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城山文庫の書棚から033『エシカル白書 2022~2023』一般社団法人エシカル協会編 山川出版社 2022

昨年12月のオンライン国際シンポジウムに登壇いただいた末吉里花さん率いるエシカル協会初めての白書。本人から謹呈いただきありがたく拝読。

エシカルを日本語に訳すと「倫理的」。ちょっとカタイ感じがするが、意味するところは“よりよく生きる”こと。スローガンである「エいきょうを シっかり カんがえル」がめざすところをうまく表している。近年、中高の教科書でも扱われるようになり、これから当たり前になるはずの重要なことば。

本書は国谷裕子さんと末吉さんの巻頭対談、最新の社会課題、国連SDGsレポートの解読、エシカル消費動向調査とエシカル最新事例紹介そして各世代の識者によるエッセイからなる。斎藤幸平氏も「脱成長とコモン」と題した辛口の論評を寄稿し、エシカル消費が「大衆のアヘン」とならぬよう檄を飛ばす。

エシカル先進国・スウェーデンからは絶滅危惧種の魚は扱わない「きれいな魚屋」や売残りの果物を原料に「いつも味が違う」ことを売りにするジュース屋の取組みを紹介。ちょっとした工夫がエシカルの気づきに繋がり連鎖する。

巻末のコラムで「もったいない」の語源は仏教用語で元々は「物体」と表記したと指摘。「物のあるべき姿」がないという意味で“空”や“縁起”の思想に通ずるという。これを書いたのが中学2年生と知り、若者世代に希望を感じるおじさんであった。