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城山文庫の書棚から053『サステナブル・キャピタリズム』長坂真護 日経BP 2022

2021年秋、東京・日本橋三越本店で開催された個展で、ガーナのスラムで集めたゴミを使ったアート作品が2億円で売れた。ネット記事を読んで衝撃を受け、すぐに本を注文。美術家・長坂真護はじめての著書。

長坂はほんの数年前まで、年商100万円の路上画家だった。それが一転、21年度には約8億円を売り上げた。印画紙を反転させるように世界が変わった理由はただ1つ。サステナブル・キャピタリズム=持続可能な資本主義という概念を考え、それに沿った行動をしたからだという。

ガーナのスラムに隣接した巨大なゴミ捨て場で過酷な労働に従事する貧しい人々の姿をみて、電子廃材を使ったアートを思いつく。その後の行動力が凄い。精力的に作品を制作し、売上の5%を手元に残してガーナのスラムの環境改善に投資する。美術館や学校まで作ってしまう。

長坂のいう相対性理論によれば、先進国のプラスの利潤はガーナはじめ途上国のマイナスのエネルギーと均衡している。アートの力でそれをプラスに転じ途上国に還元するのが彼のビジネスモデルだ。マゴ・クリエーションによるサステナブル・キャピタリズムに、今までにない新たな可能性を感じる。