読書完走#531『21 Lessons』ユヴァル・ノア・ハラリ 2019
『サピエンス全史』で人類の過去、『ホモデウス』で人類の未来を描いた気鋭の歴史学者・哲学者ハラリが、我々の生きる現代に焦点を当てたのが本書。
21の章にはそれぞれの最後に次に連なるキーワードが込められ、ひと繋がりの提言を形成している。テクノロジー、政治、絶望と希望、真実そしてレジリエンスという5つのパートで構成され、AIやDX、格差と分断、テロや戦争といった今日的課題から、正義や生きる意味など根源的なテーマまで幅広くカバーする。博識という言葉がぴったりはまる人だ。
クリミア戦争から4年、本書が執筆された時点でハラリは「プーチンは成功に味をしめて野心をたぎらせるかもしれない」と不気味な予言をしている。残念ながら今それは現実のものとなっている。人間の愚かさから我々を守ってくれる神もいなければ、自然の法則もないと。
時にユーモアを交えた語り口は哲学的なことも柔らかく伝えてくれる。彼の思想の根幹、集中力と明晰さには学生時代に経験した古代インドの瞑想の影響が大きいという。
“もし死を理解したければ、生を理解する必要がある。”