2022年5月1日 奈良クラブ 2-2 クリアソン新宿 感想


新宿が勝たなければいけないゲームだった…

これがこの試合の1番の感想だ。そう思うぐらい新宿のゲームプランや戦術的なことなど、66分に奈良クラブから1点目のゴールを奪われるまでは新宿のペースそのもののだった。立ち上がりこそは前線からプレッシングをかけたが、その後は私の予想に反して、最終ラインも下がり気味に位置取り、プレッシングも少し後方から待ち構えて、開始早々に奈良クラブから失点することがないよう試合を慎重に進めていた。しかし、その消極的にも取れる新宿の姿勢が裏目に出て、トランジションやロングボールなどセカンドボールのそのほとんどが奈良クラブに奪われ、新宿の自陣深くまで押し込まれ、序盤であはや先制点を奪われかねない危ない展開を招いてしまった。これは慎重さもあったかと思うが、おそらくはこの試合から4日後の青森戦のことも考えてのリスクマネジメントの結果だったのかもしれないが、このままではいけないと判断したことが結果としてこの試合を有利に進めることができた。

15分にCFの35番の前から行くぞ!というサインが出るやいなや、前線から積極的にプレッシングをかけていき、その呼吸に合わせ最終ラインもハイラインに上げてきた。そのハイプレスの甲斐あって、奈良クラブの最終ラインが上がれず中盤にスペースが空き、そこからボールをカットできるようになって、ポジティブトランジションでセカンドボールを奪えるようになった。さらに、奈良クラブのロングボールの対応も、ハイラインでオフサイドを取ることによって何度も防ぐことに成功していた。そのよい流れから、オフサイド後にGKから素早く繋いで奈良クラブのミスを誘発させて、先制点を奪うことに成功した。

先制点を奪ってからはしばらく奈良クラブ陣内で攻勢を続けていたが、その後は再度ハイプレスを抑えペース配分に気を付けてクレバーに戦っていた。そうすると48,50,60分と奈良クラブがビルドアップで自陣深くまで押し込まれる展開が多くなってきた。しかし、奈良クラブの最終ラインの連携の乱れに乗じて、ショートカウンターでさらに追加点を奪うことができた。このまま攻撃ではカウンターを主体として攻めていき守備に重心をおいて上手く時間運びができてさえいれば、立ち上がりの慎重さが裏目に出たこと以外では、まさに新宿としては試合前のゲームプラン、オーガナイズ通りの理想の展開になっていたはずだ。

だが、そうはならなかった。76分に奈良クラブのCFの浅川選手と右IHの片岡選手が、新宿の最終ラインの虚を突いてゴールを奪われてしまった。これは新宿のちょっとした気の緩みから生まれた失点だ。しかし、新宿のこのちょっとした気の緩みの原因こそが、絶対に勝たないといけないという強い気持ちを、新宿には見えてこないことと繋がっているように感じる。サッカーでは2-0のスコアがリードしている側にとって1番怖い展開だとよく言われる。それを証拠に、先日行なわれたUCL準決勝の2ndレグがベルナウで行われたが、総得失点で2点差をつけたマンチェスター・シティが89分まで勝っていたのにも関わらず、90,90+1分で立て続けにゴールを許し、延長戦でレアル・マドリードに決勝点となるPKで敗れてしまうほど2-0のゲームは怖いのだ。新宿の選手もおそらくそんなことは百も承知だろう。しかし、それでも尚このような気の緩みで失点してしまったのは、これから先JFLで戦っていく上でこのことはとても重要なことだと感じる。結果的にこの1失点で奈良クラブの息を吹き返す原因を自らが作ってしまい、87分の奈良クラブのパワープレーに屈してしまって勝ち星が消えてしまった。

このように、新宿からしてみてみれば本当にもったいないゲームだった。一方で奈良クラブとしては、ゲームプランや戦術的なところでは完全に負けていた。それではなぜこの試合では負けなかったのか。それはゲームプランや戦術的なことどうこうを超えた、奈良クラブが今まで歩んできたクラブの歴史が新宿のそれより上回ったからに違いない。1得点目も2得点目もまさにそれが表されていた。ホームで絶対に負けてはいけないという強い気持ちが同点へと繋がった。この負けなかったことに私は選手に感謝したい。ここで新宿に負けていれば、おそらく今期の奈良クラブにとって本当に大切なものが泡となってなくなってしまっていただろう。

ちなみに、昨年のいわきFCも8引き分けで優勝している。奈良クラブはまだ4引き分けだ。数字の上ではまだまだ優勝のチャンスがなくなったわけではない。週末の天皇杯では天理大学にきっちりと勝ってチームに勢いをつけて、次節のアウェイ高知戦で必ず勝ち点+3を挙げて奈良へ帰ってきてほしい。

まだまだ奈良クラブはこれからだ!

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