その日、朱音は空を飛んだ#読書感想文その3
○まだまだ!!
読書感想文、第3弾をお届けしたいと思います、暦です!
毎回毎回、読書感想文にスキやコメントなど、本当にありがとうございます。まだまだがんばります!
第3弾でご紹介するのは、、
「武田綾乃著・その日、朱音は空を飛んだ」
青春小説界のニューエース、武田綾乃さんの作品です!
え、武田綾乃さんといえば、「響け!ユーフォニアム!」じゃないの?と思う方も多いと思いますが、ぼくはまずこちらをおすすめしたいです!
最近では文庫化されたこともあり、より注目を集めているであろうこの作品。
スマホやSNSなどが数多く登場する、
いわゆる"今どきの一冊"なのではないでしょうか!
ニューエースと勝手に言いましたが、武田綾乃さんが描く小説は、まさしく我々が生きてるこの時代のド真ん中を駆け抜けています!
つまりめちゃくちゃ読みやすい!!
若者の読書離れを食い止めるにいたる作品とさえ思っています!
○あらすじ
タイトル通り、朱音という高校生が飛び降り自殺をした数日後の話。7人の朱音と同じ高校に通うそれぞれの立場(友達、彼氏、ただのクラスメイト等)の同級生が、彼女の自殺の前後について想起することで、彼女の自殺の真相が少しずつ見えてくる短編形式のストーリー。
視点も変われば考えも変わる。
彼女の自殺によって、少年少女達の"高校生活"という名の"世界"が揺らぎはじめる。
朱音が"世界"に求めていたものとは?
ワクワクしませんかこれ!!!
朱音が飛び降りた。この事実は揺らがないわけです。
でも語り部によって、まったく違うストーリーを見ているような感覚になります!
その日、朱音は空を飛んだ。そして、、、
↑この「、、、」の部分を楽しめるかと思います!
○注目ポイント3選
さて!物語を読む上での個人的な注目ポイント!
今回は3つ!上げさせていただきます!
1.自殺のナゾ、残されたヒント
朱音が自殺したことはたしかに揺らがない事実。しかし朱音の自殺には、いくつかのナゾが残されています。
そりゃまあ「なんで自殺したの?」という根本的なナゾもありますが、そうではなく、もっと断片的なナゾと、それに対するヒントが散りばめられています。
ぼくが個人的にまとめた、ぞわぞわくるナゾは
こちらの4つ!↓↓↓
①自殺の瞬間の動画
②北校舎屋上の鍵
③朱音の手紙
④朱音の交友関係
一個ずつ簡単に解説いたしましょう!!
①自殺の瞬間
朱音の自殺は、目撃者もいたことから瞬く間に学校中で有名になります。朱音が空を飛んだ次の日、すぐに緊急の善行集会が開かれたほどでした。
しかし朱音の自殺が有名になったもう一つの理由。それが、自殺の瞬間を捉えた動画がSNSにアップされたこと。
「朱音!」という叫び声→落下音→悲鳴
↑わずかこれだけの動画ではありましたが、そりゃあ衝撃的な映像ですから。あっという間に他校の生徒にまで知れ渡るほど有名になりました。
今の世の中、SNSを全くやってない人の方が珍しいほどですものね。
もちろん撮影者不明。
②北校舎屋上の鍵
朱音が飛び降りたのは、学校の北校舎の屋上でした。でもこれ、おかしいんです。
北校舎の屋上は閉鎖されていて、鍵を持っているのは用務員さんだけ。つまり、本来は朱音に限らず誰であれ、北校舎の屋上にはいけないはずなんです。
しかも朱音の自殺後、この鍵は"朱音のクラスメイトの自宅のポストに投函されている"という形で発見されます。
後述する朱音からの手紙と同内容のことが書かれている手紙に、鍵は同封されていました。
ちなみにこの手紙がポストに投函されていることに気づいたのは、そのクラスメイトのお母さん。朱音が自殺した次の日に、ポストに入っているのを見つけたそうです。
③朱音の手紙
自殺当日、朱音は学校を休んでいました。しかし
6時間目の移動教室後、クラスのみんなが教室に戻ってくると、女子生徒ほぼ全員の机の中に、朱音からの直筆の手紙が入っています。
内容は「今日の放課後、北校舎の屋上に来てください。来てくれないと、私たぶん死ぬから(笑)」というもの。
そしてこれまた朱音直筆で、花の絵が描いてあるカードまで入っていました。
④朱音の交友関係
朱音はつい2週間前、自分から告白して彼氏ができたばかりでした。イジメを受けていた様子もなければ、遺書もない。
県内屈指の進学校でありながら、制服は着崩し、ネイルに髪染めに、、と、かなり派手な装いをしていた子だったようです。
↑↑↑めちゃくちゃ謎めいてますね!!
朱音は自殺する前に、どうやらなにかしらのアクションを起こしているようなんです。しかしこれらの点と点がなかなか結びつかない!
自分から告白して彼氏ができた、幸せ絶頂期に自殺?
しかも自殺当日学校は休んでるのに、女子生徒たちの机に手紙を入れに来ている?
そのうえ自殺の瞬間を何者かが撮影?
さらにあるクラスメイト宛の手紙がポストに投函されたのは、朱音が空を飛んだ次の日。
え、怖。
ホラーじゃん。
しかしこれがですね、点と点が結びつくんですよ!結びつく時の線の動きがほんとにダイナミック!単に直線でなんて結びつきません、それはもうトリプルアクセルからのトリプルトーループを決めたときの羽生選手ばりの軽やかかつひねりを加えた結びつき方をします!!
読み応えバツグンです!!
2.今の時代だからこそ!
冒頭でも言いましたが、この小説、まさしく現代が舞台なんです。
スマホやSNSが鍵を握っています。
だからとにかく新鮮で、なにより身近!
SNSで情報が行き来するこの時代、憶測が憶測を呼び噂に噂が重なり、真実という核を見るためには噂で作られた上着を何枚も剥ぎ取らないといけません。
しかしまず、自分に入ってきた情報が本当に真実なのか、それとも噂が真実っぽい顔をして現れただけなのか、その見分けがつかないのではないかと思うわけです。
朱音の自殺を一夜にして学校中に轟かせたSNSの動画。この時代において、SNSに個人情報を流出されるほどのホラーなんてまあ存在しないのではないでしょうか。
さすがはニューエース武田綾乃、時代に即したホラーをぼくたちに容赦なく見せつけてきたな、という印象です!
3.タイトル見せが鮮やか!
こちらの作品、プロローグとエピローグを省くと7章あるんですが、全てにおいてタイトルが章の終わりに明らかになります!
斬新ですよね!
さすがニューエース!(本日2回目)
あとになってからタイトルを見ると、なるほどもうこの章にはこのタイトルしかない!と納得させられるだけの「ばっちりハマった感」があります。
つまり1章ごとの文を、タイトルというわずか1行で表現しきるわけです!そのテクニックたるや鮮やかとしか言えません!
「この章ってどんな話?」
と聞かれたら
「○○ってことかな」
と、そのタイトルを言っちゃえば1発で伝わるようなタイトル。そして後出しされたタイトルは物語を表現するだけでなく、その章に新たな捉え方を与えてくれます。
まとめるだけでなく、「あれ、もしかしてこんな意味も込められてた?」とさらなる考えをくれる。後出しにすることで、この本のミステリ感をより引き上げているように思います。
○総評!!!
総評というか、今回のまとめ!
今回の作品の感想を一言で言うと、、、
青春とホラーは紙一重!!!
まあこれに尽きるでしょう!
青春らしい青春を送ってこなかったぼくが言うのもなんですが、青春とは人生で1回しかないとても素晴らしき毎日!
しかしそんな時だからこそ、素晴らしき日々の影に隠れて、ホラーが動き出すわけです。
なんてったって青春は輝いてますから!
輝いた青春の光でできた自分の影で、ホラーの真っ黒さがよく見えなくなってたりするのかも、、なんてね。
さて、長くなりましたが本日はここまで!
この記事を読んでくれた方々に、なにかしらいいことがありますように!
次回もここ、noteでお会いしましょう!
暦でした。
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