2022 3 27 奈良クラブ 0 vs 0 ラインメール青森FC 感想


面白くない、つまらない、スカッと勝ちたい…

といった感想をtweetでよく見かけた。私はこの試合を早送りや切り取りながら、だいたい5試合分ぐらいは見たと思うが、そんな私のこの試合の感想としても、やはりこの試合をざっくりと簡単に言えば、面白くなっかたといえる。もちろん、面白い面白くないといった感想はあくまでもその個々人の主観であって、どっちが正しいとかどっちが誤りだという議論は意味を持たないにしても、この試合は面白くないと言われても誰も否定の仕様がないと私は考える。ではなぜ、この試合をそうさせたのかその原因を3つのポイントに分けて考えてみる。

1つ目は、シュート数の少なさだろう。それでは、この試合のシュート数を見てみると奈良クラブは前半1本、後半1本の合計2本である。一方、青森は前半は6本だが後半は0本だった。ようするに、サッカーの試合で特に良い印象や悪い印象がよく表れる後半で、シュートシーンがたった1回しか訪れなかったのが、後者の印象を植え付けさせてしまった原因だろう。そんななか、遠目でもいいからシュートを打つべきだ、シュートを打てば偶発的に何かが起きるかもしれない、といった感情をよぎることもあると思う。しかしそれは、守備側がリトリートして最終ラインも低い位置で下がってブロックを作っていて、押し込んでいる攻撃側が、そのブロックの外周だけで繋ぐパスを余儀なくされる局面が多かったのであればそれも頷ける。だが、この試合ではそういった局面は少なかったので、その思考はこの試合においては少し違うのではないかと私は思う。

2つ目は、60分過ぎてから両チームのGKやCBが、お互いロングボールを蹴り合うシーンが多かったからだろう。しかも、そのロングボールから効果的な攻撃へとほとんど繋がらず、何の期待感もない蹴り合いを60分過ぎてから見せられては、つまらないといった感想を持たれても仕方がないと思う。青森のビルドアップについは前回のnoteで書いたように、前節同様後方から繋いで前進するといったことはせず、左右に正確に蹴り分けるGKが質の高いロングボールを蹴るという設定だった。しかし、一方の奈良クラブは、青森の、時には前線5人が強度の高いプレスをそれまでかけ続けられていたために、60分過ぎから明らかにその青森のプレスの勢いが弱まっていたのにも関わらず、その状況の認識を見誤り、青森に付き合う形となってしまった。これも前回のnoteに書いたことだが、本来なら60分過ぎから、奈良クラブは後方からしっかりと繋いで前進させるべきだったといえる。

3つ目は、79分頃にロングボールがゴールラインを割った後に、743人という観客者数が発表されたからだろう。

以上のようなことが、おそらく多くの人が面白くないと感じ取ってしまった原因と考える。それ以外でも私的に面白くないと思ったのが、右サイドの攻撃が左サイドの攻撃と比べて上手く運べていないことだ。試合後フリアン監督が指摘していたように、奈良クラブのビルドアップの時に、IHが下がり過ぎているため前進出来ていないというのがあった。

特にこれが形となって現れたのが10分と15分。当然青森のプレッシングが強いために、IHの重心が後方に傾いて下がらざるを得ない状況だったからだと思う。しかし、右IHの可児選手はおそらく最終ラインのビルドアップのフォローもタスクに含まれていると思われるので、それが目立つのは仕方がないのかもしれない。もう少しそこを意識して体力的に厳しいところではあると思うが、可児選手ならその上下運動を効果的に走り分けられると思うので、次節ではそのゴールとなる起点を多数作りあげ、そして後方からダイナミックにシュートしてゴールも奪う、そんな勇姿を試合開始から期待したい。その指摘以外にも右サイドの攻撃が上手く機能していない大きな原因の一つが、右SBの都並選手だ。

この試合の都並選手の特に攻撃時のパフォーマンスには少し懸念を抱く。

1分、縦にドリブルして右WGとワンツーもボールロスト。その後に取り返し右サイドで受けるも中央下へバックパス。

7分、左CBから左SBへ前方左WGがレイオフしてボールを受け右サイドに右WGへロングボールを出しサイドチェンジ。右SB深く入るもその後ずるずる下がり2回バックパスし最終ラインへ戻す。

34分、中央付近からポジトラ後中央をドリブル突破。攻撃の根を断とうとする青森は2人囲むが引き付けて右SBへ。そして右WGへ出し右SBへ折り返すもその後最終ラインへ戻す。その後左サイド深く進入するもゴールラインへ。

38分、左サイド裏ロングボール入れ流れて右SBがボールを受け取り中央後方からクロス。右サイドへサイド展開しても良かった。

45分、センターサークル付近から右サイド深く右WḠ受けるもそこからIH→右SB→最終ラインへ戻す。

56分、右サイド深くまで進入するもバックパスを続け最終ラインへ戻す。

可児選手と同様に都並選手も左サイドとは違って、より最終ラインのフォローに強いタスクが存在するのだろうと推測する。しかし、この試合では都並選手のバックパスが目立っってしまったのがどうしても面白くない印象を私は感じた。だからこそ、81分に都並選手から交代した田中選手の、相手GKからの低めのロングボールをダッシュしながら右サイドでボールを奪い、そのまま縦にドリブル突破して右ポケットへ駆け上がったシーンが対象的でとても象徴的だった。もし都並選手のコンディションに何か異変のようなものがあるのなら、次節は自分自身やゲームの流れを客観視して分析するためにも、田中選手をスタメン起用するのもよいのかもしれない。

ここでは、あえて都並選手の攻撃面での懸念を書いたが、守備面でのよかった場面も付け加えておく。

9分、12分、32分 45分、68分、72分、相手のGKの右サイドへのロングボールに対して右SBがしっかりとカバーする。

72分、右SB高い位置まで上がり相手を潰す。

右サイドの攻撃以外にもこの試合で面白くないと感じたのは、低調なクロスと効果的ではないロングボールが多く見られたことだろう。5バック相手で重要なのは、最終ラインをいかにして前後左右に揺さぶりをかけ、その強固なブロックにスペースを作り出し、ライン間へ割って入ってシュートを打てるかだろう。そのためには、両IHが高く位置しそこを起点とすることで相手の中盤を引っ張ることと、両サイドをしっかりと幅を取って、そこから起点を作ってWBを釣り出すこととが一般的だ。それが出来て初めて精度の高いクロスやロングボールが効果的になってくる。そして、ようやくシュート数が増える。面白い試合となるのはこの過程が絶対必要不可欠だろう。

ここでは面白くない感想ばかり書いてしまったのでよかった点も取り上げてみる。それはこの試合も無失点だったということだ。前節の青森は、2点をリスタートから共にゴールを奪ってきた。しかし、この試合の奈良クラブはリスタートからゴールを奪われなかった。昨年からの地道な練習の積み重ねが実を結んでいるのは間違いない。これは本当に素晴らしいことだ。それと、奈良クラブのプレッシングが非常に効率的に行えていることだ。このプレッシングは青森のような派手さはないが、70分過ぎから明らかに運動量が落ちる青森のプレッシングよりずっといい。これは前線や中盤や最終ラインの選手全員が連動して、設定通りに取りどころでボールを奪い取れているからである。

長いシーズンで優勝するには絶対的に守備を安定させることは命題だ。そのためにリスクを最小限に抑える選択を優先する判断は致し方がない。その感覚はピッチで戦っている選手にしか分からないからだ。とはいっても、ホームではやはり勝利が必要だ。そのためには、リスクを追ってでもシュートチャンスが多数生まる分厚い攻撃を仕掛けることが必要だ。それが出来れば、誰もがワクワクする面白い試合へと変貌する。ゴールを奪えればそれはなおさらだ。次節以降も面白い試合をぜひとも期待したい。

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