2022年 6月19日 FC神楽しまね 0-1 奈良クラブ 感想


17分、右CKからST山本選手がゴール!


今期初めてコーナーキックからゴールを奪った。長かった。本当に長かった。この瞬間まで長かった。もう、今期はCKからゴールが入らないのではないかとすら考えたほどだ。もちろん、1年間を通して戦う長いリーグ戦においてそんなことは起きるはずもないことだが、ここまで待たされると、どうしてもこのような気持ちになってしまう。それは仕方がない。それでは、これまでの過去の試合のCK数をここで改めて見てみると…


滋賀2 Honda2 青森3 大分4 岡﨑2 三重3 新宿4 高知8 Honda0 武蔵野9 FC大阪5 ロック2 しまね10

合計は54本とあり、CKゴール率という数字があるのであれば1/54というのは計算すると1.85%となる。どうやら調べてみると、CKゴール率はおよそ10%ぐらいであるらしい。ということは、10%に対してこの1.85%という数字は、誰がどう考えても低いということに残念ながらそうなってしまう。10%という数字を鵜呑みにすることはできないが、数字上の計算式では、少なくても後5本はCKからゴールが生まれていても何ら不思議ではないということになる。過去の試合のCK数をもう一度見てみると、この試合に次いで多いのは武蔵野戦の9本である。ホームで手痛い敗戦を喫してしまった武蔵野戦ではあるが、以前のnoteでも書いたように決して悲観的になるような悪い内容ではなかった。それだけに、もし武蔵野戦でCKからゴールが決まっていればおそらく敗戦はなかったのではないかと思われる。無論、今更タラレバの話は無意味なのは承知の上だが…

というように、奈良クラブはCKを含むリスタートからのゴールがあと数本決まっていれば、現在首位に立っていたことは間違いないのである。JFLではどこのチームも守備力が非常に高い。ましてやそんなチームからゴールを奪うことはとても困難なことである。世界的にみても現代のフットボールにおいてリスタートは4局面以上に最重要課題となっている。とはいえ、リスタートを強化することは一朝一夕にはいかない。選手たちの日々の練習の積み重ねでしか強化することはできない。この試合を起爆剤として、これからCKゴール率をどんどん上げていってもらいたい。そして、これからの上位対決では、きっちりと勝ち点を積み上げていってもらいたい。それが優勝するための最優先事項だろう。

それでは、この試合について考えてみる。この試合の特徴を簡単に説明すると、前半と後半とで両チームの状況が大きく異なったといえるのではないだろうか。なぜそうなったのかを5つに分けて述べていこう。まず1つ目は風向き。前半は風上で後半は風下となった。公式記録では風は中とあるが、画面越しでとても中とは思えないような印象だった。試合を見返してみればこのことがより鮮明に分かると思うが、風上の前半はロングボールが風にのって真っすぐに伸びて、そこからいくつものチャンスへ繋がっていた。一方で、風下となった後半はクリアボールが風の影響で押し戻され、セカンドボールをしまねに奪われピンチを招くシーンが少なくはなかった。風向きに関してはあまり詳しくないのでこれ以上は述べられないが、前後半で両チームの状況が大きく異なった1つの要因であることは間違いないだろう。

2つ目は球際の競り合いだ。この試合の競り合うシーンをここでピックアップしてみると…


2分、相手スローインを右SB都並選手がカットしCH森田選手が収める

6分、センターライン右サイド付近の密集後に左SB13番が抜け出すもCH森田選手がカットしタッチラインへ 

7分、クリアボールにセンターサークル奥付近でFW18番に右CB伊勢選手が競り勝つ

9分、左CKのクリアボールにゾーン3手前付近でFW24番にCH森田選手が競り勝つ こぼれ球を左CB寺村選手がバックパス

13分、相手陣内右サイドの密集後のクリアボールをFW18番に右CB伊勢選手が競り勝つ

13分、センターライン付近左サイド FW24番インターセプトもCH森田選手がカット こぼれ球に左CB寺村選手が収めるもFW18番が詰め寄りファール

19分、CH森田選手がボランチ19番にカットされ右SH11番からFW18番にスルーパスも左CB寺村選手が寄せて防ぎ接触し倒れるもこぼれ球を後方の右CB伊勢選手が収める

20分、センターサークル手前付近で相手のクリアボールの浮き球に対してCH森田選手が高技術のワンタッチプレーで最終ラインへバックパス

22分、センターライン手前右サイドで右WG金子昌選手が左SB13番と接触し倒れ込むもタッチラインへ割る

25分、相手GK30番のロングボールからCH森田選手が収める

33分、FW18番のボールに左SH10番とCH森田選手が競り合い接触倒れ込みファール

35分、右SH11番に左SB加藤選手が詰め寄りこぼれ球をCH森田選手が回収

39分、左CB寺村選手が前へ出て競り合う こぼれ球に左SB加藤選手が回収GKアルナウ選手へ その後相手ボールになるも左CB寺村選手がカットしタッチラインへ

40分、センターライン右サイド奥 FW18番に対してCH森田選手詰め寄り潰す その後回収

43分、ゾーン3右サイド付近でリスタートからのクリアボールに中央まで前へ出て右CB伊勢選手が詰め寄りパス

62分、相手プレス強いなか、GKアルナウ選手のロングボールを左ボランチ8番がカットし左SB13番が収めたところをCH森田選手がインターセプト

64分、相手陣内右サイド深くで相手のリスタート。ゾーン3付近でFW24番に右CB伊勢選手が頭でカット

67分、相手クリアボールを相手陳内中央でCH森田選手が収める

71分、センターライン手前右サイドでFW24番に右SB都並選手が激しく詰め寄る 右WG桑島選手がこぼれ球をキープ

76分、自陣ペナ外左サイドで左SB加藤相手が頭→左WG長島選手→ST山本選手→レイオフでCF浅川選手→最終長島選手が収める

76分、右SB11番にCH森田選手と左WG長嶋選手が取る

77分、センターライン付近左サイド11番16番17番に左SB加藤選手→左WG長嶋選手→CF浅川選手が収める

87分、自陣センターライン手前中央で相手からCH森田選手が競り勝つ


この他にもいくつか取りこぼしが多数あるとは思うが、このようにピックアップしてみた。このピックアップした事例を前半、後半で分けて数字で表してみると、前半は15回で後半は8回となった。重ね重ねこの数字は正確性が乏しいと思われるので、ここではかなり大目に見てもらいたいのだが、球際の競り合いに前後半で倍近い数字となっているということは、前後半で両チームの状況が大きく異なった要因であることに間違いない。特にここで素晴らしい活躍をしている選手なのが、CH森田選手である。前節のホンダロック戦では彼の出場がなかったことでボールを収められなかったことは、この事例を見てみるとよく分かるのではないか。彼の存在は奈良クラブにとって、もはやなくてはならない存在であることはここで言うまでもない。まさに攻守の要だ。

3つ目は奈良クラブの最終ラインの位置取りについてだ。先程のピックアップした事例をもう一度見てみると…


7分、クリアボールにセンターサークル奥付近でFW18番に伊勢競り勝ち 最終ライン高い

9分、左CKのクリアボールにゾーン3手前付近でFW24番にCH森田選手が競り勝つ こぼれ球を左CB寺村選手がバックパス

13分、相手陣内右サイドの密集後のクリアボールをFW18番に右CB伊勢選手が競り勝つ

13分、センターライン付近左サイド FW24番インターセプトもCH森田選手がカット こぼれ球に左CB寺村選手が収めるもFW18番が詰め寄りファール

19分、CH森田選手がボランチ19番にカットされ右SH11番からFW18番にスルーパスも左CB寺村選手が寄せて防ぎ接触し倒れるもこぼれ球を後方の右CB伊勢選手が収める

43分、ゾーン3右サイド付近のリスタートからの相手のクリアボールに中央まで前へ出て右CB伊勢選手が詰め寄りパス

64分、相手陣内右サイド深く相手リスタート。ゾーン3付近でFW24番に右CB伊勢選手が頭でカット


このように、前半に奈良クラブの左右CBの寺村、伊勢選手が高い位置で球際を競り合ったり、ボールを収めているのが分かるだろう。彼らが高い位置でボールに触れられているということは、奈良クラブがしまね陳内に押し込んでいる証拠である。しかし、左CB寺村選手については、時折2CBであるのにも関わらず相手陣内まで駆け上がることもしばしば見かけるので、参考にならない嬉しい誤算もあるが…

しかし、一方後半では…

56分のシーン
(番号反映せず)

56分、しまねの左サイドのカウンターに対して最終ラインがずるずる下がる 右サイド深い位置からのリスタートを与える

63分、71分、プレスにST山本、左WG長島選手の2人の寄せが甘く左サイドへ簡単に大きく展開されると最終ラインがずるずる下がる ペナ内に相手3人が進入 右CB伊勢選手が頭でクリア

後半ではしまねが意図していたかのように、しまねのサイド攻撃が、特に左WG長島選手の背後を中心として何度も進入するパターンが数多く見られた。そのため、奈良クラブの最終ラインがずるずると下がってしまうケースが発生しているように見えた。いずれも最終的には決定的な場面を与えていなかったので、ここでわざわざ取り上げる必要はなかったかもしれないが、今期JFL優勝を掲げている奈良クラブにとってこの課題を軽視することはできないだろう。

4つ目はしまねのプレッシングである。後半では、47、48、50、51、52×2、55、57、58、59×2分、77分としまねの前線5人が積極的に奈良陳内へ進入してアグレッシブにプレッシングを仕掛けてきた。このことも前後半で両チームの状況が大きく異なった要因であることに間違いない。59分以降にしまねのプレッシングがある程度収まったのは、GKアルナウ選手がロングボールを選択したからだ。しかし、先述したように風下となってしまったためにロングボールのコントロールが難しく、そのボールをしまねに収められるケースも度々あった。

5つ目は、前節のホンダロック戦が月曜日のナイトゲームだったことも、ホームで連戦のしまねとはコンディション的には少しハンディキャップがあったのかもしれない。そして、後半の終了間際ではまたしても落ち着かないケースが見受けられたからだ。


87分、相手のカウンター後左CB寺村選手のクリアボールにCF浅川選手が頭で前へ運ぶ フリアン監督が両手を上げてジェスチャー タッチラインへクリアしろ!なのか逆サイドへ蹴れ!なのか不明


このように、前節ホンダロック戦からの課題であった試合の終わらせ方について、この試合でも少なからず疑問が残る結果であった。サッカー選手はピッチ上で心拍数170を超える極限状態のなかで90分間プレーすると聞いたことがある。そのため、疲労から判断が難しくなることもあると思われるので、勝っている終了間際では何を最優先するのかを、ピッチ内外で声を出し合うなどしてしっかりと共有してほしい。この辺りも今後は必ず克服してもらいたい。

以上の5点が、前後半で両チームの状況が大きく異なった要因だったのではないだろうか。もちろん終始90分間において相手を圧倒できることに越したことはない。とはいえ、奈良クラブはこの試合の全体を見たとき、特に攻勢を強めた前半でとても素晴らしい攻撃がいくつもあった。

16分のシーン
(番号反映せず)

16分、左CB寺村選手がFW18番をかわし前へ運ぶ 相手2人の背中を取る 相手の最終ラインは左から右へ振られるも右ポケットスペースあり 寺村選手→右SB都並選手→中へいた右IH片岡選手へ 片岡選手が最高のスルーパス→右WG金子昌選手が右ポケットでマイナスのクロス CF浜田選手合わず ST山本選手、左WG長島ペナ内へ進入 この後CKでゴール

24分のシーン
(番号反映せず)

24分、FW24番と18番がプレス GKアルナウ選手に24番が食いついたところを→自陣中央フリーのCH森田選手へ早いパスで渡る 相手2人背中取る フリックでパス→フリーST山本選手がセンターライン付近左サイドで斜めからターンして収める 4人背中取る ボランチ19番寄せるも前へ運び左WG長島選手が→走り込んできた大外の左SB加藤選手へ渡る 加藤選手が左ポケットまで進入してマイナスクロス→股抜きも山本選手へ合わずゴールラインへ割る 

25分のシーン
(番号反映せず)

25分、相手GK30番のロングボールからCH森田選手が収め一気に右WG金子選手へスルーパス 6人背中取る 右SB都並選手→右IH片岡選手→CH森田選手→左SB加藤選手へと右から左へと大きくサイドを揺さぶる 加藤選手のミドルクロスにST山本選手がペナ左外で頭でシュートもGK弾く

60分のシーン
(番号反映せず)

60分、相手プレス強いなか左CB寺村選手から大きく右SB都並選手へ 6人背中取る 前へ運び右WG金子昌選手へ 左SB13番と左CB28番の2人が左サイドへ引張られる 金子選手ペナ外側でクロス 空いたスペースに走り込んだフリーの右IH片岡選手のシュートもGK30番にスーパーセーブで弾かれる


このように、1本のパスでしまねの選手の背中を取っているのが分かるだろう。このような素晴らしい攻撃とリスタートが合わさればこれからも必ず勝ち点を上げ続けられる。後はCFのゴールを期待するところだけである。そして、しまねも前半はおされている印象が強いかもしれないが…

23分のシーン
(番号反映せず)

23分、ヘディングでボールが行き交うなか、右CB3番が前へ飛び出しボールを収める 左WG長島選手が競り合うも左CB28番バックパス→フリーのボランチ8番ターン 前方スペースあり 右WG金子昌選手が詰め寄るも8番が脚を出し賢明にスルーパス→右IH片岡選手が回り込みCH森田選手と挟み込むも左SH10番が最終ライン裏へスルーパス 左右CB寺村、伊勢、右SB都並選手にブロックされ、伊勢選手が寄りFW24番18番に合わず

29分のシーン
(番号反映せず)

29分、左CB28番からのロングボールに中央で収められ左サイドへ展開される


このように、前半もしまねは奈良クラブのプレスを回避して速攻を巧みに仕掛けてきていた。そこから、今度は37分〜38分にかけて最終ラインで自分達のペースへ持っていこうとあえてボールキープしていた。ここの何気ないプレーから、実際には前半の終了間際で奈良クラブからしまねへ試合の流れが変わっていき、先述した後半からのアグレッシブなプレッシングによって、完全にしまねがこの試合の主導権を握られてしまった。とはいっても、勢いに乗るしまね相手に、サイド攻撃で中盤を突破されることはあったものの、最終的にはペナ内で危ない決定的なシュートチャンスをほとんど作らせなかったことは素晴らしかったと褒めるべきではないか。そして、難しいアウェーで勝ち点を積み上げていけたのは本当に誇らしい限りである。しかも連勝である。この連勝はチームにとってもクラブにとっても自信に繋がってくるだろう。順位も首位との勝ち点差が3の4位だ。この勝ち点差ならJFL優勝も十分に射程圏内である。我々は優勝と昇格を絶対に勝ち取らなければならない。これからの奈良クラブも楽しみで仕方がない。

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