奈良クラブは真の地域密着型クラブとなれ


奈良をスポーツの力で盛り上げたい…

一見するととても耳障りの良いこの言葉ではあるが、よく考えてみると抽象的な言葉だと気付かされる。これは、Jリーグを目指す地域密着型スポーツクラブには必ずといっていいほどクラブの理念やビジョンに記されるのをよく目につく。それほど多用されるこの言葉であるが、それでは、具体的にどのようにしてそれをなされているのかがいささか不透明なところも多いように感じる。例えば、サッカーの試合に勝つことでスタジアムへ駆けつけたファンサポーターが盛り上がり、そして、そのファンサポーターの盛り上がりにsnsやその地域のマスコミが取り上げることによって、さらに、その地域に住む人達が盛り上がる。その盛り上がりがその地域の起爆剤となり、社会、経済、生活、その他方面で様々な発展によい影響をもたらしていく、というような理想をまずは思いつく。この理想を具体化するために各クラブで様々な取り組みがなされているが、特に予算が限られている地方クラブにとって、その理想と現実の間でどのようにして進めていけばよいのであろうか。

それではまず一つの目安として、各クラブの営業収益を見てみる。コロナ前である2019年の営業収益1位は神戸の114億円。その他の関西クラブはG大阪は8位で55億円。C大阪は10位で37億円。京都は20位で20億円。そして参考までに岡山は25位で15億円。琉球は35位で6.3億円。岩手は45位で2.6億円。(※FOOTBALL zone 参照)

2019年シーズンでJ2琉球は22チームで14位で終えており、営業収益での費用対効果は大変素晴らしいものであったといえるだろう。(岡山9位.J3岩手18位)一方で、奈良クラブの2022シーズン新体制発表会で今年度の営業収益は1.8億円(見込)との発表があった。来年Jリーグへ昇格して三郷町に新拠点が完成すれば、おそらくスポンサー収入が増えて今年度以上の営業収益が見込まれることを予想される。とはいえ、Jリーグへ参入しても営業収益から考えた場合には、J3リーグ優勝が最大の目標でありながらも、現実的にはJFLへ降格しないようJリーグへの残留が当面の現実的な目標といえる。そして、2030年頃ぐらいには営業収益をおよそ10億円にすると、これも新体制発表会で社長が目標を立てていた。この目標値ならJ2へ昇格してプレーオフ出場圏内の6位以内が最大の目標となっていくだろう。このように、営業収益だけを注視して見てきた場合、奈良クラブは他の関西4クラブには足元も及ばないのは明白なのだ。そのため主戦場をJ3もしくはJ2に身を置く奈良クラブとしては、Jリーグの試合の結果だけで奈良を盛り上げるのは、特に関西では非常に困難なことだと断言できる。そこで、奈良クラブの存在意義を確固たる地位へとするためには、昨今新聞などで取り上げられている中学部活動の地域移行へ積極的に事業として進めていくことだ。

これは、スポーツ庁が主導する公立中学校の運動部活動改革で、休日の部活動指導を民間スポーツ団体などに委ね、25年度末までに全国で達成すると目標を掲げる。地域移行に伴って生徒がスポーツ団体に会費を払うことも明記し、保護者の理解を得るよう努めることも求める。この地域移行は、少子化で危機に陥っている部活動の存続、土・日曜や祝日も指導に携わっている顧問教員らの負担軽減が狙い。総合型地域スポーツクラブが学校に指導者を派遣したり、校外の練習拠点に生徒を集めたりする形を目指す。態勢が整いやすい地域には、平日の移行も進めるなど柔軟な運用を推奨する。また、生徒が学校側に払う部費に加えて新たな負担が発生するため、施設利用料の減免、経済的に困窮する家庭への補助、企業の寄付などの解決案を示す。(一部読売新聞 記事併用)

奈良クラブとしての具体案は、三郷町の周辺中学校のサッカー部に働きかけ、まずは休日に新拠点のグラウンドと奈良クラブの指導者を提供する。態勢が整えば平日の移行も進める。生徒達からすれば、プロサッカーチームのクラブハウスと練習グラウンドを使用できる上に指導もしてもらえるのはとても魅力的ではないだろうか。それに、関西の他の4クラブとは違い、良い意味で生徒とクラブとでほどよい距離感があって親しみやすく、生徒達は部活動に専念できるのではないだろうか。そこで、もしこの部活動によって秀でた才能が花を咲きアカデミーへ選出されることがあればそれはとても素晴らしいことだ。たとえそうはならなくても、この部活動を通じて生徒達にサッカー指導だけではなくエコノメソッドの本質を分かりやすく伝えることができれば、生徒達のその後の人生の役に必ず立つのではないかと思われる。

この中学部活動の地域移行を事業として運用するためには、自治体の協力なくしては決して上手くいかないだろう。子育てのなかで「課金差別」という言葉を最近よく耳にする。これは経済的に裕福な家庭の子どもたちだけが、スポーツや教育などへ先行投資していくことでより専門性を身につけ、そうでない子どもたちのなかで実際に差別が行なわれていることである。そうならないためにも、先述したが施設利用料の減免、経済的に困窮する家庭への補助、企業の寄付などの解決案など国、都道府県、地方自治体、民間企業の強力が必須だ。そして、奈良クラブがこの地域移行の成功を皮切りにして、例えば各世代のサッカー教室以外にも、エコノメソッドと子育て、エコノメソッドとビジネス、エコノメソッドと社会参加、エコノメソッドとフレイル予防、エコノメソッドと認知症ケアなど、新拠点をキーステーションに、サッカー以外でも様々な観点から地域密着型生涯スポーツクラブとして地域貢献できるのではと期待している。その小さな成功例を積み上げていくことができれば、ESGでのスポンサー獲得への拡大にも繋がっていき、ひいてはJ3かJ2を主戦場とする奈良クラブの存在の意義を確固たる地位へ築くことができる。

そして、ようやく奈良がスポーツで盛り上がることができるのだ。












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