くないよ。」
と言われた。


ヤブ医者め、2度といくもんか


わたしの歯医者通いは、あっけなく1回で終了してしまった。



それからまた月日はながれ、25歳の時だったか
家でそうめんを食べた際、下の奥歯に再び激痛がはしった。

治療未遂とは反対側の歯だ。

またこの時が来たか。

わたしはすぐに別の歯医者にかけこんだ。


そして前の歯医者でこんなことがあった、という話をしたら

下顎の奥歯は人によって麻酔がききにくい、と教えてくれた。


ヤブ医者扱いした事を恥じた。


しかし過去を悔やんでいる場合ではない。
現在(いま)と向き合わなければ。


実際、上の奥歯は麻酔がよく効いたのでまったく治療は痛くなかった。
だがしかし問題は下の奥歯だ。

その歯医者でも麻酔をうってくれた。
痛かったら手をあげてください、と言われ治療がはじまる。

もれなく痛い。


麻酔を追加してもらって治療再開。
手をあげる。

をしばらく繰り返した。


たぶん5本くらい麻酔を打たれたが痛かった。

「君はほんまに麻酔が効かんな。」と
手をあげるわたしに医者さんが音を上げた。


結局痛いのを我慢して1時間ほどの治療を耐えたが
こんな地獄を経験するくらいなら、さっさと歯医者来ておけばよかった
とありきたりな事を思った。


その歯医者はがんばって通院した。


だがしかし、突然いくのが嫌になって完治せぬまま終わってしまった。

続く。

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