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toB SaaS でカスタマーサクセスをゼロから始めてわかった取り組むべき3つのこと

 HERPの原(@zn1south)です。カスタマーサクセス Advent Calendar 2019 12/8分担当です。普段 note で情報発信していないのですが、著名な方々に混じっての記事発信に、おっかなびっくりしてます。

 この記事では、リリース1年未満の toB SaaS で、実際行なってきた活動をもとに、サービスリリース初期にカスタマーサクセスが取り組むと良さそうなことを紹介します。
 SaaSのカスタマーサクセスって各社/各サービスによって全然違うので、自社でやろうとしても何から手をつければいいかわからん...と思いませんか?(私はわからなくなることばかりです...。)
 SaaS市場が盛り上がっていく中で、これからカスタマーサクセスをするぞ!という方もどんどん増えていくと思うので、少しでも誰かの参考になればいいな、という想いで書きます。

こんな方向けに書いています
・これからSaaSを提供しようとしている方
・SaaSを提供しているが、カスタマーサクセスに取り組めていない・これから取り組もうとしている方
・カスタマーサクセスをしているけど、他社の取り組みを知りたい!という方

私について
 スクラム採用を実現する採用管理プラットフォーム「HERP ATS」のカスタマーサクセスを担当しています。
 運営元の株式会社HERPには、大学3年の2月末からインターンとして採用コンサル・RPOに携わったのち、2019年1月より「HERP ATS」のカスタマーサクセスへ転向後、同年3月に新卒入社。カスタマーサクセス歴はちょうど1年です。β版提供時・サービスリリース時はCOOの力を借りながら、専任でカスタマーサクセスを担当していました。(ARR1億円までは専任1人でいけた!)

 ちなみにHERPに入社する前は、採用に関わる経験が多く、
・ベンチャー企業で採用アシスタント
・学生向けの教育・新卒採用の支援を行う企業で既存顧客営業
・求人広告の代理店営業
などをやっていました。

HERPのカスタマーサクセス体制
 「カスタマーサクセス」と言っても、サービスによって大きく異なるので、活動の前提となる情報を先に記載します。

サービスリリース:2019年3月(β版提供は2018年秋から)
商材:採用管理のプラットフォーム「HERP ATS」
コアメンバー:現在はレベニューチームのマネージャーに相談しつつ、セールスと兼務しているメンバー・インターン生・技術的な問い合わせを調査・解決するCSエンジニアとともに活動を行なっています。
主にやりとりする人:人事、特に採用活動にかかわる方々
顧客とのコミュニケーション:主に Slack / Facebook メッセンジャー
オンラインコミュニティ:Slack
問い合わせ:主に intercom / Slack
ヘルプページ:intercom
顧客情報管理(ヘルススコア・利用状況含む):スプレッドシート
利用状況確認:redash / Datadog Logs

カスタマーサクセスに力を入れる前に
 顧客のサクセスを支援する前に、いいサービスをつくってターゲットとなる正しい顧客に売れている組織であるということはその後の活動の土台として必須だと思っています。

SaaS リリース初期に取り組むべき3つのこと

 さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
 やってよかったと今感じている取り組みを、大きく3つにまとめてみました。(あくまで個人的にやってよかったな、という見解です。)

1. ユーザーについて知り、適切なアプローチをすることで、少人数でも回るカスタマーサクセス体制をつくること

スタートアップや新規事業は、そもそもカスタマーサクセスの担当者が少ないケースが多いと思います。その状況では、ユーザーについて誰よりも知っていることが重要です。

💡ユーザーについて詳しくなる
 自分自身が企業の採用支援をしてきた・自社の採用活動に携わってきた経験は、顧客の支援に向かっていくときの土台になっていると感じています。カスタマーサクセス1年目(なんなら社会人1年目)でありながら、普段やりとりする人事の方々の日常業務を理解できる・ペインが想像できることはその後の支援やコミュニケーションで役立っています。この記事を書きながらちょうどお見かけしたツイートがその通りだな...と大共感したので引用します。

💡サポート業務もサクセスの一部!スピードと質、両方へ徹底的にこだわる
 問い合わせには、
・目安3分以内の即レス(回答に困るときは一次返信だけでもする)
・解決策とともにヘルプページのリンクをつける
を心がけて対応しています。ユーザーさまから「素早く丁寧な問い合わせ返信が安心・信頼につながっている」というお声をいただくことが多く、日常的に使われるSaaSだからこそ取り組む意義を感じています。(即レスの結果、私が複数人いると思っていたユーザーさまもいらっしゃいました笑)
 スピードと質をあげるには、返信しやすいツール選定も大切だと感じています。サービスの特性上、ユーザーさまの8割程は社内コミュニケーションツールに Slack を利用されている背景から、やり取りの多くは Slack の共有チャンネルで行なっています。
 また、サービス内に設置された intercom 経由の問い合わせも社内の Slack チャンネルに通知されるように設定することで、質問に答えやすくなっています。intercom 上にはヘルプコンテンツを掲載しており、問い合わせへの返答にヘルプページを付け加えることで、その後ユーザーさまがトラブルかも?と思ったときに自己解決を促せる工夫もしています。ヘルプコンテンツを充実させることで、そもそもの問い合わせ量を減らせる効果もあります。

💡ヘルススコアチェック(特に利用状況の可視化)を早いうちに始める
 redash で利用状況データの可視化を行い、そのデータをスプレッドシートに転送しています。一例ですが、ログイン数・コメント数・連携している外部サービスなどが見える化されています。データの可視化により、
・オンボーディング進行状況がわかる
・うまく活用できているユーザーを発見できる
・活用度合いが下がったことを察知できる
など、多くの場面で活用できます。利用状況を把握し、適切なタイミングでアプローチをできるようにすることで、少数のカスタマーサクセスでもを支援しやすくなります。

💡オンボーディング体験を改善し、チャーンを抑制する
 HERP ATS のように日常的に使われるSaaSでは特に、オンボーディング体験をよくして、ユーザーさまのロイヤリティを高めることが、ゆくゆくの契約継続やチャーン防止に繋がるのではないかと狙っています。(サービス提供1年未満では、契約更新のタイミングがきていないユーザーさまが多いこともあって、チャーンはほぼありませんでした。)
 リリース当初より、導入直後のユーザーさまにカスタマーサクセスから利用方法の紹介を行なっていますが、上記の狙いからツールとしてうまく使ってもらうオンボーディングから顧客の採用成功に寄り添うオンボーディングへシフトするよう、オンボーディングプロセスの改善を行なっていました。具体的には、

Kick Off ミーティング:ユーザーさまの採用目標を把握する / アカウント開設と基本操作のご紹介

導入説明会:ユーザーさまの会社の中でサービスを触る機会のある方々に向けて、導入背景・使い方のご紹介

Advance ミーティング:採用目標達成度合いの把握

という一連のプロセスでオンボーディングを行っています。まだ改善の発展途上にいるので、またの機会に成果含めご紹介できればと思います。

2. ユーザーをコミュニティに巻き込み、ロイヤリティの高いユーザーを仲間にすること

仲間になってくれるユーザーの力は、社内にあるもの以上に強い力を発揮することが多くあります。ここではコミュニティ運営で良かった取り組みを紹介します。

💡オンラインコミュニティ形成は、顧客層に最も合うツールを選定する
 ここでも Slack (ワークスペース)を活用しています。問い合わせと同様、Slack に馴染みのあるユーザーが多いこともあり、7割程が参加されています。
 週に1-3件ほどの HERP からの発信に加え、ユーザーからの機能改善要望など双方向からのコミュニケーションがなされています。カスタマーサクセスがユーザーと接点を持ちやすいことが価値なのですが、時にはユーザーさま同士でHERPの活用方法をアドバイスしあうなどの交流があり、もはや私が活用方法を伝えなくても解決されているというこの上なくありがたいことも起きます!

💡オフラインでの接点が特にロイヤリティを高める!
 オンラインコミュニティとは別に、延べ4回のユーザー会(HERP Session)を中心にさまざまなイベントを実施し、ユーザーと会う機会をつくりました。他にも、セールス&マーケが主体となる勉強会やイベントにも既存のユーザーさまが来てくれることがあり、オフラインでの接点は多いです。
今年4月に行なった第1回ユーザー会の様子はこちら👇

 リアルな接点がロイヤリティを高める効果を実感しています。また継続的に行うことで、コミュニティ内部の繋がりが深くなり、コミュニティがどんどん強固なものになっているのではないかと感じます。その結果、第3回のユーザー会からはなんと有志のユーザーさまに運営メンバーとなっていただき会を実施することができました!当日の様子はこちら👇

積極的に協力してくれるユーザーさまがいるのは、とても嬉しく励みになっています。(もはやユーザー会をすることで私およびメンバーのカスタマーサクセス活動へのエンゲージメントが高まっている気さえするほどにいい場です。)狙ったわけではないですが、二次紹介をしてくれたり、他社製品から乗り換え検討中の企業さまに乗り換え時の実体験を話してくれたりするなど、HERPを広める仲間にもなってくださっています。

3. ユーザーに一番近いカスタマーサクセスが、社内に情報を伝達し、サービス成長に貢献する

カスタマーサクセス部門だけの取り組みだけで顧客のサクセスを実現できるわけではありません。組織全体がユーザー価値起点を元にサービス提供できるように働きかけるのが重要です。

💡セールス・マーケに事例を供給する
 サービスの提供を始めたら、ユーザーが自社サービスを活用した結果、どんな成功体験を得ているのか?を積極的に集めるのがオススメです。ユーザーに他社の成功事例を提供できるだけでなく、営業段階のターゲット企業に検討を進めてもらう武器となり、マーケにとってはリード獲得のための武器になるので、事例を社内に共有するのは各方面に役立ちます。(開発メンバーからしても「自分たちの作ったサービスでユーザーさんが喜んでいる!」ということを知れるのは、その後の原動力にもなっている様子。)
集めた事例はこちら👇

💡カスタマーサクセスと開発の連携を強化する
 サービス提供開始当初は新機能のリリースも多いので、とりわけ開発との連携を強化するのが重要だと思います。情報を早くキャッチアップしてヘルプページを作成し、ユーザーさまごとに一つひとつお知らせするなど、密な情報発信を心がけていました。開発ロードマップを公開してユーザーさんにも見える化していることは喜ばれている取り組みの一つです。(今はPdMが更新しています。)発信だけでなく、ユーザーさまからいただいた要望を機能改善や新機能開発に繋げるべく、Trelloに書き出し社内のミーティングで共有していました。
※現在では変わっている取り組みもありますが、どの機能を優先度高く開発しているのかの進捗や機能改善予定についていち早くキャッチアップし、顧客に伝えることは引き続き行なっています。

まとめ

取り組むべきことを振り返ると、

1. ユーザーについて知り、適切なアプローチをすることで、少人数でも回るカスタマーサクセス体制をつくること
2. ユーザーをコミュニティに巻き込み、ロイヤリティの高いユーザーを仲間にすること
3. ユーザーに一番近いカスタマーサクセスが、社内に情報を伝達し、サービス成長に貢献する

の3つです。サービスリリース初期に感じたことで、また2年目3年目を活動を続けていくとまた違った知見が広がっていくのだろうなと思います。新米の拙いまとめではありますが、参考になれば幸いです🙇‍♀️

最後に

 サービスリリース1年の節目が近づいており、今後もチャーンレートの改善や契約継続率の向上などのミッションを担うことになりそうで、まだまだ新規サービスのカスタマーサクセスを0からやる難しさを日々感じています。自分の好きなHR領域で、ユーザーさまに関われるカスタマーサクセスは刺激的ですが、もっといいサービスを提供できるように2020年も精進していきたいと思っています。

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